番外編その2 第6話 <家> 格闘技・ウィンドウクラッチ!

「見たか?凄まじいな。魔法無効化アルカナヴォイドの魔道具も素晴らしいが、それを上回った家型魔道具も凄いな!」

 観客席ではロワードリッヒ国王が少年のような目で試合に見入っていた。


「ぐっ、そうですね、陛下。しかし次こそは!」

 そう言うと降りていく魔道具研究所所長……。


 もう1つの準決勝には魔道具研究所所長のラヴェットが出場していた。

 そして戦いはあっさりと決着し、エイレンの決勝の相手はラヴェットで決まった。



 休憩をはさんで、いよいよ決勝だ。

 このコンテストでは魔法師や神官が控えていて、1戦ごとに選手を回復させていた。



「皆さま!まもなく決勝戦が始まります!準備はよろしいでしょうか~~~~!!!!」

「「「「「おぉぉぉおおおおおお!!!!!!」」」」」

 沸き起こる熱狂!闘技場は満員だ。

 このコンテストは明らかに成功だ。これで魔道具開発はさらに進むと既にホクホク顔のロワードリッヒ国王も準備万端で観客席に座っている。


「それでは選手の入場です!まずは魔道具研究所所長のラヴェット選手です!」

「「「キャ―――ラヴェット様~~~~!!!!」」」

 声援に混じって黄色い声も飛んでいる。彼は若くして魔道具研究所所長に上り詰めた伯爵家の長子で、その甘いマスク、優れた成績で王都の女性からたくさんの人気を得ていた。


「続いて卓越した魔道具制作技術を持つ天才!エイレン選手です!!!!」

「「「「行け~~~~エイレ~~~~ン。負けるなよ~~~~」」」」

 まさかの声援。ラヴェットより大きくなかっただろうか?準決勝とは逆に、嫉妬に狂う男たちがエイレンの応援に回っているのが面白い。


「さぁ、なんとこの決勝戦は義兄弟での対決となりました!エイレン選手の奥さんはラヴェット選手の妹イヴェットさんです!」

「「「おぉぉぉおおおおお!!!!」」」

 巷では優秀な義兄弟と言われることになるんだろうな。もちろん隠してないから魔法師団や騎士団にはもともと知られているが。


「よくここまで勝ち上がってきたなエイレン!」

「ラヴェットさんこそ!」

 言葉を交わす2人。


「ここは負けぬ。イヴェットは連れ戻して回復させてやるから安心しろ!」

 しかしラヴェットはエイレンを好んでいなかった。

 エイレンは平民の出身であるからだ。にもかかわらず愛しい妹を奪った男。ラヴェットはそう認識していた。


「ラヴェットさん。もし僕が負けたら”魔力の指輪"はお願いしたいけど、僕はイヴェットと別れる気はない!」

 エイレンは言い返す。いいね。気合が入っている。

 そもそもイヴェットの父親であるグリーズバッハ伯爵が認めているんだから連れ戻すも何もない気はするが、シスコンとして何か思うところがあるんだろう。

 もし連れ戻したりしたらイヴェットは2度と口を聞かないとだろうし、兄と呼ばれることもなくなってしまう気がするが……。


「フン!それなら私に勝てばいいさ!できるものならな!!!!」



「それでは試合が始まります!!!今、審判の合図がありました!開始です!開始~~~~!!!!」


「家型魔道具というのには驚いた。しかし、私も負けてはいられんのだ!」

 何をする気だろう?

 準決勝では狼タイプのモンスターを魔道具で操って戦っていたが、狼で私は倒せんぞ?


「来い!ワイバーン!!!!!」

「おぉ?」

 なるほど、対戦相手によって操るモンスターを変えてくるのか。

 

 グギャアアァァァアアアァアアアアア!!!!


 そして闘技場に飛来するワイバーン。

 大きさは私と同じくらいかな?

 

「「「「いやぁぁあああぁあぁぁあぁぁああああああ」」」」

 そのワイバーンを見て阿鼻叫喚となる観客席。

 周囲に控えた魔法師や神官たちが防御の魔法をかけまくっているのが見える。


 立ち上がって落ち着くように指示しているおじいさん……あれは国王か?


「ラヴェットさん!まさかワイバーンとは!!」

「フハハハハ!これでお前の家型魔道具も終わりだ!行けワイバーン!貴様の炎であの魔道具を焼き尽くせ!!!!!!」

「うぉ……大丈夫?家さん?」

 

 炎を放つワイバーン。

 少し焦るエイレン。


 この程度の攻撃を私が食らうと思うのだろうか?今まで何を見てきたのだエイレン。


『問題ない』

 炎が着弾するが……すべて防御魔法で防ぎきる私。


『行くぞエイレン。お前はイスに座って眺めていろ!』

「わかった」

 飛び上がる私と、ゆっくりとイスに座るエイレン。

 室内には風魔法と地魔法と空間魔法によって、私がどんなに動いても快適な空間になるようにしてある。

 ん?準決勝の時は魔法無効化アルカナヴォイドのせいで室内コントロールができなかっただけだ。


「なんだと!???」

 飛び上がった私に驚くラヴェット。

 ワイバーンのやつは私を見失っている。強力だが知能が低いモンスターはこれだからいけない。

 ボーっとしていると踏みつぶすぞ。



 どしーーーーーーーーーーーーーんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 グギャアアァァァアアアァアアアァアアアアア!


『ふっ』


「なんと飛び上がった家型魔道具がワイバーンを下敷きにしたーーーーーー!!!!!!」

 瞬殺だったな……。



「くっ、くそーーー」

 そして悪あがきなのか突っ込んできたラヴェットを私の開いている窓に向かって空間魔法で引き寄せ、窓を閉める……。

 

『見たかエイレン!これが格闘技・ウィンドウクラッチだ!!!!』

「えぇ~~~」

 なんだその間の抜けた反応は。

 強力なんだぞ?


 その証拠にラヴェットはしっかりと気絶しているだろう?

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