エルフの娘

 最初の説明は早々に終わり、早速僕たちはダンジョンに潜ることとなっていた。

 早々にそれぞれの班に分かれての行動となっている。


「それじゃあ、お二人とも。自己紹介をしませんか?まず」


 僕とアンヘル。

 それと、もう一人のエルフの娘でダンジョンの中をゆったりと歩く中、彼女が穏やかな口調で口を開く。


「自己紹介の時にお二人ともいませんでしたしぃ、まだ自己紹介とかしていないですよねぇ?」


「そうね。ごめんなさい。忘れていたわ」


 そんなエルフの娘の言葉にアンヘルが頷き、謝罪の言葉を告げる。


「私はアンヘルよ。この国のラヴニーナ侯爵家の娘よ」


 そして、そのままアンヘルは自分の自己紹介を続ける。


「僕はトア。同じくこの国の侯爵家、トアライト侯爵家の嫡男だよ」


 それに続けて僕も自分の名前を告げる。


「ご丁寧にどうもぉ。私はナトア。エルフ公国の王女よぉ」


 エルフ公国の王女であるナトア。

 彼女は僕が九歳の頃、彼女を探すために出ていた自分が初めて会った少女だ。

 ちなみに、エルフ公国は僕がエルフたちの統一国家であった魔道王国ユグドラシルへと色々と干渉した結果、独立して出来ちゃった国である。

 ……エルフの国の分裂させるまではやる気なかったのに、何かナトアとその一派が暴走して独立を宣言しちゃったのだ。

 まぁ、何とか平和的に着地させられたから良かったけど……大変だったなぁ。


「……ちなみに、ちょっと私は疑心暗鬼になっているから聞きたいんだけど、こっちのトアのことは知らないわよね?私の婚約者に色目とか使ったりはしないわよね?」


「大丈夫ですよ。私には既に将来を誓い合った中の人がいますのでぇ。どれだけ魅力的な人でもぉ、目が移ることはないよぉ」


 うわぁ……あの頃、頑張ったのに端から駄目だったのかよぉ。

 何?主人公君はあの段階でもうナトアと接触していたのかな?


「なら、良かったわ」


「……」


 ヤバい、ショックが大きすぎてここ三秒間くらいの記憶が飛んだよ?

 もう泣きそうなんだけど。


「心配性ですねぇー」


「ごめんなさいね」


「でもぉ、ちょっと私もわかっちゃいますぅ。ただ、安心してくださいねぇ。そもそもとしてぇ、トアと私は初対面ですからぁ~」


 初対面じゃないけどね?

 まぁ、ナトアと会ったとき含め、僕が世界中を回っていた時は身バレしたら大問題になるので姿格好は変えていたけど。

 いやぁー、流石にトアライト侯爵家の嫡男がエルフ公国の独立に一枚嚙んでいた、とか大問題じゃ済まされないよ。


「あっ、魔物」


 そんなこんなで自己紹介を交わしていた自分たちの前に魔物が飛び出した来たことを前に僕は、何とも気の抜けた声を上げるのだった。

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