7月第4週 残念ながら
『シャトー トゥール オー コーサン
2013
(メドック クリュ ブルジョワ級)』
まだ出てくるストックワイン、今回は10年以上熟成されているこちらを開けてみよう。
ワインの説明は『神の血に溺れる』第一部第四章 貴重な出会い を参照してもらいたい。
https://kakuyomu.jp/works/16816452221215702293/episodes/16816700428845175713
以前開けた時よりもさらに三年程熟成が進んでいるとはいえ、飲んでみた印象はやや違った。
温度を低くしすぎたことにより酸味が際立ったことは別の話として、どっしりしていると以前は感じたが滑らかなタンニンのおかげか、やや軽く感じた。
ブラックベリーのような果実味は健在であったが、トリュフのようなきのこ風味は感じなかった。
その時々の自分自身の体調やこれまでの時の流れで味覚の変化もあったりする。
人間の感覚というやつは非常に曖昧であるので、人付き合いと同じで接し方によって見方が変わる場合もある。
これもワインの楽しさと難しさでもある。
『和風きのこソースの赤身ステーキ』
以前感じた印象からきのこが良いだろうと勝手に思い込んできのこソースにしてみた。
肉もまた王道という分かりやすい合わせ方でもある。
きのこソースは味の素のレシピサイトを参考にしてみた。
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/703431/
材料は細々としているが、調理は意外にも短時間で完了した。
ソースは別として、基本的には肉を焼くだけなので簡単で当然か。
焼き加減はレアにしてみた。
では実食。
思っていたよりもソースにダシときのこの風味が濃縮されており、和風の濃い味となっている。
ただ固めの赤身のレアなのでわりとちょうど良い味付けか。
ワインと合わせてみよう。
確かにおいしいが、料理の味に対してワインが少々軽かったように思える。
ちょっと肉肉しさが勝りすぎるような印象がある。
ただ、それでも一人の自炊としては十分に楽しめるところだろう。
週に一度の贅沢であるが、常に最高である必要もなく、日々の疲れを癒やしてくれれば良いのだ。
☆☆☆
前回にほんの少しだけ触れたワイナリー候補地についてだが、残念ながら無い話となった。
隣の市の不動産屋が管理している物件だが、思い出すだけで腹立たしいので詳しい話は語らないでおこう。
さて、煩わしい話がなくなったことで頭の中もやるべきことがスッキリとしたので切り替えることにしよう。
今年の異常に早い生育、新しい畑の造成、8月のハンター試験のための勉強、今年のワインを造るために必要なこと、やるべきことは他にも山積みなのだ。
やることは山積みだが、この週は研修会やら農業委員会の話し合いやら畑に出れない時間も多々あった。
その隙間時間でできる仕事をやっていく。
先週は雨も多かったからか、早くも草が伸び放題だ。
特に苗木の方はまだ背が低いので、少し伸びただけで埋もれそうだ。
そんなわけで、隙間時間に草刈りをする。
草がなくなってみると、苗木もまた良く伸びている。
支柱や番線に伸びた部分を固定してあげれば、強風に煽られて折れにくくなる。
そうしてキレイに整列されたら農薬で消毒してあげよう。
これだけ湿気が多く温度も高いと病原菌が元気になりすぎるからだ。
成木園の方は、なんということでしょう!
7月22日(月)には色付き始めているではないか。
早いと思っていた昨年よりもさらに1週間以上も早い。
このままいくと9月中旬の収穫になるだろうか?
こちらも天気予報の雨予報の前に消毒してあげる。
水曜日には県内の若手ワイナリー関係者が集まり、地元ワイナリーの園地視察を行った。
思っていたよりも大人数で何十人という団体であった。
これには良い刺激となり、僕自身も自分の方向性をより一層深く突き詰めていきたいと思う。
その翌日には市内の農業委員会での意見交換会に出席した。
地元の重鎮たちの間にペーペーの僕が一人でポツンと席についていた。
若手の出席が他になく、若い力が実に寂しいと思う。
積極的に若い力が行動しないから世代交代が起きず、このまま衰退していきそうな日本の縮図のような気がした。
そんな中で僕も意見をしたが、獣対策を地域で協力してできないだろうかということ、これには重鎮たちも悩まされており、近い将来への危機感を感じているようだった。
実は農業者が前線に立ち、農地を守ることで獣対策となって町への進出を阻んでいるのである。
農業者の心が折れれば、耕作放棄地が増え、獣の新たな拠点となる。
最近では秋田の熊の問題があったが、このままでは今後は各地方で多発するようになるだろう。
そんな話のあった日に、豪雨であった。
幸いにもこちらは比較的大丈夫だったが、まだまだ悪天候が続く予報だ。
試練の時が続いていく。
雨の合間に成木園の枝を切り詰める作業、摘芯を行い畑を明るくしてやり風通しも良くしてあげた。
これでうまく実に栄養がいってくれれば良いが、タイミング悪く色付き(ヴェレゾン期)に入ってしまった。
やれるだけはやったが、うまく色が乗ってくれるかどうかは後は祈るしか無い。
暗い話で終わっては気が滅入るので、土曜日には地元のスマイルプロジェクトなるもので花火大会があり、出店の片隅に立ってみた。
ワインを売るには半分近くがU-18だったので出番はほぼ無く、ほとんどブラブラと会場を歩き回り、打ち上がる花火を間近で楽しんだ。
ろくでもないことが多くとも、ほんの一時でも笑えれば人は前を向いて生きれるものだろうと思った。
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