監禁

 僕がダンジョン内で襲ってきた化け物を撃退した後。


 それで僕は王都にある我が家の屋敷へと帰ってきたはずなのだが……。


「……あら?」

 

 カチャカチャ。

 何故か今、僕は知らない天井を見上げながら、自分の両腕にかけられた手錠をカチャカチャさせていた。

 えっ……?どういうこと?

 

「……なんか、魔力抜かれているし。そこそこの抜けっぷりだよ。これ、普通くらいの魔力がない人だったらすぐに行動不能になるやつでしょ」


 自分の両腕につけられた手錠から自身の魔力が抜かれていく感覚を覚えながら、僕はゆっくりと周りを見渡す。

 今の僕は全然知らない部屋の中で、全然知らないベッドの上で寝かされ、手錠をつけられた状態で拘束されている。

 うーん、これは……監禁されてますねぇっ!


「……前にもあったな、こんなシチュエーション」

 

 自分が監禁された。

 普通の人であれば大いに動揺しそうな現状ではあるが、振り返ってみると僕が他人から監禁された事例はそこそこあるような気がする。

 だからこそ、さほど動揺はしなかった。


「(フロイデーっ)」

 

 そんな僕はとりあえずでフロイデへと呼びかける。


「(んー?なにぃ?)」


「(何が起こったのか教えてーなぁー。見ていたでしょ?)」


 フロイデは悪魔である。

 そして、悪魔は眠ったり、何か食事をしたりなどはしない。

 当然、今回もフロイデはしっかりと僕が連れ去られて監禁されているときも起きて、その様子をバッチリと見てくれていることだろう。

 こういう時は、とりあえずでフロイデに聞いておけば何とかなるのだ。

 ……別に、起こしてくれても良かったと思うけどね?


「(あぁー、うん……今回の下手人はいつものように───)」


 起こしてくれなかったことに僅かながらの不平不満を覚える僕には気づかないフロイデが事の顛末を説明しようと言葉を話す。


「あらぁ?起きましたかぁ?」


 だが、それよりも早くに僕が監禁されている部屋の扉が開かれ、新しく女性の声が響いてくるのだった。

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