原作介入

 齢九歳。

 ここまで様々なことを努力してきた。

 ゲーム上の設定として神童と定められたこの体で、一切腐ることなく魔法も、剣も最大限の努力でもって技術を積み上げ、確実な強さを得てきた。

 これもすべて、この年のためだったとさえいえる。

 この世界。

 ゲーム『雄英の箱舟』の本編開始時は僕の年齢が十五になる頃である。

 このゲームはこの世界の貴族たちが十五歳から十八歳まで通うことになる学園を物語にしたお話なのだ。

 本編が始まるのは今から六年後。

 だが、本編につながる重要な事件が次々と起きるのはちょうど今年なのである。


「……僕が、彼女を作るにはどうすればいいか」


 前世の僕もスペックはそこそこ高かったと思う。

 別に顔もそんな壊滅的じゃなかったし、運動能力だってプロにはなれないまでも学生間の試合であれば大活躍できるほどであったし、頭の方も悪くない。

 通っていた高校も高偏差値だったし、全国模試も基本的に順位が十位台であった。

 そんなハイスぺと言える前世の僕でも、これっぽちも彼女が出来る気配しなかったのだ。

 そんな僕が彼女を作ろうとするのならば、もう頼れるのは運命くらいだと思うんだ。


「ふへへ、助けてやるぞ、ヒロインズ」


 今年より頻発する本編につながる重要事件。

 それら事件の一つ一つに、基本的にはヒロインの誰かしらは巻き込まれている。

 つまり、だ。

 事件の詳細についてあらかじめ知っている僕がその事件の解決のために駆け付け、巻き込まれているヒロインたちを王子様の如く華麗に助けていけば……誰か一人くらいは僕のことを好いてくれるのではないだろうか?


「何の話をしているのよ?」


 内心で彼女を作るための計画を組み立てていた僕に対し、自分の隣でふよふよと浮いていたフロイデが声をかけてくる……どうやら、独り言が漏れてしまっていたようだ。


「ふふふ……君が気にすることじゃないよ」


「えー、別に私になら教えてくれてもいいじゃない……それに、何かやるなら私も手伝わされるんでしょう?」


「まぁ、そうだね」


 僕の悪魔召喚は結果的に大成功だった。

 フロイデ凄い。めちゃくちゃ便利、めちゃくちゃ使える、めちゃくちゃ良い子。

 素晴らしい悪魔だ。

 もう彼女は僕にとって手放せない相棒だね。


「(う、うぅん……有馬からの愛情が私の方に流れてくるぅ)」


「まっ、僕がやることはそんなに難しくないから。軽く考えてくれればそれでいいよ」


「そう言っても……この一年で君がいかにヤバいやつかわかっているからね。もう、私は油断なんてしないよ」


「えー、ひどいなぁ」


「それで?君はまず何をするつもりなの?」


「えっとね……エルフの森を守っている大精霊がちょっとしたアクシデントで悪に堕ちちゃって、色々とエルフの森に大問題が生じているから、それを解決しに行こうと思っているよ。まずはエルフの森への不法侵入からだけど……これならいけるよねっ!」


「……はい?」


「さぁ、行こうぜ!」


 僕はちょっとばかりフロイデがドン引くような声を上げたのにはあえて気づかないようにし、笑顔のまま彼女へとノリノリで声をかけるのだった。

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