11月第2週 基礎は最も大事
『サンジョヴェーゼ アパッシメント ロマーニャ
2019
チェヴィコ』
以前にも紹介した協同組合チェヴィコによるワインである。
今回はイタリアを代表する品種サンジョヴェーゼ、それをさらに乾燥させるアパッシメントという味わいを濃縮させる技法を用いている。
どんなワインになっているのか開けてみよう。
濃厚な漆黒のインクのように見えるが、透かして見るとグラスの淵はわずかに熟成されているように褐色を帯びている。
香りはどっしりとしたアルコール感とチョコレートのような甘い風味もある。
見かけによらずタンニンは滑らかで渋みは感じにくいが、黒い果実の濃縮された甘い余韻が続く。
これで2千円台前半、懐は真夏でも寒いが外気も寒くなってきたこの時期には程よい味わいと値段である。
『ラム肉のシチュー』
今回のワインに合いそうなラム肉をシチューにしてみようと思う。
シチューは日本以外では普通は茶色い、今回もデミグラスソースと合わせているので当然茶色だ。
レシピは味の素の提供で。
https://foodservice.ajinomoto.co.jp/recipepro/recipe/40089/
スーパーに食材を仕入れに行ったが、クスクスは無かったのでマカロニで代用、ラムロースはあったので良しとしよう。
後は大体レシピ通りに作って実食。
ラム肉は独特の臭みがあるので好き嫌いは分かれると思う。
この臭いを消す方法はいくらでもあるが、それでは面白くない。
市販のデミグラスソースだが、十分に濃厚な味わいであり身体の中から暖まる。
ワインと合わせよう。
今回のワインは濃厚でがっしりとしたボディのワインである。
これがまたラム肉の独特な風味と良く合うのだ。
この癖もこのワインと合いやすいので匂い消しをしないで楽しめる。
普通なら欠点でも組み合わせ次第で美徳になる、これもまたワインの面白さでもある。
そんなわけで2人分のレシピもぺろりと平らげ、血肉に変えて穏やかな夜を過ごす。
そうして厳しい冬に向けてひと時の安らぎとなる。
☆☆☆
「……ついに来たか」
僕はいつもの畑からいつもの風景をいつもと違う驚嘆の気持ちとともにセリフを吐き出した。
眼前にそびえる山々の頂点、そこには帽子を被ったかのように白く染まる姿があった。
白き闇の時代が近づいているようだった。
白き闇に覆われれば今シーズンも本当に終わりとなる。
もっとも、今年は昨年とは違って急ぐ作業は特にないので気は楽だった。
新規就農の補助事業は大きなスタートダッシュができる程の大きな原動力となるが、あの強行スケジュールをルーキーがこなすのは至難の業だろう。
しかし、アレを乗り越えれば大きなレベルアップになることは間違いない。
さて、急ぐ作業はないが、それでもやるべき作業はまだまだ残っている。
サクランボハウスの解体はまだまだ終わらないが徐々に小さくなってきた。
もう少しで屋根だけは終わるだろう。
そして、ブドウの葉っぱも落ち始めてきたので土壌改良剤を撒きたいと思う。
本来は落葉後が良いが、そこまで待っていたら今年は多分白き闇が先にやってくる気がするのでこの週末に終わらせるか。
ブドウは他の果樹に比べて養分を必要としない作物だが、最低限の栄養素がバランス良くあった方が健康に育ってくれる。
今年植えた畑はまだまだ必要栄養素が足りないが、窒素分は十分にある。
その上、まだ酸性が強いのでアルカリ性がそこそこありマグネシウムの多い苦土石灰にしよう。
この畑が一番面積がありやや斜面なので、想定よりも時間がかかってしまって1日と少しで終わった。
その後は収穫したメルローの畑、ここは古木の領域に入っているほど立派に育っているし、土壌分析の結果で十分に栄養豊富だと分かっている。
だが、やや酸性傾き始めているしそれなりに収穫量が多かったので微量栄養素は減っただろうと思われる。
ということで、弱アルカリ性と微量に栄養素を含む貝化石石灰を撒いた。
こちらは平地で正方形という作業しやすい畑なので、想定よりも早く1日もかからずに終わった。
ここまで合わせれば想定通りの作業工程、残りは本日日曜日に今年造成した畑に貝化石石灰、リン酸と有機物豊富なコウモリの糞の化石バットグアノを撒こうと思う。
どの畑も春に土壌分析をしており、その結果で選んだ土壌改良材を使用している。
場所や状況に適した材料を使うことは、どの業界でも当然のことだろうと思う。
一応、どの改良材もオーガニック農法対応だが商業受けが良いこと以外はさほど意味の無いことだ。
大地とともに生きる農業では土作りが全ての基礎なのだ。
忘れられがちだが基礎は最も大事であり、疎かにしてはいけないことだろうと思う。
作業はそれなりに順調に進んでいるが、今年も暮れに近付いてきたのか、請求書が次々とやってきている。
木枯らしが吹いて葉っぱが散っていくように、懐の中身も散っていく。
そんなわけで、人間をダメにする
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