12月第3週 今年の大一番

『ランブルスコ ロッソ ヴィーニャ デル クリスト

 2022

 カビッキオーリ』


 イタリア国民ではないのでよく知らないが、イタリア国内で最高の人気を誇るランブルスコ生産者らしい。

 設立は約100年前、美味しくてグルメなエミリア ロマーニャ州の自然の恵みを活かした伝統的な味わいを一人でも多くの人に知ってほしいと願って設立したワイナリーである。


 ランブルスコはこの地方の微発泡性のスパークリングワインで、大部分は赤と世界的に見ても珍しい。

 ラベルの商品名で書かれている通り、今回はクリスト村のブドウ畑から採れた辛口の赤ランブルスコである。


 では早速開けてみよう。


 スパークリングワインは良く冷やしてから開けると弾け飛びにくいし、部屋自体が冷蔵庫並みの寒さになってきたので軽くコルクを手で捻り開けることができる。

 グラスに注ぐと思っていたよりも薄赤色、まるで濃い目のロゼのようだ。

 微発泡らしく軽く泡立つ程度だがこれは想定内、味わいは想定よりも酸味が強い辛口、リンゴやラズベリーのような甘酸っぱさを感じる。


 これはこれで面白いかな。


『韓国風鶏鍋(タットリタン)』


 寒いので辛い物を食べて身体を内側から暖めようと思う。

 だが、辛すぎると翌日の出口が辛いので辛さ控えめにしたいと思う。

 甘辛と鍋でレシピ検索すると今回の料理が出てきた。

 韓国料理には詳しくないが、とりあえず試してみるか。


 わりと調味料を必要としないハウス食品のレシピを採用しよう。

https://housefoods.jp/recipe/rcp_00023684.html


 レシピ通りに調理し実食。


 ホクホクの根菜に甘辛い汁が絡み、ほど良い刺激で身体も暖まる。

 そうなれば骨付き鶏肉はどうだろうか?

 中まで染み込むほどではないが、淡白な白身肉に汁がうまく味付けをしてくれている。


 そして、ワインと合わせよう。


 思っていたよりも酸味の強いランブルスコだったので不安はあったが、程よい甘辛さのためお互いに反発し合うことなく合ってくれた。

 甘辛さが尖った酸味を和らげてくれつつ、穏やかな泡が程よい刺激を食事に与えてくれている。

 ギリギリのところで上手くバランスがとれたようだ。


 とりあえず炭酸であれば大概の食事には合わせやすい。

 それゆえに「とりあえず生」が無難、どんな料理もビールが程々に合うわけだ。


 しかしながら、僕は無難というのはつまらないと思うひねくれ者だ。

 そんなわけで無難に合うビールではなく、ワインで挑戦してみたのであった。


☆☆☆


 入院していた相棒(軽トラ)が週明け早々無事に退院してきた。

 覚悟していたよりも費用が安く済んだので、無事に年越しは出来そうだと一安心だ。


 そんなわけで、幼木の冬越しの準備を引き続きやっていく。

 

 藁をブドウの木に巻いてあげると防寒となり、山梨や長野などの雪が少なく寒い地域では主流のやり方だ。

 しかし、僕の住む地方では雪が深いのでネズミやウサギに齧られやすくなるので、金網でさらに強化してみようと思う。


 そんなわけで耐寒性の低い101-14という台木部分だけは防寒対策をした。

 基本的に通常のワイン用ブドウは、マイナス20度ぐらいの気温までは耐えることができるので、雪に埋まれば99%生き延びることができる。

 他の台木や品種は小動物対策だけをすれば大丈夫だ。


 その翌日。


「ウガァアアアアアア!!!」


 不動明王のように怒髪天を衝く咆哮が虚空に木霊する。

 わずか1日で金網は破壊され、藁がむしり取られていた。


 魔獣・オークの仕業である。


 ヤツラの通り道は分かっているのだが、ちょうど罠を仕掛けることができないところを通りやがるのだ。

 これではヤツラの討伐が難しいので、来年は電気柵などで防衛強化しようと思っている矢先であった。


 だが、このまま手を込まねいてはいられないので、急遽藁を全て麻製のムシロに交換した。

 この台木の数は少ないのでマシだが、これだけでもスクワット200回ぐらいか。

 これで大丈夫かどうかは様子見だ。


 ……腰にくるぜい。


 そして、この週の、いや今年の大一番!


 ついに今年のワインの瓶詰だ。


 通常のワインではタンクか樽にまだ熟成させておくのが普通だが、早く飲めるように造った薄赤スパークリングワインなので、早くも仕上げに入れる。

 もっとも、瓶に詰めてから、さらに炭酸を作る『瓶内二次発酵』という製法を行うので本当の完成は来春になるだろうと思われる。


 その前に、樽やステンレスタンクから別の大きいサイズのタンクに全て移してブレンドさせる。

 わずか2か月程の熟成期間だったが、入れた容器の材質で微妙に味が違うので想定通り面白くなった。


 ブレンドの妙、これがワイン造りの楽しさでもあり、造り手の個性を活かせると僕は考える。


 ここで酵母が糖分を発酵させて泡を作り出させるために、微発泡程度になるように添加する砂糖と酵母の量を調整して最終準備は完了だ。

 ここで入れた砂糖はアルコールと炭酸に変わるので、糖分はなくなり前半のランブルスコよりも酸味控えめな辛口になる予定である。


 そして土曜日、ひたすら瓶詰めをしていく。


 今回のワインを造るためにいつもお世話になっているワイナリーの皆様には感謝、瓶詰も手伝ってもらったので本当に助けられた。

 おかげさまで、どうにか無事に900本以上が瓶に詰めることができた。

 

 これで今年の大一番は終わった。


 あとは、美味く瓶の中で炭酸ができるように、来る12月25日にはサバトを行わず厳かにジーザスクライストに祈りたいと思う、多分。

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