敵
この課外授業はゲームにおいて、ただのチュートリアルとして位置づけられていたものである。
だからこそ、僕はこの場で何か起こることなどないと高をくくっていたわけだが……。
「……ダンジョンが震えている」
僕はダンジョンの下層の方から急速に近づいてきている何者か、について感知していた。
はて?何でここでゲームの流れが大きく変わってくるのだろうか?
いや、ゲームの本編が大きく変わることは前もって覚悟していた。
自分がゲームの過去編について大きく変えているのだから、それに伴って本編も大きく変わるのは織り込み済み……だから、ここで何かワンアクションあっても。
「……」
いや、僕がやったことはゲームにおける敵の勢力を削るようなことしかしていない。
自分の行いの結果、敵の方が勢いづくとは思えないのだが……焦りか?自分の目的達成が遠のいていく焦りによって暴走でもしているのだろうか?
これ、かな?
僕の考えではこの考察が一番合っているように思った。
「(何が近づいてきているかわかる?)」
ここらでゲームとの乖離についての思考を切り上げた僕は自分の中にいるフロイデへと疑問の声を投げかける。
「(……わからない。けど、まともな相手じゃないことは確かね。かなりの禁忌を犯して作られた生命体であることは確かと思うわ)」
「(……うわぁー)」
「(下手人が誰か……これまで下種な連中とばかり会ってきたからもうどれが貴方を狙っているのかわからないわね。大多数は潰しているけど、残党はまだ少なからずいるだろうし)」
「(うん、そうだね)」
僕が数年の旅で倒してきた大規模犯罪に手を染めている組織、個人はかなりの数にのぼる。
そんな組織、個人の裏側を辿っていくととある一つの組織、人物へとぶち当たる。
この世界に存在するほとんどの大規模な犯罪組織、犯罪者はとある一つの頂点を起点として裏で繋がっている場合がほとんどであり、その繋がりから残党が集まって一つの組織となり、怨敵である自分を狙っていても何ら不思議ではない。
「……ラミリ」
僕は思考の中で、ゲーム本編のラスボスとして登場していた女性の名前をポツリと漏らす。
「えっ?何その単語?えっ?誰?また知らない女の?ねぇ?ねぇ、何とか答えてくれないかしら?」
「んなっ……いや、ラミリってのは、ラミリってのは……気にしないで?」
「気にしないわけないでしょう?どこの女なの?そいつは。どこで知り合ったのかしら?私はそんな人のこと知らないのだけど」
「え、えぇ……?」
そして、そんな僕のボヤキに強く反応してきたアンヘルにただただ困惑の表情を浮かべるのだった。
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