6月第4週 グングン伸びる
『メルロ・ノース・フォーク・オブ・ロング・アイランド
2019
ベデル・セラーズ』
アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランド、アメリカ最大の都市ニューヨーク市があることから富裕層の多い大都会を想像されるだろう。
だが、その名の通り東西に長い島であることから様々な地区があり、ワイン生産地として有名な農業地帯もあったりする。
今回のワインは「ニューヨークのボルドー」という字面のおかしい異名を持つロングアイランド産のメルローを開けてみよう。
生産者は趣味から始めたワイン造りからワイナリー設立というフワッとした動機で創業したが、コンクールでゴールドメダルを獲得するまでになったという実力者でもある。
グラスに注いでみると同じアメリカのナパバレーのダークさとは違ってやや透明感はある。
香りは赤をイメージするベリー系、ややピーマンのような青さもある。
味わいも滑らかなタンニンでアルコールのキツさがなく、酸味が思ったよりもあるからかボディが重すぎることもない。
西側のパワフルさに比べると繊細であるが、飲み疲れはしないので付き合いやすいタイプと言える。
『ステーキサンド』
わりと忙しいので簡単に作れるものにしようとステーキを焼いた。
豚であるが。
それだけでは面白くないので、サンドイッチ風にしてみよう。
まずは肉を塩コショウとハーブで焼くか。
その間にパンをトーストしバターを塗る。
それから千切りキャベツとスライストマト、アボカド、チーズで気持ちばかりの野菜も入れよう。
サンドイッチなので、具材は基本的に個人の自由だ。
食べたいものを食べる、この自由な選択が贅沢に感じる多忙な日々である。
さて、ステーキが焼ければみりんと醤油でもうちょっと味付けしてみよう。
そして、サンドできる大きさに切り分けてマヨネーズとマスタードをトッピングすれば完成だ。
思ったよりも時間がかかったが、大きな口でかぶりつく。
一口の中に肉も野菜も乳製品もまとめて咀嚼されていく。
アメリカらしい混沌としたサンドイッチだが、この芳醇な味わいが良さであろう。
牛肉ステーキとは違って、トンテキはわりと味がタンパクなので自己主張しすぎないおかげでうまく調和できているのかもしれない。
そして、ワインと合せよう。
わりと繊細なワインであったので、トンテキで正解だったかもしれない。
主張が強すぎないおかげで、飲み食いは進んで飲み疲れ食べ疲れはしないで身体が受け付けてくれる。
血肉に蓄えられ明日への力になりそうだ。
☆☆☆
先週から引き続きこの週も異常な暑さであるが、曇ればわりと涼しいので何とかやっていけた。
夕立が先週末にあっただけで雨らしい雨が降らないので乾燥している。
だが、苗木は弱る前に水やりもできたし、堆肥でマルチをしているので保水性もあり無事にグングン成長している。
グングン伸びるのは良いことだが、世話に追われてしまう。
虫どもも元気であるので、毎日見回りをして倒し続けている。
RPGとは違って魔物を倒してもレベルは上がらないし金も落とさないので、現実は厳しいものだ。
苗木がグングン伸びているが、当然ながら成木になっているブドウの木も同時に生育が異常に早い。
昨年のデータを見ると今年は1週間以上も早い。
昨年も異常な高温だったがそれ以上の今年である、夏本番が恐ろしい。
グングン伸びているブドウであるが、どうやら無事に結実して実も徐々に大きくなりだしてきた。
今年こそは自分でもワインを造る予定なので、量よりも質を目指し濃縮させたブドウにしようと少し数を減らしてみた。
しかし、そうは想定通りにはいかないようだ。
伸びようとする力を集約させて、その力を実に蓄えさせたかったが、無理に抑えた力は大概暴走するものである。
良くあるファンタジー設定で、過ぎたる力で古代文明が崩壊するようなものだ。
……ちょっと違うか。
数を減らした枝からは脇芽がグングン伸びて余った力が暴れている。
この脇芽がグングン伸びればブドウ畑は暗くなり風通しも良くないので、病気の温床となってしまう。
さらに、木が大きくなれば実に栄養が行き渡らなくなる。
で、その脇芽を切り詰めるという余計な仕事が増えてしまったわけだ。
ブドウもそうだが他の作物についても、その場所やそれまでの栽培方法によって、それぞれの適正値というものがあるので、増やしすぎても減らしすぎても良いことはないという証明になったようだ。
この自業自得で増やしてしまった作業も終わりが見えかけていたところで、久々の雨だ。
雨ということは久々に、本日日曜日は骨休めができる。
これまで休まずに外に出ていたので、異常な生育の早さと余計な作業があったはいえ、作業自体は遅れることはなくほぼ適期に追いついている。
何事も地道な日々の積み重ねが大事なのだと悟らされる。
さて、グングン伸びるブドウたちに奉仕する日々であるが、これも好きでやっている最高の遊びである。
身体は疲れようとも気持ちは楽しい。
子どもの成長を見守る親心というのは、こういうものなのだろうかと思う。
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