女同士の喧嘩

 アンヘルとナトア。

 その二人が襲来してきた屋敷は大変なことになっていた。


「あらぁー」

 

 一切止まることのなかった二人の突進によって屋敷の大部分が吹き飛び、土煙が沸き上がる。

 ……いや、僕が屋敷を守った意味は?


「よっと」


 そんなことを考えながらも僕は自分のほうへと伸ばされた手から軽々しく回避する。


「あぶぶあぶぶ」


 流石にこんな程度で捕まるほど僕は甘くあらへんよぉ。


「アンヘルぅっ!ナトアっ!」


 ひょひょいとその場から逃げ出し、半壊した屋敷の屋根へと上った僕に対して、先ほどまで自分の隣にいたアンリが大きな声をあげる。


「殺すぞ、女狐っ!」


「……うふふふ」


 そんなアンリは容赦なく屋敷へと襲来してきたアンヘルとナトリに魔法を向け、それらへとその二人も応対していく。

 アンヘルとナトリは抜群のコンビネーションで、アンリの魔法を軽々と受け流したのだ。


「ふんっ!」


 そして、その後。

 アンヘルとナトリの二人は共に力を合わせた状態でアンリへと牙を剥く。

 二人の手で構成された一つの巨大な魔法陣が完成し、それがアンリへと大きく牙を剥けたのだ。


「舐めるなァっ!」


 だが、それに対してアンリもアンリですごかった。

 その魔法をたった一人で、一瞬でもって発動させた結界によって悠々と防いで見せたのだ。

 そして、その後もその三人は激しく争い続ける。


「……えぇ?」


 さてはて、そんな僕の前で突如として始まってしまった大げんか。

 それを前に僕は今さらながらに困惑の声を漏らす。

 いや、……うーん。えっ?何でこの三人が凄い勢いでやりあっているの?何かあったの?


「何で三人はいきなり喧嘩を始めたのだろうか……?アンリの方は屋敷を壊したからわかるんだけどぉ」


「いや、純粋にノアの取り合いだと思うわよ?」


 そんな自分の考えを漏らす僕に対し、さも当たり前のように実体化した状態で隣にいるフロイデが口を開く。


「……えっ?」


 それに対して。

 そんなフロイデの言葉に対して。

 そんな僕の予想が大きく違っていることを告げるフロイデの言葉に対して、僕は困惑の声をあげるのだった。

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