5月第4週 ワイン部屋ができたぞえ!

『マルサラ スペリオーレ セッコ

 2018

 フローリオ』


 時は大航海時代、イギリス人貿易商ウッドハウスがシチリア西端の港町マルサラで出会った白ワインにアルコールを添加した酒精強化ワイン、それがマルサラワインの始まりらしい。


 その後、このウッドハウスと手を組み起業したのがフローリオ氏、スペインのシェリー、ポルトガルのポートワインと共に世界に誇る酒精強化ワイン・マルサラの歴史を培ってきたそうだ。


 マルサラワインにも様々な種類があり、今回は熟成年数2年以上4年未満のスペリオーレ、辛口を意味するセッコである。


 では開けてみよう。


 茶色が強めの琥珀色、レーズンやオーク(木樽)の香り、味わいはまたもやレーズンやアーモンドのような香ばしさを感じる。

 

 実に酒精強化ワイン・マルサラらしい特徴が現れている。


『揚げないジューシー油淋鶏』


 今回は先にワインが決まっていたので、脂の濃いめな油淋鶏にしてみた。

 それでも油を少量で済ませたかったので、レシピを検索する。

 

 今回はキッコーマンにしてみよう。

 https://www.kikkoman.co.jp/homecook/search/recipe/00051864/


 レシピ通りに再現したので、調理描写は省略、盛り付け前に鶏肉を切り分ける。

 鶏肉なので中までしっかりと火が通っていることを確認するのだ。

 最後にタレを掛けて、付け合せのベイビーリーフとプチトマトで飾れば完成だ。


 実食。


 うん、レシピ通りに再現できているからか、表面はパリッとして中は見事にジューシーに仕上がっている。

 ネギタレの甘酸っぱさが脂と良く絡み合い、中華らしく食欲を満たしてくれる。

 付け合せのサラダも良いアクセントで胃に優しい。


 そして、ワインと合わせる。


 シェリーやマルサラは中国の紹興酒と似ていると言われている。

 そのため、油淋鶏との相性も良いだろうと思ったわけだ。


 実際に試してみた個人の感想である。


 圧倒的な個性を持つ酒精強化ワインのマルサラ、対する油淋鶏の独特の脂っぽさと我の強いタレの個性である。

 油淋鶏を食せば口内はこの味わい一色に支配される。

 しかし、マルサラを味わえば一気に洗い流される。

 その後、油淋鶏を食せば再び油淋鶏一色に支配される。

 これを交互に繰り返していくわけだ。


 我の強い中華と悪党たちの大英帝国、お互いに共存はせず勢いのある方が上に立つ。

 その時代に勢いのある方が支配者となるわけだ。


 ここに中華史、いや人類史の栄枯盛衰の理を見た気がした。


☆☆☆


 先週は強風で想定外の仕事が増えてしまったが、この週もまた風の強い日が多かった。


 風が強いと農薬の散布ができなくなる。

 その理由も関係のない周囲へと農薬が撒き散ってしまうからだ。

 他所の畑や近隣の山林、民家でもあれば大問題である。 

 そんなわけで、風の比較的弱い早朝に農薬散布は終了だ。

 

 しかし、いつも借りているスピードスプレイヤーは故障、経年劣化で撹拌機のプロペラとタンクの継ぎ目から水漏れを起こしてしまっていた。

 そういうことで急遽小型のスプレイヤーで散布した。


 キャビン式ではないので、レインコートや農薬用マスクなどで完全武装して行ったので汗だくだ。

 さらに、苗木にはバッテリー式の散布機を背負っていったのでもう一踏ん張り。

 15Lと本体、20kg超を背負いながら傾斜の畑を歩いたわけで、ちょっとした修行になった。

 真面目に農作業をすれば、ジム通いなど必要ないのだ。


 完全武装していたが農薬を全身に浴びている。

 装備品一式をキレイに洗浄してから、シャワーを浴びて着替えてスッキリだ。


 これでようやく水分と食事ができる。

 安全のために、体内に何かを入れる前に清めの儀式が必要だと僕は考える。


 さて、先週ブドウ畑の芽かきをしてスッキリとなったわけだが、程良い雨と暑い日が続いたことで一気に新芽も新梢へと呼んでも良いぐらい成長した。

 そうなってくると今度は新しく伸びてきたこの枝をブドウ棚に固定してあげなければならない。


 誘引作業である。


 昨年の残り物であった光分解テープもすぐに無くなり、新商品の紙テープを使った。

 光分解テープは紫外線を浴びて数カ月後にボロボロに細かくなるが、所詮はマイクロプラスチックになるだけだ。

 僕はそういう物体は好きではないので、割高だが紙を使ってみる。


 一発目。


「ぐぬ!」


 がちゃんとやってみたが、上手くできない。

 どうやらプラスチック製よりも頑丈な素材のようで、切り取り刃を新品に代えないといけないようだ。


 先端の丸まっていた古い刃と新品の尖りまくった刃と交換し、再スタート。

 

 これでサクサクと進むようになった。

 後は、一応防水紙であるので収穫まで保ってくれることを願う。


 それにしても今年は異常なまでに生育が早い。

 昨年よりも1週間以上早く開始しているが、強風に煽られて新梢同士が絡まり始めている。

 この週で終わらせて吉だったと思う。


 周囲の田んぼでは植え付けがほぼ終わり、水が張られているから湿度が一気に上がったことが体感できる程である。

 この誘引作業をすることで、光や風の通りも良くなるので病気の元になる湿気やカビ菌などが溜まりにくくなるのだ。


 そして話は戻り、月曜日は雨で畑作業は休みにした。

 この間にワイン部屋、商品となるワインの保管室をDIYで造ったのだ。


 やることはそれほど難しい工事をしたわけではない。


 密閉性を高めるために廊下の一部に壁を作り、破れていた障子を貼り替えただけだ。

 実は先週末から畑仕事の合間に行っていて、月曜日に最終仕上げをしただけである。

 

 最後に、夏場の高温対策で簡易型のエアコンを設置した。


「ワイン部屋ができたぞえ!」


 と、どこぞの天竜人のように叫びそうになった。


 労働者という奴隷のいない農奴であるので、自分でできることは何でもやる。

 DIYワイナリーは着実に次の段階へと進んでいく。

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