10月第5週/11月第1週 人間らしく

『グラドゥアータ グラッパ ディ ネッビオーロ

 NV

 シボーナ』


 今回は変化球で、食後酒である『グラッパ』にしようと思う。

 グラッパとはブドウの搾りかすから造られる蒸留酒である。

 グラッパもブランデーの一種ではあるが、製造方法の違いから細分化されており、国地域でも呼び名は変わる。


 今回の蒸留所シボーナはイタリアで最初に登録された最古参であり、良質な搾りかすを手に入れることからこだわる品質至上主義を百年以上貫いているそうだ。

 品種ごとに違う個性を引き出しているそうで、今回はピエモンテ州を代表する品種ネッビオーロを開けてみよう。


 グラッパ用に小ぶりのグラスに注がずとも見てわかる通り無色透明、ステンレスタンクで熟成させた若いタイプらしい。

 蒸留酒であるためアルコール度数も40度と高く、香りをかげばむせかえる。

 極少量だけなのでワンショットで煽る。


 正直に書こう。

 

 グラッパの違いが分かるほど飲み比べた経験がないので、よくわからなかった。

 のど越しはフレッシュでクリア、しかしながら胃にカッと火が点いたように全身が暖まる。

 寒くなってきた秋の夜長にちょうど良い。


『おでん』


 肌寒くなってきたので内側から暖まる食べ物の定番おでんにしよう。

 日本人であれば語らずともわかる超有名料理である。

 しかも調理済みパックなのでさらに語るべきことは無い。

 見た目だけはそれっぽく土鍋に開けて温める。

 

 実食も省略し、ワインと合わせよう。


 今回の食中酒は出っぱなしワインのロゼ、このシーズン最初の1本である。

 詳しい説明はこちらで。

https://kakuyomu.jp/works/16818093075006753987/episodes/16818093075008866404


 このロゼも本来ならば収穫祭の参加者へのプレゼントだったのだが、孤独の収穫災となり大量に余ってしまったので自分で収穫終了を祝うために開けている。

 本来の味わいよりも塩味が濃い気がするが、おでんとも合わせられるフードフレンドリーな楽しい作品でもある。


 インスタントであるが、おでんは心身ともに暖まる素晴らしい食べ物だ。

 心の隙間風も癒してくれる。


 そして、今回のグラッパで食後酒として〆よう。


 おでんで心身ともに満たされ、秋の夜長をまったりと過ごす。

 日が沈む時間も早くなり、1日の稼働時間も平均的労働者の定時並みになってきた。

 おかげでゆったりとした夕食を楽しみ、今後のワイナリー設立計画や今年のワイン販売計画さらには今後の生産・経営計画を立てたいところだ。

 しかし、日が短くなったとはいえ夜には体力が消耗されて脳がうまく機能してくれない。


 そんな時はグラッパを食後に一口含み、満杯の胃の消化を活性化させる。

 そうして今シーズンの疲れを癒すように惰眠を貪る。

 その代わりに早い時間に起き、最も脳がフレッシュな状態で内勤をやれれば良い。


 人間らしくやるときはやり、休める時には休むのだ。


 グラッパが美味しく感じるようになってきた今日この頃、全力だった今シーズンのピークも終わったのだと実感できるのであった。


☆☆☆


 我が愛しのワインはついに樽とステンレスタンクに分注され、瓶詰の時期まで眠りにつくことになった。

 これまでは樽に満量まで入っておらず、空気に触れて酸化してしまう危険性のある状態であった。

 当然、発酵が終わった状態でもある程度の炭酸ガスが樽内の空きスペースに充満していたので空気に触れて酸化されない状態だったから問題はなかった。


 しかし、それでも長い間放置していれば酸化してワインが劣化してしまうので良いことは無い。

 早い段階で隙間を埋めてあげる作業ができたので良かった。


 結果として樽2つと超小型のステンレスタンク1つ、おそらくはボトル900本強になるだろうと思われる。

 後は最後に瓶内二次発酵を行い、ランブルスコ風の辛口薄赤スパークリングワインを造ろうと思う。


 難しい年ではあったが、どうにかこれで落ち着くことができた。

 まだ完了はしていないのだが肩の荷は下りた。


 そして、今シーズン最後の造成作業もついに終わった。

 

 今回は畑の外周部分を整地し、機械を走らせるスペースを整備した。

 通称ユンボで土が多い場所をほじくり返し、少ない場所に運搬台車でせっせと運ぶ。

 ダンプ機能があれば楽だったが、これでもあるだけでかなりの戦力となった。


 もう少しやりたかったが、流石に全てを終わらせるには時間が足りなかったか。

 それでも最低限だけはできたので良しとしよう。

 残りは来年に持ち越しだ。


 秋も深まってきたし収穫も終わった。

 しかし、来年に向けてまだやっておきたいことがある。


 このエリア最後の造成を来年に行う準備だ。


 所有者死去のために耕作放棄地となったサクランボ畑を借り受けてブドウ畑に造りかえる計画をしている。

 一応、親戚がサクランボの木の伐採だけはやってくれたがまだサクランボハウスと根っこが残されている。

 当然、サクランボハウスがあると造成作業ができないのだ。


 で、そのサクランボハウスを解体したい。

 そして、そのハウスをブドウの雨除けに作り替える作業をできるだけ早くやっておきたいのだ。

 何もかもが高額になっているので、使えるものは何でも使っていきたい。


 とりあえず解体だけは雪が降る前に終わらせ、冬の間に雨除けに改造できれば良いかなと考えている。

 

 他の作業を終わらせたのでサクランボハウスの解体を早速始めてみた。

 これが大体二階建て住宅ほどなので、ちょっとした高所作業になり危険な作業となる。

 かつてオーストラリアで60mの木登りをした時ほど命の危険はないが、慎重に上から順番に部品を外しながら解体していく。


 思っていたよりも細かい部品が多いので、屋根の解体だけでも10日はかかるだろうか。

 雨や他の予定を考慮すれば、全部で1か月はかかる大仕事になるだろうと思われる。


 この作業はそれほど急ぐわけではないので安全第一でやろうと思う。

 そして、ゴブリンに間違えられて撃たれないように人間らしく身嗜みに気をつけたい。

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