9月第2週 留年X組出っ八先生・再び

『ピノ ピノ フリッツァンテ

 NV

 MGM モンド デル ヴィーノ』


 1991年、イタリア人・イギリス人・ドイツ人の三名による多国籍軍が結集して立ち上げられた比較的若いワイナリーである。

 それぞれ三名の頭文字を冠した名前を持つ。

 瞬く間に規模が拡大し、現在ではイタリア全土でワインを造り、イタリアのワイングループ・トップ20に数えられるまでになった。


 今回のワインはフリッツァンテ、辛口の微発泡ワインで、使われるブドウは赤ワイン用ブドウのピノ・ノワールである。

 今回のワインのように、果汁のみを絞っているので白ワインのように透明な色で造ることも可能だ。


 では、話が長くなる前に飲むとしよう。


 グラスに注ぐとシュワッと泡立つが儚く消えていく。

 しかし、口に含むと柔らかい炭酸の刺激が爽やかで、清々しい。

 口当たりも後味もスッキリとフレッシュ、どこか初々しい若さが心地よい。


 低価格帯でもあるので、気軽に楽しめるところが嬉しい。


『鉄砲汁と蟹雑炊』


 またもや頂き物であるが、どうしようかと考えた。

 カニを丸ごと一杯であるが、小ぶりであるので食べ方が限られてしまう。

 そんなわけで、殻ごと煮込むことにして、北海道では鉄砲汁と呼ばれるカニ汁、鉄砲汁にしよう。


 冷凍されていた毛蟹を自然解凍し、足やハサミを胴体からバラバラにもいでいく。

 残った胴体部分の甲羅をパカッと剥がしたが、カニ味噌が思っていたよりも少ない。

 こればかりは運なので、仕方がないと諦めよう。


 鍋にたっぷりの水と昆布だし、味噌を溶かし入れる。

 ネギ、大根、にんじんも煮込み、カニ味噌も溶かして、手足に本体も全て投入して弱火で煮込む。

 蟹の独特の風味が漂ってくれば完成だ。


 実食。


 小振りなだけあって、やはり可食部は少なくて物足りない。

 だが、出汁の効いた海を感じる風味にどこか懐かしさを覚える。

 これだけで原始の浪漫に浸れる。


 汁物とワイン、というか酒を合わせても胃の中がチャポチャポとするだけなので然程語るものはない。

 前菜代わりに、大根とにんじんは蟹の風味がよく染みており、爽やかな刺激のあるワインとも楽しめた。


 そうして殻を取り除いたカニ汁に米を投入して雑炊にする。

 正直、酒の友というよりもこれで締めであった。

 当然ながらワインは進まなかったが、美味しい食事ではあった。


 なにはともあれ、 食事を楽しむことが出来ただけも良いではないだろうか。


☆☆☆


 暦の上では秋となったが、この週もまだまだやることが盛り沢山だった。

 

 造成している畑の周囲の影になる部分の木々を伐採して整理していく。

 かなりスッキリとして綺麗になってきた。

 酷暑もだいぶ和らぎ、昼間でも作業は順調に捗った。


 そして、ついに待望のトラクターがやってきた。

 予定よりも遅くはなったが、一気に畑らしい見た目に耕された。

 

 それほど広くはないが、壮観に爽快、これでようやく来年植え付け予定の畑の準備も整い出してきた。

 後は、外周部分の通路の整備と杉の巨根をぶっこ抜いて畑の間の通路を整備すれば、今年の造成は終わりとなる。


 想定よりも遅れたが、例のクラウドファンディングの株主の皆様に良い報告ができるだろう。

 

 その前に、耕されたので石がまた大量に表に出てきたので拾い集めていく。

 大変ではあるが、折角耕された部分を踏み固めたらいけないので、運搬台車は入れずに人力で歩いて回収する。


 広くはないので予定よりも早く終わり、緑肥を撒く。

 思っていたよりも腐植土が多そうなので肥料はいらないが、肥沃で水はけは良さそうであるが、微生物活動や団粒構造を形成してくれれば良い。


 そして、タイトルにあった通り、またもや出っ八先生が登場だ。


 以前は新規就農研修生・2年生たちに講義の場で偉そうにありがたくない話を語ったが、今回は僕の畑に団体で視察にやってきた。

 研修は二年間あり、それぞれ1年目と2年目の研修生がマイクロバスでやってきた。

 道の狭い山際にある畑に30名近くもやってきたが、畑自体は十分に広いので余裕で対応できた。


 ここでもまた偉そうに新規で農業を始めるという経験談や開拓中の畑の様子を見せながら色々とよくわからない話をしていった。

 事前に質問事項をもらっていたので、1つ1つ雑に答えていった。


 そして、農業で最も大事なこと、金があれば大概のことは解決できる!


 ということは語りはしなかったが、例のクラウドファンディングの裏話や補助金について等々は興味がありそうに聞いていたと思う、多分。

 あと、このエッセイについてもすでに知られているので、失笑しながら読んでもらっても嬉しく思う。


 そんなわけで、出っ八先生は慣れない人前で講演のようなことをしたわけだ。

 変態ではないが、ボロを出さないように無事に語り終わってバスを見送った。

 当然ながら他にも視察するので、短時間だけの語りだったが喉が限界であった。

 

 その翌日、ブドウの実っている畑での最後の防除を行った。

 日曜日は雨の予報であり収穫も近いので、タイミングとしてはここが最適だろうと思ったわけだ。

 

 農薬というのは、知識がないと声の大きい者に影響されて危険なものだと思うだろうが、モノによって期間の違いはありはするが用法を守れば自然に分解され環境に影響ないように作られている。


 今回のモノはブドウでは収穫前日でも撒いて良いが、そんな時に撒いても金と労力の無駄遣いなので、2週間以上は収穫予定日まで間隔は空けている。

 

 現在の糖度は18度平均、熟j度はまだまだ、生育は異常に早かったが色付いてからの天候が悪かったので、最終的な収穫は昨年と同じぐらいになるかなと思う。

 しかし、こればかりは今後の天気とブドウの状態次第なので確実に決められないのが難しいところだ。

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