ダンジョンの魔物

 ダンジョンは下へ、下へ。

 下の階層に向かっていくほどに出現してくる魔物のレベルが上がっていく。

 まだ入ったばかりの上層じゃまだまだ全然強い魔物なんて出てこない。


「……」


 んー、僕ってばみんなと会ったときは完全に変装していたんだよなぁ。

 もしかしたら、あの時の人物が僕だったと明かしたら、これまで助けてきた女の子たちの一人や二人くらいはこちらに行為を抱いてくれる可能性が高まってくれたり……いや、ないかぁ。

 あの時にダメだったのに、今になって何とかなるはずがないよねぇ。

 あれだけセンセーショナルな出会いに経験をして無理だったのに、学校生活を一緒に送ったところでうまく行くとは全く思えない。

 うぁ……彼女、どうしよう?

 もう、自分で作るか?一から、生物を。

 僕なら出来る気もするぞ。

 

「ねぇ?ノア?」


 こんなところに危険なんてあるわけがない。

 そう高をくくって考え事に没頭しながら、ただ歩いていた僕は自分の隣のアンヘルに呼ばれると共に、耳を引っ張られる。


「んぁっ?」


 それを受けて僕は彼女の方に視線を向けて声をかける。


「私を無視して、何を考えているの?」


「んー、人間関係についてかなぁ」


「どんな?」


「僕の身の回りの人脈について。ちょっとやりたいことがあって世界を放浪していたこともあって僕の人脈ってめちゃくちゃ狭いんだよね」


 アンヘルの疑問に対し、僕は今自分が抱えている問題を一つピックアップして語る。

 過去の僕の計画としては世界中を回って女の子を助けまくり、その中で何とか自分を好いてくれる女の子を見つける。

 そして、その運命の女の子を見つけた後は彼女がいる地に永住してそこで幸せに暮らす予定だったのだ。

 生家の方も、勝手にいなくなった……まぁ、何か知らんけど、帰ってきた後は熱烈に歓迎された上に次期当主の座もそのままだったけど。

 うーん……こうして考えると、もう、何もかもがうまく行かなかったね。僕の計画。

 

「……確かにそうね」


 僕の作戦が悉く失敗に終わった今、自分の足元には数年間分姿をくらませていたことの代償が重くのしかかっていた。


「それじゃあ、さ。その悩み、私の方で───」


 僕の悩みを聞いてのアンヘルの言葉。


「んっ?」


 その言葉の途中で僕はとある異変に気づいて足を止めて意識をそちらの方へと向ける。


「ちょっと、何を無視して……っ?何?」


 そして、僕に遅れること十数秒。アンヘルもしっかりと僕が感じた異変に気付いて体を強張らせる。


「……っ」


 その隣ではアンヘルと同じタイミングでナトアもそれに気づいていたのだった。

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