詐欺か

 改めて、一緒のクラスになった人のことを見ると、どれだけ自分が関係を築いてきた女の子たちが多いかわかる。

 アンヘルに呼び出された後、クラスのみんなが自己紹介を終えたタイミングで教室の方に戻ってきた僕は中を見渡しながらそんなことを思う。

 本当に、この場にいる人間のほとんどが僕の知りあいなのかもしれない。

 というより、女子は一人を除いて全員知っているな。

 男子の方でも貴族としての交友の中であったことのある人ばかりだ……へへ、まぁ、男子とはあくまで貴族としてのビジネスライクだったし、女子の方でも知り合えただけで別に付き合えたわけじゃない。

 何とも空しい話だよ。


「ねぇねぇ、お話終わった?」


 そんな中、僕が唯一知らない女子の方から僕は話しかけられる。


「んっ?何かな?」


 そんな僕はそちらの方へと視線を向け、少しばかり身を乗り出しながら答える。

 かつて、騙された経験があり、それがトラウマとなっていることは紛れようもない事実である。

 だが、それでも僕としてはどうしても、この子が自分の彼女になってくれるかもしれないというその期待感を消しきれないのだ。


「私のこと、覚えている?」


「えっ?あっ、……えっとぉ」


 ……考えろっ!?

 ここは何て答えるのが正解だろうかっ!?ここは素直に答えるべきか……いや、でも普通に考えたら僕を知っているらしい相手に対してごめん、覚えていない!って答えるのは普通に地雷なんじゃないだろうかっ!?

 

「ふふっ」


 目の前にいる少女の言葉を前にして大きく悩んで見せる僕の前で、自分が何かを答えるよりも先に彼女が笑みを浮かべ始める。


「覚えていないんでしょう……?私のことは」


「えー、あっ、うん……そうだね。ごめん。ちょっと、覚えていないなや……」


「大丈夫、君が負い目に思う必要はないよ。覚えていなくとも仕方ないからね」


「んっ?それはどういうことなのか尋ねてみてもいいかな?」


 イマイチ要領の掴めない少女の言葉。

 それを前に疑問を投げかける僕ではあるが……。


「ふふっ、だぁーめ」


 その言葉はあえなく少女の笑みによってごまかされる……ヤバい!?これは、詐欺か詐欺じゃないかどっちだっ!?

 いや、つか、詐欺だろっ!?これは。

 普通に考えてさぁ、僕は前世の記憶も持っているタイプの人間だぞっ!?普通の人であれば確実に忘れるであろう幼少の頃の記憶も当然、バッチリと覚えている!

 そんな僕が会った女子のことを忘れているぅー?そんなわけあるかいなっ!冷静に考えてなっ!


「君が私のことを思い出して、ね?ふふっ、私との約束だよ。」


 あっ、でも、可愛い……あと、今、彼女のおっぱい揺れた。

 飛んで火にいる夏の虫とはまさに僕のこと。


「……う、うん」


 僕は罠にしか見えない少女の笑みと共に向けられる言葉に照れを見せながらも頷くのであった。

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