7月第5週/8月第1週 抜いてスッキリ
『アルパカ・スパークリング・ブリュット
NV
サンタ・ヘレナ』
おそらく、今では日本中どこでも見かけることができるほど席巻している旨安ワインの代表格アルパカシリーズである。
生産者であるサンタ・ヘレナ社は、チリワインを世界中に輸出してきたパイオニアと言えるだろう。
今回はその中のスパークリングワインを開けてみよう。
シャンパングラスに注ぐと清涼感のある泡が立ち上る。
口当たりはキレのある辛口ではあるが、瓶内二次発酵ではなく炭酸ガスを後から混入しているからか、泡が荒っぽい感じがする。
味わいはふくよかでやや甘みを感じるが、ビールほどではないが苦みもある。
余韻もシンプルであっさりと後味は消えてしまうが、値段を考えれば妥当なところだろう。
酷暑の今であれば、何も考えずに飲むのにちょうど良い。
『ナスの煮浸し』
いただきもののナスがあったので、今回にちょうど良いだろうと使ってみた。
わりと優しい味わいの煮浸しであれば、鞭で打たれたようにズタボロの肉体にもじんわりと沁み入るだろうと思った。
作り方は簡単、ナスの皮側に切れ目を入れて食べやすい大きさに切り分ける。
ほんだし・みりん・醤油を少々の水に混ぜ合わせて煮汁を作る。
その後はナスを軽く油で揚げて、煮汁に投入して軽く煮てから火を消し、30分程放置して味を染み込ませてあげれば完成だ。
皿に盛り、あさつきを振りかけて実食だ。
思っていたよりも薄味だったが、疲れている身体にちょうど良く沁み入る。
そして、ワインと合せよう。
シンプルな味わいのスパークリングワインである、優しい味わいのナスの煮浸しをスッキリと食べさせてくれる。
辛口の炭酸であれば大概の食事に馴染みやすいが、薄味の物とも十分に合わせられる。
激闘を癒やすかのように穏やかな食事の時が流れる。
このホッと一息つける時間がまた明日への活力へと変わるのだろう。
ゆっくりと過ぎ去ったワインの後には、煮汁の残りで締めのうどんを茹でる。
こうして今日という日が終わりを告げる。
☆☆☆
この週は畑の造成作業の大一番であった。
先週までに他の畑はあらかたやるべきことはやっておいたので、造成作業を再開した。
とにかく荒れ地にある木々を伐採しなければならない。
残っているのがクルミの大木が1本と小木が数本だけであるが、大木は1本倒してバラすだけでほぼ1日がかりである。
週の前半は30度程度であったのでまだ何とか身体は動いたが、それでも全身汗でずぶ濡れになってしまった。
そんな時は昼休憩にシャワーに入ってスッキリ汗を流して着替え、食後に仮眠を取る。
その後は伐採を再開し、たまに熱帯のようなスコールに降られることもあった。
そういう場合はショーシャンクのように天を仰ぎ雨に打たれるのだ。
一人で激務に追われていると、たまにバカなことをしたくなるのが人間という生き物ではないだろうか?
気がつけば週の半ば、ようやくそそり立つ木々は無くなり、切り株と丸太が転がるだけになった。
丸太を人力で運べる大きさに切り分けるだけでも重労働であるので、終盤は流石に肉体の限界を感じて途中で止めた。
しかし、これにも作戦がちゃんとあるのだ。
木金土の3日間はバックホー、通称ユンボ、またの名をショベルカーをレンタルして切り株を引っこ抜いていく。
今回はちゃんと予報通り3日とも晴れ間が続いた。
だが、35度の炎天下でもあった。
そんな中でもレンタル期間内に終わらせねば経費の無駄遣いとなるので、クラウドファンディングの株主の皆様に申し訳ない。
ここが例の畑なのだ。
そうして作業を開始していく。
小さい切り株であれば1堀2堀で抜けるのだが、巨木となると半日がかりにもなってしまった。
巨木の根っこは1本でも小さい木の幹よりも太いのである、大外から徐々に掘りながら細い部分からバックホーで引きちぎっていく。
それでもまだまだ抜けないので切り株に近い大量の土をスコップで削ぎ落とし、木の幹のような根っこをチェーンソーで切り離していく。
そうしてコンパクトなサイズになってようやく地面から引き剥がされた。
この抜く瞬間のカタルシスはたまらない。
男にとって抜く瞬間は至福の刻なのだ。
……一体何の話をしているのだ?
さて、切り株を引っこ抜き、徐々にスペースができてくると途中で諦めた丸太を回収できるようになる。
人力では細かく切り分けなければならなかった丸太も、バックホーであればあっさりと運搬できたのだ。
そうして作業は捗り、2日目に1本の巨木の切り株を残して全て抜くことができた。
そうなれば気がかなり楽になる。
そのおかげだろうか、最大の大きさの切り株であったが、こちらは意外にも2時間ほどで抜くことができた。
気持ちに余裕があると物事はうまく運びやすくなるようだ。
最終日の早い段階で無事に全ての切り株を抜くことができた。
そうすれば大量の穴を埋めていく。
切り株のあった穴は大小さまざまで、最大のものでは5人ぐらいは生き埋めにできそうな大きさである。
返却に間に合うかどうかが最後の戦いとなる。
この時に掘り出された石や巨大な根っこもできる限り回収していく。
この根っこの回収がいけないことはわかっていた。
クルミの樹液を根っこから大量に浴びてしまったせいか、腕がカブれてしまって夜も眠れなかった。
さらに、集中力が研ぎ澄まされていたせいか、熱中症気味であることにも最終日の夜まで気が付かなかった。
だが、やり遂げた。
レンタル業者が回収に来る頃には穴は埋まり、ある程度地面を均すことができた。
そうして、今回のメニューでほんのささやかな祝杯となったわけだ。
抜いてスッキリしたことで、賢者のように今後の作戦が考えられそうだ。
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