登校
「へぇ?貴方は平然と人のものに手を出すのね」
「ふふふ……どうしたの?だいぶ、余裕がなさそうだけど。そんなブレブレの情けない姿で似合うのかしら?」
「どっかの泥棒さんよりは遥かに似合うに決まっているでしょう。どれだけの年月一緒にいたと思っているのかしら?自然と似合ってくるものなのよ、言われなくともね」
「あらあら、昨日は何時ぶりでして?」
「滑稽だったわよ?知らない者扱いの君は」
「……」
「……」
「「殺す」」
雲一つない空の中で輝く太陽の下。
僕はしっかりと制服に身を包み、昨日のように遅刻しないよう、しっかりと時間に余裕をもたせた状態で学校へと向かう登校の道を進んでいた。
「んー、美味しい」
僕は自分の手の中にあるチェロスを食べながら頬を緩ませる。
本当にこのチェロスってば美味しい。
これが朝食であるということを考えると、かなり……いや、だいぶ重くなってしまうが、それでもこの味ならば食べたい。どれだけ重くとも体が食べたいと思ってしまう。
そんな魅力がこのチェロスにはあった。
「(この状況下でそんな冷静にしていられるの、冷静に考えておかしくない?)」
「(んにゃ?)」
チェロスに満足しながら登校のための道を歩いている僕へと自分の中にいるフロイデが声をかけてくる。
「(いや、何でもないわ……貴方、何故か知らないけど自分が他人の話題になることはないって思いこんでいるものね)」
「(……いや、何の話?)」
別に僕はそんな思い込みないと思うんだけど。
「(何でもないわ)」
「(……なら、良いけど)」
なんか、釈然としない思いもあるが、時折フロイデは勝手に僕のことを呆れてその理由は言わないなんてことをやっているからね。
もうこれは気にしないこととするのが一番なのだろう、うん。
「……ごちそうさま」
チェロスを食べ終えた僕は汚れてしまった手を魔法で綺麗にしながら、この世界になくとも前世からの癖で言ってしまう食後のあいさつを口にする。
いやー、それにしてもアンヘルとアンリはいったい何についての話をしているんだろうね?
「生まれてきたことを後悔させてあげるわ。貴方が一体、誰に喧嘩を売ったのか。それを心の底にまで教え込んでやるわ」
「ふふふ、そんな親の力にばかり頼っていて恥ずかしくないのかしら?こちらこそ、私の在り方を見せてあげるっ」
自分を挟んでよくわからない言い合いをしているアンヘルとアンリに囲まれる僕は、それでも呑気に部外者として内心でそんなことを考えているのだった。
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