クトルゥフ

「ねぇ?なんで誤魔化そうとするのかしら?そのラミリってのは一体何者なのかしら?私は聞いたことも見たことないのだけど。この国の人間でもないし、主要国の人間でもないわよね?そんな名前の貴族の名前はいないはずだわ」


「いや……その」


「ねぇ、何か言ってくれないかしら?そんなに黙ってばかりじゃ私は哀しいんだけど?」


 自分がうっかり漏らしてしまったラミリの名前について、僕が徹底的にアンヘルへと詰められていた中。


「ふ、二人ともっ!」


 ナトアの方が慌てた声を上げると共に自分たちが立っていた場所に亀裂が入り始める。


「よっと」


 それに対して、僕は素早く魔法を発動。

 自分だけでなくアンヘルとナトリも含めてその場から転移させ、危険だと判断した場所から逃れる。


「……んー」


 そのわずか後、僕たちが立っていた場所が大きく崩れ去って一つの形容しがたい化け物がこの場に姿を現す。


「ヒッ!?」


「……な、何と醜悪な」


 前世におけるクトゥルフ神話にでも出てきそうな見た目をしている巨大な……何だろう?泥巨人?もう、何か全身ドロドロで辛うじて人間のような見た目をしている化け物を前にアンヘルが悲鳴を上げ、ナトアの方が大きく眉を顰める。


「(……ど、どれだけ弄ったのかしら?数十人の魂が混ざっているわよ?あれ。いくらなんでも禁忌に触れすぎじゃないかしら。肉体も、肉体で本当に大変なことになっているわ)」


 人間の魂を弄るのが趣味と言える悪魔までもちょっと引くような生物っていったい何をしたのさ。

 ちょっと怖くなってくるんですけど。


「(警戒しなさいよ?)」


「(わかっているよ。ちゃんと警戒しているし)」


 フロイデに言われるまでもなく面倒くさそうな相手だということはわかる。


「二人とも。ちょっと下がってて。早々に潰してくるから」


「……っ!?ちょっと、何を言っているの!?」


「だ、大丈夫なんですかぁ?わ、私たちで協力したほうがぁ」


「大丈夫。僕の方に任せてくれればいいから」


 アンヘルの実力も、ナトリの実力も僕は良く知っている。

 うん、その上で要らないかな。ちょっと待っていてほしい。


「んじゃ」


 僕はササっとアンヘルのナトリの二人を魔法で作った結界を囲い込んで隔離し、その上で単身突っ込んでいく。


「こんなクトルゥフっぽいのと戦うの嫌なんだけどなぁ」


 別に僕だって戦いたいわけじゃないよ?

 ただ、敵として自分の前に立っている以上戦うしかないよね……その意思で僕は自分の前にいる禁忌たっぷりの化け物へと強烈な魔法をまずはお見舞いしてやるのだった。

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