夏
6月第2週 留年X組出っ八先生
『トリブン
2018
アリラ』
黒海に面するルーマニア南東部ドロブジャ、紀元前からブドウ栽培が行われていた歴史ある地域である。
フランス・ボルドーで名を馳せた醸造家マーク・ドゥウォーキンが、その地に高いポテンシャルを感じ、ボルドーの有名ワインに比肩する品質のワインを造るために設立したワイナリーらしい。
今回の1本は、ルーマニア原産の品種フェテアスカ・ネアグラを主体とし、ボルドー品種メルロー、カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしている。
では、開けてみよう。
ややオレンジがかったガーネット、香りに……とうもろこし?
この匂いはネズミ臭と呼ばれるオフフレーバー、日本ではマメ臭と呼ばれる事が多いワインの欠陥臭である。
しかし、それは品評会での採点基準であって、ワインという作品全体では大らかに受け止めても良いことだろう。
もっとも、過ぎたればネズミの尿のようなただの悪臭と化すのだが。
さて、他にはミックスベリーやスパイスな感じ、複雑な香りである。
味わいにはドライフルーツのような甘みがあり、渋みは控えめで滑らかさがあり飲み口は優しめか。
『仔羊の香草焼き』
言わずと知れたフレンチの定番料理、とレシピに書いてあったが本当かどうかは知らない。
とりあえず羊が食べたくなったのでいつも通りレシピを検索してみた。
今回はキリンの公開しているレシピが簡単そうなので試してみよう。
https://recipe.kirin.co.jp/a03625.html
レシピでの骨付き肉は地元スーパーで手に入らなかったが、もも肉があったので同じようにやってみた。
肉に塩コショウで下味を付け、マスタードも塗る。
で、パン粉に細かく刻んだパセリとローズマリーの定番香草、みじん切りニンニクとオリーブオイルを混ぜ合わせ、香草パン粉を作る。
味が染み込んだだろうと思われるラム肉に香草パン粉をまぶし、オーブンと偽っている我が家の魚焼きグリルに投入して焼き上げれば完成だ。
後はイタリアンパセリとサラダで彩りを加えてあげ、実食としよう。
ちょっと焼きが甘かったからか、パン粉のサクサク感がなくしっとりとしている。
しかし、香草パン粉の風味とラム肉の独特な味わいがうまく食事を盛り立ててくれる。
定番というのは、どことなく安心感があるものだ。
そして、ワインと合わせよう。
ルーマニアのことは行ったことがないのでよく分からないが、フランス・ボルドー系統の赤ワインである。
フランスの定番料理である仔羊の香草焼きとは、当然のごとく相性が良かった。
ラム独特の風味と香草の香り、この赤ワインの元々持つ複雑な味わいにさらに深みが増すようだ。
赤ワインにハーブのような青さを感じることに賛否はあるが、これもまた食の嗜好の違いという個性だろう。
そんなわけで、欠陥だろうが定番の安心感が同時に存在する。
ワインと食事、そこでは優等生も問題児も様々な個性を持つ一つの教室のような狭い世界をまとめて味わい楽しむ度量が肝要だろうと思う。
☆☆☆
ブドウの開花期であるが、先週から月曜日にかけて雨ばかりが多く降った。
それに伴い、気温も一気に下がったため開花は始まったが満開になるまでに時間がかかっていた。
開花期にブドウの房が雨に濡れてしまうと病気の感染リスクが高まるので勘弁してほしいところだが、自然の営みには逆らえない。
さて、それでもやることだけはいくらでもあるので雨の合間を縫って畑に出た。
今年からレギュラー入りした乗用草刈機、通称モアちゃんであるが広い面積を簡単にキレイにさっぱりしてくれるので大助かりだ。
これからまた開拓作業を始めるわけだが、まだ着工許可が出ていないので開けている部分だけであるがこちらも草刈りをした。
前もって大きな石や丸太などの障害物になる残骸を片付ければ、壊れる心配もしなくて刈払機でやるよりもキレイで体も楽なのであった。
その後の雨上がりである。
「……やっちまったか」
苗木を植えた畑であるが、植え付け穴が地盤沈下してしまっていた。
苗木を植えた時にできる限り掘り返した穴を固めていたのだが、大雨の大水量で土がさらに締まり、その分地面が沈み込んでしまっていたのだ。
これは明らかな恥ずべき凡ミスであるが、このまま放置しておくわけにはいかない。
ブドウの木というのは、根っこの部分と地上部分は違う二種類の品種が接ぎ木されている。
それというのも、地中にはフィロキセラという根っこを食べて木を枯らしてしまう厄介な虫がいるため、耐性のある根っこ部分が無いといけないのだ。
地盤沈下して地上部分も地中に埋まってしまうと、地上部分の品種からも根っこが出てきてしまい、ヤツに食われて枯らされてしまう危険がある。
それ故に、沈み込んだ分の周辺を掘り返して同じ高さにしたわけだが、これをスコップで人力でやった。
こいつが相当な労力で腰を壊すかと思った。
だが、失敗に気付いた時にすぐに軌道修正する。
この即座の対応力が、どの業界でも生存するために大事なことではないだろうか。
そして、タイトルにあった先生(笑)であるが、就農研修生たちの講義に先輩就農者として話をしにいった。
就農するということの経験談を語ってくれと、県の就農支援センターから要請があって先生(笑)のようなことをしてきたわけだ。
もちろん、ギャラは出る。
僕は二年目代表、もう一人は四年目代表であったが、実は冬の農業経営研修での知り合いでもあった。
事前に突貫工事のような資料を作成し、パワーポイントを使って語った。
普段一人で畑にいることが多いので、すぐに喉が枯れて咳き込む場面も多かったが(笑)
何を偉そうなことを語ったのかは詳しくは書かないが、要点のよく分からないことを語ったと思う。
人との繋がりが大事だ、という綺麗事を強調して語ったことだけは書いておこう。
一人で作業をしていても、実は様々なところで誰かに助けられていることは実感している。
例のクラウドファンディングの株主様もそうだが、この自分語りを読んでくれている読者の皆様がいるだけでも生きる力になっていたりする。
後は、リアル世界でのボッチ生活をどうにかして解消することだけか……。
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