6月第3週 ムシファイト

『ラダチーニ メルロー ロゼ

 2021

 ラダチーニ ワインズ』


 東欧モルドバ共和国、ルーマニアとウクライナに挟まれた小さな国から生まれたワインである。

 日本ではあまり知られていない国ではあるが、ワインの歴史は古く5000年前から造られていたという説がある。

 肥沃な土壌を持ち、気温の日変化・年変化が大きい大陸性気候で、ぶどうの栽培条件としても優れた地域と言われ、様々な土着品種も存在する。


 今回は国際的に知られている品種メルローを使ったロゼを開けてみる。

 造り手はラダチーニワインズ、本格的でユニークな個性を持ったワインを造りたいという強い願望に端を発し、栽培醸造すべての技術や作業に全身全霊を注ぐプロ集団だそうだ。


 淡いピンク色の薄い色素ではあるが、ラズベリー系の甘酸っぱさとハーブのような青さが華やかに香る。

 味わいもフレッシュで軽やかだが、ベリー系の風味が豊かでリッチさもある。


 すでに真夏のように異常な暑さのこの週には、冷やしたこの1本は最高だ。


『赤魚の煮付け』


 特売で安かった時に買って冷凍して放置していた赤魚を発掘した。

 どのように食べようか考えてみた。

 今回のワインであれば、煮付けでも十分に楽しめるだろうと試してみた。


 誰でも簡単、という触れ込みであったので、セブンの黄金比レシピにしてみよう。

 レシピではカレイだが、赤魚でも問題なかろう。

https://7premium.jp/blog/detail?id=1348


 ネギを切り、レシピ通りの黄金比で煮汁を作る。

 早くも甘じょっぱい香りが鼻腔をくすぐるが、赤魚を煮る。

 煮込み料理の良いところは、火にかけたまま放置できるので、この煮込み時間に先のワインを楽しんでおこう。

  

 時間になれば、ひと手間だけかけて実食だ。


 醤油とみりんというのは日本人の遺伝子に染み付いているかのようにどこかホッとする味わいだ。 

 冷凍の切り身ではあったが、和風味がよく染み込み、身もホロホロとほぐれていくので、思っていたよりも良い一品が出来たと思う。


 そして、ワインと合せよう。


 魚のくさみを取ってくれるネギと生姜のおかげか、スッキリとした酸味のあるワインとの相性が良い。

 甘い風味のある煮付けの味だったが、フレッシュなワインと合わさることでいくらでも食を進めてくれるようだ。


 実はこのワインは低価格帯であり、赤魚の煮付けも特売だったのでかなりコスパの高い食事となった。

 値段以上の喜び、これもまた日々の生活にかかせない小さな感動を呼び、大事な生きる活力になる。 


☆☆☆


 今週は異常に暑い。

 まだ6月半ばだというのにすでに30度超えの日々が続いてしまっていた。

 しかし、それでもやるべきことは山積みだ。


 苗木もグングン伸びてきたわけだが、想定以上の早さである。

 2週前から徐々にやっていた番線張りだが、そろそろ本格的にやっていかないといけないようだ。


 前回の失敗である、油断して番線を最後まで絡ませないように集中して行う。

 二人でやっていればどうということもないが、一人でやっているので少々手間がかかる。

 だが、何事もやってやれないことはない。


 炎天下であるが、大体形になってきた。

 追加の支柱を加工して立てて金具の調整、番線を伸ばして張り詰める。

 文字にすればその程度だが、この1週間の大部分の時間を費やした。

 残り僅かとなったところで、番線が足りなくなったので、本日日曜日に持ち越しだ。


 連日季節外れの暑さで乾燥している。

 雨が降ったと思ったら、一瞬だけ地面が湿る程度であった。

 そして、まとまった雨が降った日から10日以上経った金曜日、苗木の葉っぱに元気がなくなってきたように見えた。

 翌日には急いで苗木の水やりをして一安心だ。


 さて、こんな季節外れの暑さであるが、異常に元気なヤツラがいる。

 虫どもである。


 農業をやる者にとって、宿命の敵である最凶の悪魔どもだ。

 ブドウにとっても当然ヤツラは無慈悲なる破壊者なのである。

 

 これまでも少なからずいたのだが、今週になって急激に増えたのがコガネムシである。

 コイツラは光沢がある甲虫で童謡になるほど見た目は可愛らしいが、葉っぱを食い荒らす厄介な魔物だ。

 

 ブドウの葉っぱぐらいと非農家の方々は思うだろうが、植物は光合成で栄養を作り出している。

 そのため、葉っぱがなくなってしまったら、木も成長しないしブドウも甘くならないのである。

 

 コイツラは数が多くいつでもどこでもやってくる厄介者である。

 しかし、虫の中では大きく、しかも動きがノロイので簡単に倒すことができる。

 見つけ次第、捕まえて潰すだけの簡単な作業だ。

 ただし、幼虫は土の中にいるのでなかなか対処が難しい。

 幼虫の間は根っこを食べるので、木が弱りやすくなる。


 他にも様々な厄介な敵どもはいるが、今回被害を受けた悪魔を紹介しよう。


 ブドウの苗木が伸びてきたので、枝を支えに留めていく誘引作業をしていた。


「なんじゃと!?」


 軽く触っただけなのに、苗木が根本からへし折れてしまったのである。

 これは明らかにおかしいと思い、その苗を掘り返してみた。

 折れた部分の中は空洞になっていた。 

 その先をさらに切り開いてみると、ヤツがいた。


 ブドウスカシバの幼虫である。


 コイツラの見た目は蜂のようであるが、毒針で人間を襲ってはこない。

 しかし、ブドウに卵を産み付ける。

 そして、ブドウの枝の中で卵から孵った幼虫がエイリアンのように内部から食い荒らしていき、枯らしてしまう魔物だ。


 発見したヤツを真っ二つに切り裂く。


 この魔物の被害にあったのは、今のところ2本だけで全体からすれば微々たるものだが気分は良くない。

 コイツラの生態を考えると前年に植えられた卵が今時期に孵化するので、おそらく苗木屋にいた時に寄生されていたのだろうが、証拠はないので追求はしないでおこう。


 他にも木を内部から食い荒らす魔物は存在する。

 コウモリガの幼虫である。

 

 コイツラの特徴として、外部から木を食い破り、内部に侵入してくるというカンディルのような殺し屋だ。

 カンディルはアマゾンでピラニアよりも恐れられているが、コイツも同じように危険な悪魔だ。


 ただ、コイツラの被害状況は一目瞭然でわかりやすい。

 侵入箇所にこんもりと赤茶色の糞や木くずを撒き散らしているので、早期発見であればすぐ近くの浅い部分にいる。


 今回は運良く、苗木の先端部分からの侵入だったので、スペアの枝が生き延びれそうだ。

 先端部分をハサミでカット、ヤツのこれ以上の侵入は防ぐことができた。

 

 ヤツを発見したところで、悪即斬だ。


 こうして、虫どもが大人しくなる時期まで戦いは連日続いていくわけである。


 


 追記


 この当時は勉強不足で、スカシバとコウモリ蛾と勘違いをしておりました。

 へし折った輩は、コウモリガの幼虫です。

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