頼み事

 一切迷うことなく、何も聞かぬままに手を貸す旨を告げた僕に対して。


「いや、早いよ……嬉しいけどね、えへへ」


 アンリが少しばかり呆れたように口を開く。


「えっと、とりあえずお願いしたいことの内容を話していい?」


「うん、どうぞ」


 まずは聞くところからだったね。

 ちょっと僕は先走っちゃったね、うん。


「えっと、ノアの力を借りてやりたいことがあるの」


「うん」


「その内容が結構大変で……今より一昔前に封印された大悪魔の封印を一度、改めて再封印して欲しいのよ」


「なんでそんなことをアンリが……?」


 アンリの頼み事。

 それを聞いた僕がいの一番に思ったのはなんでそれを彼女が知っているのか、である。

 えっ?なんか世界的にも、歴史的にも、結構重要そうな話じゃない?つか、そんな話、ゲームにもなかったんだけど……。


「ちょっとした諸事情でね」


 どんなちょっとしたことがあれば、割とこの世界の歴史的にも重要な出来事を知れるの?

 というか、封印された大悪魔って一体……?


「(フロイデさん、フロイデさん)」


 というか、悪魔に関することなら普通にフロイデに聞けばいいよね。


「(彼女が言っている大悪魔に心当たりってある?)」


「(……なくはないけど、私の想定が正しいのであれば目の前にいるアンリの正体に関する疑問点は膨れ上がる、って言っていいかも?あれが封印されていることなど、それを覚えている人間なんてもう居ないと私は思っていたのよ)」


「(なるほど)」


 僕はフロイデの言葉に頷く。


「(それでも、ノアであればあの悪魔もそこまでの問題じゃないと思うわ。もし、アンリが悪魔を開放して世界を破滅にもたらそうとしていたのだとしても……間違いなく倒せるわね)」


「(……)」


 いや、美少女であるアンリが世界に破滅をもたらそうとしているなんて、とてもじゃないけど思えないよ?うん、美少女であるアンリがそんな悪い人であるわけない。


「(今回はあえて乗って、敵の思惑を見るのもいいじゃないかしら?向こうは貴方のことを一方的に知っていたみたいだしねっ!ちょっと危険かもでしょう?)」


 なるほど、それでアンリの無実を証明するわけだね。

 実に素晴らしい話だ。


「……よし」


「えっと……結構熟考していたみたいだけどどうかな?私のお願い、聞いてくれるかな?」


「もちろん。アンリからの頼みとあれば断れないからねっ!」


 自分の前で少しばかり不安そうに告げるアンリに対し、僕は先ほどのフロイデとの話し合いの結果出した結論を差し出すのだった。

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