【番外編その3完結】取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話

蒼井星空

第1話 私(=魔法のお家)の内見会

 はじめまして。

 私は家だ。


 待って!意味分からんとか言わないで!

 

 理由は割愛するが、私は話せる。

 昔はたくさん仲間が作られたが今では1人ぼっち。

 不気味な家と呼ばれている。失礼な。


 そんな私だが家なので誰かに住んでもらわないといけない。

 そうしないと解体すると商人が言ってた。

 私の中で……あのマヌケめ。


 

 なんと今日、この私の内見があるのだ。

 洗の……じゃなかった、気に入ってもらわないと。


 

 

 やってきた奴はこの私に相応しい覇気、魔力、権力、財力……が全く感じられないんだけど、大丈夫か?

 お金払える?


 それでも10年ぶりの内見。

 前は玄関で洗脳魔法をかけたら防がれ即帰宅された。

 商人は怒って壁や床を蹴った。効かないが。


「凄いお家だね」

「それはもう。この家はとても頑丈です。ほら、こんなことをしても」


 壁を蹴る商人。覚えてろよ?


「びくともしないね」

「なんと魔法でも大丈夫なのですよ」


 火を放つ商人。恨みでもあるのか?


「焦げ跡すらないね」

「なにせ千年もこの姿のままですから」


 そんな前だっけ?

 前いたところが寒くなったから移ったけど、そんなに経つのか。


 

「見つけたぞ」

「どちら様でしょうか?」


 内見を続けていると、おっさんが入ってきた。


「貴様は!?」

「やはりここにいたな!護衛もつけずに1人歩きとはな!」


 内見者に斬りかかるおっさん。

 汚い絵だ。


「くっ」

「自分の愚かさを悔いろ!」


『ストップ』


「!?」


 おっさんが停止し、内見者が驚いている。

 商人に説明してもら……。


 ダメだ、商人も止まってる。

 チャ~ンス。


『無事か?』

「誰?」

『私は家だ』

「家?まさか……」

『時間がない。せっかくの内見なのだ』

「……ありがとうございます。ご迷惑を……」

『それはどうでもいいから私を買え』

「え?……はい」

『はいと言ったな?』

「はい」

『私は高いが……いいのか?』

「はい」

『世界の半分をくれてやろう』

「いいえ」

 

 やった!!





『ちなみにいくらだった?』

「(ひそひそ)」

『クソ商人め!』

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