番外編その2 第4話 <家> 家型魔道具の快進撃
コンテスト当日。
出場者は300名にも上り、トーナメントが組まれていた。
このコンテストのトーナメントは王城に併設されている闘技場で開催されていた。
この闘技場には観客席も備わっていて、開幕前から観客が入っている。
優勝するためには8回か9回勝たなければならない。
エイレンは魔道具を魔法師団に卸している実績があるためか、1回戦を免除されていた。
エイレンの初戦はいかついおっさんだった。
1回戦の様子をエイレンは見ていたが、そのおっさんはこん棒を振り回しているだけだった。
一応、自作した魔道具を持ってはいるが守備用ということだった。
そうして始まるエイレンの初戦。
こん棒を持ったおっさんvs巨大な家型魔道具だ。
「食らえ!!!!」
開始と同時におっさんはダッシュして家型魔道具にこん棒を振り下ろした。
「くそっ、固い!」
が、なんのダメージもなかった……。
対するエイレンは落ち着いている。
「普通の武器で家を崩せたらたいしたものだよね。すまないが、それではこの家型魔道具には勝てないよ。行け!ウィンドストライクだ!」
そして家型魔道具が放った風の魔法によって場外に吹き飛ばされあえなく試合終了……エイレンの勝利だった。
そのまま3回戦、4回戦は相手を瞬殺し、続く5回戦。はじめて強敵が現れた。
それはとても俊敏な騎士だった。
目を引いたのはその速度。あきらかに鍛えられた体躯に、風系の魔道具でさらに速度アップを図ったようだ。
「多彩な魔法を使える魔道具というのは素晴らしいが、当たらなければなんてことはないのだ!」
家型魔道具が繰り出す魔法がすべて避けられてしまう。
「くそっ、すばしっこい」
試合は硬直状態に陥った。
「思いっきり撃ちまくるしかないよね!!!」
「フハハハハ、無駄だ!」
かなり多くの魔法を展開する家型魔道具と、全て避ける騎士。
「くそぅ。どうにかして当てないと」
「さすがの連続攻撃だ。近づけない……」
しかし騎士もエイレンを倒すどころか、家型魔道具に近づけない。
が、ここでエイレンが動いた。
「よし、あまり魔石の無駄遣いをするわけにはいかないし、少し工夫しよう」
風の魔法で騎士の進行方向を狭め、そこに氷の魔法を放って動きを止める。
「なんだと!?」
「ごめんね、これでお終いだ。行け!アースストライクだ!」
そこに地の魔法を撃ち込んでジ・エンド。
ちょっと卑怯じゃないかと思わんでもないが、観客は拍手喝采だ。
どうやらあの騎士は観客に嫌われているようだ。
確認したらアイドルのような扱いを受けていた女騎士を容赦なく叩き潰したらしい。
自業自得ではあるな……。
そうして6回戦。これは準々決勝だ。割とあっさりここまで来てしまった。
出てきたのは……大きな岩だった。
あれはなんだ?
「家型魔道具とは恐れ入った。しかし、この俺の岩型魔道具も負けてないぞ!」
岩の方から何か声がするが、その姿は見えない。
どうやら岩の中に入っているようだ。
声がするということは通気口くらいはあるのだろうか?
開始の合図とともに風や地や炎の魔法を浴びせる家型魔道具。
しかしビクともしない。
「岩の耐久力を見せてやろう!魔力枯渇までに俺を倒せるか!?」
やたらと威勢のいい声をあげているが一歩も動かない岩……。
試しにエイレンが攻撃をやめてみたが、岩は動かない。
「どうした?なすすべがなくなったのか?フハハハハ!!どうだこの岩型魔道具は!天才エイレンと言えど、攻略できんだろう!」
なんの動きもないのにひたすら威勢のいい敵。
5回戦では普通に戦っていた気がするんだが……。
「よし、こうなったら試していくしかないな。まずはウォーターストライク!」
「むぅ、水か、うわっ……ふん、この程度、俺には効かん!」
あっさりと威勢がなくなり少し焦っている敵。
「通気口みたいなのがあるとすると……うん、とりあえずやってみよう。まずは氷だね。アイスストライク!」
「どこを狙っているのだ!フハハハハハハ」
笑う岩……の中の人を無視してエイレンは家型魔道具を使って岩の周りに氷魔法を撃ち込んでいく。
どうやら氷で岩を囲んだようだ。そして……。
「あとは水だな。水量が必要だからウォーター!ウォーター!ウォーター!!!」
水魔法で囲いの中に水を入れ続ける家型魔道具。
「なに!?あっ、くそ~。まっ、待って!ストップ!スト~~っプ!!!」
「ウォーター!ウォーター!ウォーター!!!」
ものすごく焦ってる岩の中の人を無視して水を入れ続ける家型魔道具。
「ぐぼっ、ごぼごぼ、ぶぉ、……」
「あっ……」
そして声がしなくなった。大丈夫だろうか。溺れたような声が出ていたが。
エイレンが審判の方を向くと審判は試合中断を宣言した。
審判たちが岩を確認するようだ……いや、試合終了らしい。
すぐに水を引かせられないかと相談されて氷を炎で溶かした。
相手は中で溺れて気絶しており、溺死寸前だったようだ。危なかったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます