いがみ合い

 何故か永遠と僕に抱き着いてきているアンヘル。


「……どうして?」


 そんな彼女を前にして僕はただただ困惑することしかできなかった。


「……何をしているんですかぁ?」


 そのような中、教室の中に僕から遅れること十数分。

 ナトリが教室の中へと入ってくる。


「……あら?見てわからないかしら?」


 そんなナトリに対し、自分へと何故か抱き着いているアンヘルが口を開く……いや、さっきの言葉ってアンヘルに向けたものだったんだ。


「何が誰のものか、明確にしているのよ」


 ふむ。何が?


「……あらあら、私に対して喧嘩を売っているのですかぁ?」


「それはこちらのセリフよ?愚か者さん……貴方、ダンジョンでの発言は一体何だったのかしら?」


「ふふふ……言わなくとも、私が何をしたかでわかっているでしょう?」


「……ちっ。忌々しい。もう、この子は」


 この子?

 誰かについて語っているの?ナトリとアンヘルに共通の知りあいがいたの?えっ?エルフとうちの国の人間だよね?どこから共通の人間なんて生えてくるの?

 不思議なものもあるものやなぁ。

 というか、ダンジョンに潜っていた時は仲良さげにしていたナトリとアンヘルの仲を完全に破壊した二人の共通の知人は一体何者なのだろうか?ちょっといい加減にしてほしいよね。


「……ちょっとごめんね?」


「んっ?何が?」


 僕はこちらへと謝罪の言葉を告げながら離れていくアンヘルを前に困惑の声を上げる。

 本当に彼女たち二人は一体何をしているのでしょうか?僕には理解できないなぁ。


「……」


 まぁ、良いかぁ。

 僕ってばあまり関係なさそうだしぃ。


「人様のものに手を出してどういうつもりなのかしら?貴方は最近、独立したばかりの王女様でしょう?自分の立場を、国のこともあわせて考えてみたらどうしかしら?大国の貴族の婚約関係に、ポッと出の中小国の王女風情が絡めると思っているのかしら?」


「私は彼の為なら何だって差し上げられますよぉ?もし、世界が敵に回るとしても、二人で世界から逃げますよぉ。愛の逃避行。実に美しいとは思いませんかぁ?」


「そんなことノアが許すわけないじゃない……っ!」


 二人の問題は二人で解決するべきで、部外者はいちいち言葉を挟む必要ないよね、うん。

 

「えっと……最初の授業はぁ」

 

 僕は二人から意識を完全に外し、次の授業の準備をいそいそと始める。


「ねぇ、ノア」


「ん?」


 そんな僕の肩を優しく叩き、こちらへと声をかけてきたの自分の知りあいを名乗っている詐欺師候補、アンリであった。

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