4月第3週 人間は独りでは生きられないのである
『ガヴィ
2022
フラテッリ ジャコーザ』
ガヴィとは、イタリア・ピエモンテ州でDOCGに認定された白ワインで、使われている土着品種コルテーゼを冠し、正式には「コルテーゼ・ディ・ガヴィ」とも呼ばれる。
「食べても美味しく、いいワインも造る」コルテーゼというブドウから造られるガヴィは、少し暑い日に低めの温度に冷やし、食前酒としても楽しめる。
今回のワインはフラテッリ・ジャコーザ、イタリア語で読んでも文字通り、小作農家を営む家族だったジャコーザ兄弟によって始まったワイナリーらしい。
さて、実際に開けてみよう。
スッキリと澄んだ淡いイエロー、あまり強くない香りだがリンゴのようなフレッシュさが心地よい。
味わいには柑橘系の爽やかさとパイナップルのような南国果実のコクがあり、余韻にあるグレープフルーツのようなほろ苦さも面白い。
初夏を感じる日の多い今春では、早くも楽しめる味わいだ。
『たらのアクアパッツァ』
ここから海はやや距離があるからか、シーフードを食べたくなった。
春らしくアサリに決めたが、潮干狩りに行く余裕は無いのでスーパーで買ってきた。
で、さらに簡単レシピを探すと味の素でタラの切り身でも作れるレシピがあった。
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/800222/
簡単レシピだが、アサリの砂抜きをしなければならない。
塩水にザバッと放り込んで他の事をやっていれば、それなりに良い時間になった。
そこから調理開始だが、特筆すべき描写はないので省略だ。
実食。
コンソメキューブ1個であったが、十分に良い味が出ている。
アサリを殻ごと蒸し焼きにしたからか、程よい出汁が出ているのだろう。
このだし汁をバゲットに浸してあげれば、1品料理として楽しめる。
さて、ワインと合わせよう。
辛口スッキリのガヴィは魚介類との相性は良いと言われるが、やはりバッチリと合う。
ピュアな味わいのワインであるので、シンプルな味付けにしたこのアクアパッツァをより良く楽しませてくれる。
定番の想定通りの美味しさには、どこかホッと心和ませてくれるものがある。
☆☆☆
今週は予定よりも多くの出来事があった。
まずは今年の苗木植え付け予定地の整地直しが完了した。
厳密に測ればまだまだであるが、道路や家を建てるわけではないので、苗木を植えれ且つ農作業が可能であれば十分だ。
もう1つのブドウ畑であるが、ついに萌芽した。
全ての木の全ての芽ではないが、ある程度芽吹いたことで今シーズン開始の合図である。
このスタートで大事なのは石灰硫黄合剤の農薬散布、防除だろう。
石灰硫黄合剤は有機農法でも使用可能な農薬であり、ブドウ栽培の初期防除で重要な役目を果たす。
人間でいうところの予防接種だろうと思う。
スプレイヤーは昨年と同じく、いつもお世話になっている地元ワイナリーで借りてきて撒いた。
この大型農機具は広範囲を短時間で簡単に作業可能となるが、乗り込み式のキャビンの窓ガラスが石灰のせいで視界不良となるのが大きな欠点だろう。
それでも作業があっという間に終わり、今年も良いブドウが実るように願掛けをして終了だ。
例のクラウドファンディングも残り1週間ちょっとで終わりとなる。
少しずつ株主が増えて支援金が徐々に集まっているが、今年こそワインを造ることができるかどうかはラストスパート次第になる。
この世は金こそが力、力なきものに理想は実現できないのはこの世も異世界も同じだろう。
さて、自分の仕事以外にも家のお隣さんの仕事のお手伝いも行った。
僕の住んでいる地区は、町の中心部から離れた山麓の農村地帯にある。
それ故に農業関係者も多い。
さらには、僕の親世代の高齢者が主要人口で、子供世代が外に出て働いていることも多く、後継者問題があったりもする。
それだけが理由ではないだろうが、僕は人手がいる作業に呼ばれたわけだ。
米の苗を作る作業、播種という種まきのお手伝いである。
種まきも実際には人力ではなく、ベルトコンベア式の播種機を利用し、苗木を育てる専用の箱に土と種籾を機械的に撒いていく。
そうして次々と種まきの終わった箱が完成していくわけだ。
僕はその完成した箱を積み上げていく作業を担当した。
体力があれば誰でもできる作業である。
その積み上がった箱を運搬係が台車に積み込んで、苗を育てるビニールハウス、育苗ハウスに次々と並べていく。
あっという間にハウスの半分は埋まり、休憩となる。
皆様のペースに合わせてなのか、僕一人で作業している時よりものんびりだが、これも良い地域交流なのだと思う。
僕以外の皆様は地元の親世代であり、特に訛りの強い御仁の話の半分近くが聞き取れなかったりした。
それでも、一軒家に一人ぼっちの余所者に世話を焼いてくれることはありがたかった。
そうして朝から夕方まで1日仕事であったが、大きなビニールハウス2棟分がびっしりと育苗の準備が出来上がった。
最後に、市主催のワインセミナーでは遠く岡山県でワイナリーを営んでいる方が講師として招かれた。
かつてフランスでワイナリーを立ち上げ、日本に帰国してからもワイナリーを経営しながらワイン業界や地域に貢献しているという。
僕にとっても偉大な先人になる。
講演のあとには、地元の飲食店での交流会、直接色々な話をする機会ができて本当に良かったと思う。
僕が感じた重要な部分は適地適作、地域に適した品種の選定は基本であるが、やはり大事なことであるのは共通認識ではあった。
他にも、これから世界と戦っていくためには有機農法の取り組みも重要になってくるが、気候風土、虫対策が今後の大きな課題であるだろうと思う。
その御方もワイン業界では成功者の一人であるが、翌日に僕の開拓中の畑に来ていただき、直接話しをしてみると傲慢なところがなく腰の低い人格者の印象だった。
もちろん持論もあり、経験に裏打ちされた芯の強さも感じられた。
僕の本当に求めるワインの方向性とはやや違うが、それでも良い交流を持てたと思う。
見えるところと見えないところ、本当に様々なところで人間という生き物は影響を与え合っていると実感できた週であった。
本当により良く生きるためには、人間は独りでは生きられないのだろうと思った。
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