ダンジョン
ダンジョン。
それはこの世界に幾つか存在する摩訶不思議な穴のことである。
地下に広がっている巨大な空間のことをダンジョンとこの世界の人々は呼んでいるのだ。
その様態は洞窟であったり、人工的な建築物であったり、怪物の巣穴であったり、時には森や山道であったりと様々。
そして、その内部には人類の敵である危険な魔物が徘徊している。
時には罠や何らかの施設・遺跡などもあったりする中々に神秘的な場所だ。
「……おぉー、実際のダンジョンには初めて来るかもしれない」
そんな場所の前へと授業でやってきた僕は歓声の声をあげる。
何もない地面にぽっかりと空いている巨大な穴は神秘的だ。
「おーい!全員クラスごとで別れて集合しろーっ!自由に行動するのはまだ早いぞっ!」
学園生活四日目。
まだ一週間も経っていない中でダンジョンへと授業のためにやってきた僕たちは今、ダンジョンへと入る前の最終確認をクラスごとで行おうとしているところであった。
とうとう、この課外授業が始まるのか……僕は少しばかり感慨深い気持ちになりながら先生たちの指示に従っていく。
ちなみにこの授業はゲームで言うところのチュートリアル的な立ち位置にあった。
ゲームのチュートリアルでやったことをリアルで行う。
それは何とも形容しがたい特別な感覚だった。
「……うーん」
というか、今さらな話だけど、ゲームの主人公は一体何処だ?
僕も含めて、自分のクラスメートたちはゲームで主人公と同じクラスとして登場していた者たちだ。
だから、多分僕たちのクラスがゲームに出てきたクラスのはずなんだけど……なぜか、主人公の姿が一切見えないんだよなぁ?
あの主人公はありとあらゆる面で特別だからいたらと気づくとおもんだけど……。
「どうしたの?」
主人公について頭を悩ませ、思わず足を止めてしまっていた僕へと自分の隣にいたアンヘルが声をかけてくる。
「何か面白いものでも見つけた?」
「いや、そういうわけじゃないけど……ちょっと考え事をね」
「考え事?何を考えていたの?」
「いや、それはちょっと」
この世界の主人公について考えていた、なんていえば周りから引かれることは間違いない。
僕はアンヘルの言葉を軽く誤魔化しながら答える。
「えっ?なんで?婚約者である私に言えない考え事なんてないでしょう?隠そうとしないで全部話してみて?ねぇ?貴方なら私に隠し事なんてしないわよね?だから、ほら……一体、何を考えていたのかしら?」
「え、えぇ……」
だが、そんな自分の思いなんて知らずにこちらへと食い気味で食いついてくるアンヘルに困惑しながら僕は足を再び動かし始めるのだった。
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