久しぶり
部屋の扉を開けて中へと入ってきた少女。
それは自分たちと同じ班を組んでダンジョンに潜っていたエルフの娘、ナトリだった。
「やぁ」
僕はそんなナトリを前に軽く足を上げながら口を開く。
そういえば、なんかちょくちょくナトリは僕を拘束しようとしていたなぁー、なつかし。
エルフの森にいた頃の僕の朝のルーティーンは自分を拘束しようとするナトリから逃げることであった。結構楽しかったんだよな、脱出ゲームみたいで。
僕が毎日のように脱出するにつれてナトリの方も段々とガチになっていったからね。
彼女もゲーム感覚で僕を閉じ込めていたに違いない。
「ねぇ」
「ん?」
過去に思いを馳せていた僕はナトリから声をかけられたことで現実の方に戻ってくる。
「アナタ、ゴンベェよね?」
「おや?」
ナトリの口から出てきたゴンベェと言う言葉。
それは自分が世界を回っている際に使っていた偽名のひとつであり、また、ナトリに名乗っていたものである。
「おっとぉ?」
そんな名前がナトリの口から出てくる……それすなわち、僕の正体がバレたってことじゃ……いや、何故っ!?
「あの特徴的な魔剣グリム。貴方が荒ぶる大精霊様と矛を交える際に使っていたあの魔剣グリム。この私が見間違えたりはしないわ」
「あっ……」
めっちゃ馬鹿じゃん、僕ってば。
そういえばナトリの前では魔剣グリムを使っているじゃん……うぉぉぉぉ!?身バレ防止のためにフロイデとも協力して強靭な身バレ防止魔法を作って使用していたのにぃ!
こんな凡ミスでボロをっ!?もぉー!?マジで何をしているのっ!?
「(……何をしているんだが)」
「あ、あのぉ……僕がエルフの国で大暴れしたことはどうか内密にぃ。一国の貴族の行いがあれとすると、その、何といいますか、内政干渉レベル100みたいなことになるといいますかぁ」
「そんなことはどうでもいいですわぁ」
どぉーでもいいぃ!?
最悪は僕が処刑されてもおかしくない事例なんですけどぉー?僕がやったことヤバヤバのヤバで、自分の行いがすべて白日の元に晒されたらこの国の外交は確実に死んじゃうんですけどぉ!?
「大事なのはぁ……」
内心で大慌てとなっている僕の前で、ゆっくりとナトリが迫ってくる。
「君が私に隠れてこそこそとしていたことですよぉ?ねぇ……ノア、くぅん?」
そして、ベッドで転がされている僕に跨るような態勢となったナトリはそのまま体を自分の方へと近づけ、こちらの髪へと優しく触れながら耳元で言葉をささやくのだった。
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