春
4月第1週 今シーズン開始に向けて
『ポーキー・ピンク
2022
蔵王ウッディファーム&ワイナリー(出っぱなし)』
かつて僕自身がコンセプトから考えて醸造したワインである。
しかし、ブドウも僕自身のものではないし、設備どころか多くのことをワイナリーの皆様にご協力してもらったので完全な自分のオリジナルとは言えない。
が、ワインとしては面白い作品になったと思う。
ピンクという名の通り、ロゼワインである。
だが、通常のワインとは違い、主体となっているのはソーヴィニヨン・ブランという白ワイン品種である。
そこに白ワイン品種シャルドネで味を底上げして前年の赤ワイン・メルローで色付けをしたものだ。
実際に面白いかどうかは飲んでみればわかるが、残念ながらワイナリーではすでに完売している。
まだどこかの酒屋にはあるかもしれないが、それは分からない。
とりあえず、開けよう。
ザクロの花のように鮮やかな色合い、始めの温度の低い状態ではソーヴィニヨン・ブランの持つ南国フルーツの香りと味わいが前面に出てくる。
シャルドネもブレンドされていることで、軽やかなソーヴィニヨン・ブランの味わいに厚みが出る。
そして、開けて時間が経って温度がやや上がってくると赤ワインとして出来上がっていたメルローの持つ、イチゴなどの果実味や芝生のような青さも加わり、雰囲気が手品のようにガラッと変わる。
手品、これを商品名のポーキーとして使っており、厳密に言えば『
ホーキー・ポーキーには様々な意味があり、ラテン語の「手品」の意味から来た言葉のようで、ニュアンス的には『ちちんぷいぷい』が近い訳になり、NZの代表的なアイスクリームの名前でもある。
長々と語ったが、ワインの持つ楽しさをもっと広めたいという想いで考えた作品だ。
敷居を低くして、ワイン初心者にこそ親しんでもらいたいという狙いがある。
『桜えび香る春野菜ロール』
何か春らしいものにしたいと考えてレシピを検索してみた。
そして、味の素のレシピサイトで面白そうなものを発見したのでパク……採用してみようと思う。
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/801422/
桜えびの春漁は3月中旬~6月初旬、たけのこや春キャベツも今が旬なので1話目にはちょうど良い。
豚の薄切り肉はロール用なので見なかったことにしよう。
実際の料理は省略して早速食べよう。
シャッキリポンと舌の上で踊る!
というのは冗談として、シャキシャキのキャベツとたけのこにじんわりと広がる豚の濃厚な脂の旨味だ。
さらに桜えびの芳醇な香りがたまらなく中枢神経を刺激して食欲をそそる。
しかし、がっつかずにワインと合わせる。
やはり間違いない。
ロゼは日本の食卓に最も合うワインだと思う。
海の香りの桜えび、陸のタンパク質である豚肉、大地の野菜たちと合わせても違和感なくフレンドリーに楽しめるのである。
現代日本の食卓は和洋中何でもありで、節操がない。
そんな中でもロゼワインは安定して楽しめる。
ワイン通を自称する一部の日本人は毛嫌いしているが、ロゼワインは最も気軽に飲めるデイリーワインだと僕は考える。
さて、こうして春も本格的になってきたところで新たな戦いが始まるのだ。
☆☆☆
新たな1年が始まったわけだが、やることはこれまでと何も変わらない。
畑に出て、ブドウを育てていくことが最優先事項だ。
とはいえ、まだブドウは芽吹きを待つばかりでそれ程急ぐ必要はない。
ないが、他にやることはいくらでもある。
昨年開拓した畑であるが、4月下旬に苗木が到着する予定になっているので、植え付け前の下準備をする必要がある。
前回(前作最終話)にすでにその理由を書いたが、一部整地をし直さないといけない部分に土をせっせと運び込む作業を行った。
始めはこの絶望的に感じた地道な作業も、徐々に畑の形になってきた。
簡易版の獣除けネットの補修の方も、今年の造成部分の境界を調整し無事に補修は終わった。
あとは、ネットの下の隙間に石でも積み上げてイノシシ共の侵入を防ぎたいところだ。
苗木を植えて荒らされたら、たまったものではないからだ。
自分の仕事は今のところ順調に推移しており、今シーズンも無事に乗り越えたいところだ。
日曜日の午前中には、住んでいる地区の人足作業、来たばかりであるので協力者という形で簡単なゴミ拾いをした。
住んでいる地区の割と大きめの田んぼのある街道のゴミ拾い、のんびりと他の方々と歩いていく。
ついでに、家のお隣さんである市議に、近所でワイナリーをやりたいんですよね、と媚を売ることも忘れない。
午前の早い時間に解散してことで、自分の作業へと向かう。
昨年に引き続き、今年も土壌サンプルを取る。
昨年で大体の土壌構造は把握できたが、詳しい成分比率を知っておくことは大事だ。
農業で育てているのは植物という生命なのである。
健康的に育てて良い収穫物を得るためには、土こそが大事な基礎となるからだ。
自分の勘や固定観念に縛られず、毎年データを取って数字化して推移を確認しておく。
それだけで今後の方針がより見えてくる。
客観的に物事を見ることはどんな業界でも大事なことではないだろうか?
昨今、スマート農業というのが話題となっているが、AIや自動機械化を進めていくことばかりが注目されている。
僕の記憶違いでなければ、
高額な機械を導入しても、費用対効果はどうなのかしっかりと検討する必要はあるだろう。
他にも、一生懸命に身を粉にして働くことも一つの手段であるが、それだけでは選ばれし鉄人しか農業をできないということになる。
人間が竹槍で突撃しても戦闘機を落とせないように、超人以外でも結果を出せるように戦略を早めに立てていく事が、日本の未来のために肝要だろう。
僕はこうして偉そうなことを考えつつ、今シーズン開始に向けて準備を整えていこうと思う。
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