第9話 <家> なんてできる家なんだ(自画自賛)

『わかった。ではまず魔道具について考えよう』

「うん」

 振出しに戻る……だが、少しすっきりした顔のフィンに私は話す。

 

『お前の祖父が魔道具職人だったか……」

「そうだよ」

『そのお祖父さんに手伝ってもらうとか、アドバイスしてもらうことはできるか?』

 私は魔道具は詳しくない。

 ある程度設計してもらえれば作れると思うが……。


「それは大丈夫だと思う。お祖父さまは領地にいるけど、王都からそんなに遠くないし、魔道具職人だから魔道具を使ってきてくれると思う」

 ん?

 

『お祖父さんが魔道具を使うのはいいんだな?』

「うん。お祖父さまが魔道具職人なのはみんな知ってるから」

 そうなのか。

 区分けが難しい……。

 

『ちなみにどんな魔道具を作ってるんだ?』

「それこそ送風機とか、コンロとかだね」

『なるほど、家庭用、居住用だから魔導騎士団が反対しないのか』

「そう」

 その方向から攻めて、コンロで火炎爆発とかやったら怒られるかな?


『治療の魔道具もその理論でありにならないか?』

「魔導騎士団は治療術師も抱えてるんだ」

『なるほど。治療院やもしかしたら神殿もか?』

「神殿はないと思う。神殿は国とは別だし、魔道具を使ってると思う。ただ、この国ではあまり活用されない」

 神殿については私はよくわからない。

 昔は私が星の加護を持ってることを嗅ぎつけて何か言ってきたことがあるけど喋れないふりをしてやり過ごした。

 200年くらい。



『では、設計をお祖父さんに手伝ってもらうとして、魔力病について説明するぞ?』

「うん!」

 顔が明るくなったな。

 やはり考えるべきではないことは考えないことが重要だ。


『まず魔力病についての説明だ。そもそも正常な生命体の場合、魔力が全身を循環していることは知っているな?』

「うん。家さんはどうなってるの?」

『私のことはいい』

 なぜ急に私の話になるんだ?

 私は生命なのだ。巡回しているに決まっているだろう。

 ……いや、生命なのか?


 長い年月の中で何回も思い出そうとしたけど、やっぱり召喚前のことはよく思い出せない。

 美しい景色の湖畔のほとりに建っていたということくらいだ。

 そもそも私は家なのにどうやって景色を見ていた?


「家さん?」

『あぁ、悪い。続けるぞ。体のどこかに問題が生じてこの循環を止めてしまうのが魔力病の発端だ』

「すみません、口をはさんでしまいますが、体のどこかなのですか?魔力的な問題で発生するわけではないのでしょうか?」

『あぁ、違う。口ははさんでくれていいぞ?なぁフィン』

「もちろんだよ。ローザも気になったことがあったら教えてほしい」

「わかりました」

 こういうところは王……かどうかは置いておいて、施政者向きな気はする。

 アホな高位貴族だったら下位のものに口を挟まれるのを嫌う場合が多い。

 

『昔は魔力の問題だと考えられていた。だから様々な魔法が試された。けど、ダメだった。魔力の問題だと思われたのは、この病気が発症すると回復魔法が効かなくなるからだな』

 フィンとローザは黙って聞いている。

 うずうず……。


『だが、解明されて見ればなんてことはない。不調を生じた体の部位で魔力がうまく循環できなくなり溜まってしまう。その溜まった魔力によって不調が増強されてしまい、その部分の機能が死んでしまう。また、魔力が溜まったことによって、回復魔法を弾くようになる。魔力病の魔力溜まりは密度が濃いから回復魔法が回復魔法のまま患部に届かないためと言われている。これによって、患者は死に向かっていくんだ』

「そうだったのか……」

 ダメだ、なにも思いつかない。

 嘘だよ~んとか言える雰囲気じゃない。


『あとはこれらの機能を備えた魔道具を作ればいいんだと思うが』

「わかった。ありがとう家さん。調べてみるよ。お祖父さまにも聞いてみる」

 それが良いと思う。


 明るくなったフィンに昼食を出してやると美味しそうに食べていった。

 ローザは驚愕していたが……早く慣れろ。


 とりあえずフィンたちの様子を探っている感じだった怪しい男たちを全員眠らせる。なんてできる家なんだ。


 私の手にあるときにフィンの邪魔はさせないよ。

 少し王城にも探りを入れておくか……。




 私は思念を王城に飛ばす。

 分割というスキルのLv2で覚えるこの特技はとても便利でよく使っている。なぜ便利かって?私が自由に歩き回りづらいからだが?

 この世界のステータスに表示されるスキルは火魔法Lv?とか、支援魔法Lv?とかだ。このスキルはその中に魔法や特技を複数持っていて、例えば火魔法であればLv1でファイヤーボール、Lv3でバーン、Lv5でフレアを覚える。

 分割の場合はLv1で感知、Lv2で思念、Lv4で分離だ。それ以降は知らない。レアスキルってやつだと思うんだけど他に持ってるやつを見たことがないし、書籍でも読んだことがない。

 私がどうやって書籍を読むのかは内緒だ。



 しかし、有能すぎて自分自身が恐ろしいな、私は。

 王城の中で怪しそうな雰囲気を漂わせている部屋に入り込むと、怪しい会合が開かれていた。

 怪しさ満載でめっちゃ怪しい。

 そう怪しい。

 フィンに表現や語彙が少ないと文句言いづらくなったな……。

 

 気を取り直して。

 飛ばしてるのが思念波だけなので聞くしかできないが、何か嫌な話をしていないか聞き耳を立てる。


「計画はどうなっているの?」

 けばけばしい女が発する声音はとても気味が悪い。


「既に開始している」

 相対するのは女に似た男……。兄妹か何かかな?

 

「何度か襲撃に失敗しているようね?」

 女は明らかに苛立っていた。


「当然だ。いきなり誅殺してどうする。なんどか入り込み、入り込んだこと自体の珍しさを消すのだ」

 男が言ってることが苦し紛れにしか聞こえないが……。


「わかっているのでしょうね?秋までに……」

「もちろんだとも。冬には我らのものだ」

 女の苛立った声を遮って自信満々に男が語る。


「あとはミカエルがいつまで頑張るかね……」

「魔力病を患いながら10年も生きながらえるとは。さすがと言うしかないな」

 あの病気に10年か。それは凄いな。

 普通魔力の停滞で病気が発症すれば2,3年で亡くなる。

 よほど強い生命力を持っているか。

 もしくは何らかの方法で命だけはつないでいるか……。


「根回しはしておけよ?」

「もちろんよ。国の掟では王か長子。それが駄目な場合も年齢順なのだから、あの坊やで決まりよ」

 こいつら、フィンに何をさせるつもりだ?


 フィンに伝えるか……。

 いや、あいつはなにがあっても従うだろうな。

 根回しということは正当な命令として降ってくるんだろう。

 だとしたらそれも支援できるようにしておくか。

 やることは魔道具を作ること、あいつの身内を守ること、ミカエルという王子が生きながらえることか。

 

 はぁ、面倒だな。

 でもフィンとしゃべるのは面白いし、あいつには生きてもらいたい。

 国外脱出するなら一緒に行こうかなと思うくらいには。


 そっか、最悪それがあるんだから気楽にやればいいんだな。

 いかんいかん。

 私が状況に飲まれてどうする。

 気楽にいこう。


 魔道具の製作部屋を準備しておくか。

 確か収納袋にあの魔道具職人が入れたものが入ってたはずだ。



△△△△家のつぶやき△△△△

ここまでお読みいただきありがとう!

万能すぎる私を賞賛してくれるそこのキミ!

1個だけでいいから★評価を!

頼んだぞ!!!

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