アンリ

 詐欺かどうかを疑いながらも、目の前にいるおっぱいが大きくて可愛い少女を前に大きな動揺を見せる僕。


「ふふふ……」


 そんな僕を前にして未だ名も知らぬ少女は楽し気に笑う。


「それで、だけど。君は私が自己紹介をしている最中はあの女と会話していたから私の名前って知らないよね?」


「うん、申し訳ないけどわからないかなぁ。それと、僕を呼び出していた子はアンヘルだね」


「そう。女。あの女のせいで聞けなかったと思うから、改めて私が自己紹介するねっ!」


 何?アンヘルのあの女呼びは固定なの?

 そうか、……そうなのか……いや、何で?

 

「……うん」


 僕は色々と疑問を抱きながらも一旦は少女の言葉に頷いて続きを話すように促す。


「私はアンリ。どこかの国の王侯貴族でも、平民として名を上げたわけでもない。ただ、それでも確かにここにいて、この場にいる一人の少女だよ」


「……はぁ」


 僕は名前以外のところはイマイチ呑み込めない少女、アンリの自己紹介の言葉に頷く。

 どこかの国の王侯貴族でも、平民として名を上げたわけでもない。ただ、それでも確かにここにいて、この場にいる一人の少女───いや、どういうことよ?


「(おい。ノア)」


 どれだけ考えてもわからないアンノの自己紹介に首をかしげていたところ、頭の中でフロイデの言葉が聞こえてくる。


「(んっー?何?)」


 今、フロイデにはちょっとした魔法で僕の魂の中に入ってもらっている。

 学園の中で悪魔であるフロイデを放し飼いにするわけにもいかないからね……一応、悪魔は人類の敵に認定されている種族の一つだからね。


「(既にもうわかっていると思うが、目の前にいるこの女、少しばかり……いや、だいぶ変だぞ?)」


「(いや、それはわかっているけど……ちょっと、変かな?ってくらいじゃない?)」


 自分の前にいるアンリ……見た目上はただの美少女だ。

 金髪碧眼で全体的に肉付きがよく、おっぱいの大きな少女。

 可愛すぎること以外は一見、何も目を引くようなところはないように思うが───よく、認識してみるとアンリの在り方には何か大きな違和感があった。

 そう、何か……何かが根本的にズレている、ような気がする、という程度の違和感。

 あまり言葉にしづらい、でもどうしても拭いきれない違和感を感じることが出来る。


「(それが問題だろう……お前は多くに敵を作りすぎているのだから。もうお前は、どれだけの人間や組織を叩き潰したのかもわからないんだぞ)」


「(……いや、でも……この子は可愛いし)」


「(……これだからこいつは。もう今すぐにでも私のように精神生命体になった方がいいんじゃないか?)」


「(それはちょっと……せめて、せめて卒業だけはしたい)」


「(……それだけなら私が受肉してぇ)」


「(んっ?)」


「(何でもない)」


「(あっ、そう)」


「……ノア?」


 アンリの自己紹介を受け、頭の中でフロイデと高速で会話していたこともあって沈黙で居たままの僕へと彼女が心配そうにこちらへと声をかけてくる。


「いや、何でもないよ」


 そんなアンリの言葉に僕は笑顔を見せながらごまかすのだった。

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