番外編その2 第3話 <家> 悪だくみ
そして2日後、再び森を訪れる私。
え?頻繁に来すぎじゃないかって?
今回は前とは理由が違うぞ?
今日はエイレンが作った家型魔道具の実験に付き添ってるんだ。
私にはイヴェットも乗っている。
ちゃんと室内は風魔法と地魔法と空間魔法によって、私がどんなに動いても快適な空間になるようにしてあるから、イヴェットは安全だ。心配するなよ?
そして私の目の前では家型魔道具がアースドラゴンと戦っている。
家型魔道具にはエイレンが乗り込んでいて、窓から顔を出して魔道具を使っている。
ギャオォォオオオ!!
吠えるアースドラゴン。
ドラゴンと名はついているが実際は大トカゲだ。だが体長は大人の3倍くらいあるし、力は強いし、火も放ってくる。
普通に出会ったらなかなかの強敵だ。
だが、私をコピーした家型魔道具の敵ではない。
防御魔法でアースドラゴンの火を防ぎ、水魔法で動きを止める。
流れるような連続魔法。なかなかやるな。
そして、動きを止めたアースドラゴンに向かって強力な地魔法を放ち、押しつぶした……。
やるじゃないか。
「凄いわエイレン!」
それを見たイヴェットも興奮している……いや、あれは安心しているのか。
戦闘能力皆無のエイレンがコンテストに出て魔道具で戦うというのは、それは心配だろう。相変わらず優しい奥さんだな。
「うん、ばっちりだね!家さんを模倣しただけのことはある」
『お前が頑張ったからだな。流れるような連続魔法攻撃だったし、防御もばっちりだな』
素直にエイレンを褒めた。エイレンの自己顕示のためだったらあんまり協力する気はしないが、今回はイヴェットのためだ。
それに、エイレンが頑張っていたのも知っている。魔法陣を書いていくときにも流れるような攻撃を実現するために色々と工夫していた。
しっかりコンテストで勝ってもらわなければならない。
『頑張れよ、エイレン。イヴェットのためにな』
「あぁ、ありがとう家さん!」
『念のため、ひとつ魔法をかけておくぞ。致命傷を負うような攻撃を一度だけ無効化する魔法だ』
「えぇ、そんな高度な魔法使えるの???」
当たり前だ。お前は私を何だと思っているのだ?
2級神すら匙を投げた高性能な魔法の家さんだぞ?
ついでに細工して、もしそんな攻撃を受けたら感知できるようにしておこう。
さすが私……と言いたいところだが、実はこの魔法は魔道具によるものだ。
魔道具は魔道具でも神の魔道具だ。
召喚されて降ろされた場所が何の変哲もない場所だったことが不思議で……地中深く掘ってみたら埋まってたんだ。
時を操る不思議な時計が。
これで家型魔道具に仕込んだ魔法とセットで使えば完璧だ……。
なんだと?これは悪だくみじゃなくて保険だ!負けるわけにはいかないのだから。
* * * * * *
一方その頃、王都では。
「フフフフ、見ていろよエイレン!これで貴様も終わりだ!!」
王都に建てられた魔道具の研究所。
そこの首席研究員であるスカーンが完成した魔道具を持って何やら呟いていた。
その姿を見ながらこっそりと周囲を通る研究員たち。
スカーンはそのねちっこい性格から研究員たちに嫌われていた……。
「スカーン殿。なにやら凄い魔道具を作ったようだな」
通りがかった魔道具研究所の所長が声をかける。
「所長!見ていてください。次のコンテスト、必ず私が優勝して見せますので」
スカーンは自信満々だ。
「ふふふ、コンテストには私も参加する。決勝で会おうじゃないか」
所長も自信満々だった。
2人で笑い合う姿を見て、研究員たちはなおさら視線を逸らして周囲を通り抜けていった。
* * * * * *
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