第17話 <フィン> 魔法障壁の魔道具

 魔導騎士団敗北……その一報はフィンのもとに届く。

 リシャルデ内には不安と恐怖の風が吹き荒れる。


「戻ってきた魔導騎士団員は全員城壁の内側に入りました」

「わかった。すぐに待機していただいている神官と治療院の方々に回復を依頼してくれ」

「はい」

 やってきた準備が活用され始める。

 無駄足に終わることを祈っていたが、それこそ無駄だった。


「話ができるものは?」

「ガウェル中隊長が報告させてほしいと」

「わかった。回復し次第お願いする」

 中央部隊でブレイディ団長の補佐をしていた騎士だな。

 無事な人たちがいてよかった。

 これで次の作戦が考えられる。


 少し間を開けてやってきたのは細身の青年とガッシリとした壮年の騎士だった。

 壮年の騎士は西側を担当した中隊長だったはずだ。


「ガウェル中隊長……よく戻った。どうか様子を教えてほしい」

「はい、フィン王子」

 説明してくれるガウェル中隊長……。

 ブレイディ団長はやはり味方を守るために奮闘したようだ。

 だがそもそも僕にとっては敵が戦場で魔導具を使ったということ自体に驚いていた。

 危惧していたことが起こったということだ。


 その魔導具で魔法攻撃を全て消されてしまい、あっさりと窮地に陥った。

 魔導騎士たちはその状況に驚き突撃を止めることができずに突っ込み、打ち倒されていったようだ。

 ただ、約1,500名が帰還している。

 聞いた状況を鑑みるとよくそれだけ帰ってきたと思う。


「戻れた騎士が多いのはブレイディ団長が逃したのか?」

「お恥ずかしながら西側は全員帰還しております。日の出の太陽に遮られ、合図への反応が遅れてしまい……」

 なるほど。

 こういうところも長く戦争をしてこなかったことに起因するのだろうか。

 少なくとも魔法攻撃の威力を考えれば多少遅れても気にしてなさそうだ。

 だが、そのミスによってこちら側には一定の数の戦力が残った。

 一番のミスはやはり魔導具を軽視したことだろう。

 今さらなのでもう考えないようにしたいが、今後のことを考えると対策が必要だ。


 僕はその後も敵の魔導具の効果を把握するために彼らから話を聞いたが、残念ながら実際の戦闘に加わっておらず、開戦直後に魔法を無効化する障壁のようなものが貼られたことくらいしかわからなかった。


「フィン王子!」

 どう考えるか悩んでいる僕らのもとに、1人の騎士がやってきた。

 治療中の途中で出てきたようで体のいたる所にある傷は痛々しい。

 

「メネオス……」

「失礼します、フィン閣下、ガウェル中隊長、メロード中隊長」

「お前……傷は」

「応急処置はして頂きました。どうしても報告したく」

「あなたは切り込んだ部隊に?」

「はい」

 傷は痛々しいが将軍としての僕にとってはありがたい。


「感謝する。実際の戦闘の中での情報が欲しかったんだ」

「ありがとうございます」

 そう言うと彼は詳細に語ってくれた。

 魔法具が作り出した障壁の内側ではやはり攻撃魔法は使えず、武器や体術での戦闘を余儀なくされたようだ。

 外からだけじゃなくて内側でも魔法は使えない……。

 いや、あの空間で魔法がダメなのかも。

 外から撃ち込んだ魔法は中に入ったから消えたということかもしれない。

 実際の光景を見ていないので予想ではあるが。


 そして、情報として大きかったのは支援魔法は使えず、回復魔法だけは使えたということだ。

 どういうことだ……?


 報告に例を言って3人を帰したあと僕は考える。

 もちろんメネオスさんは治療術師のとこに連れて行かせた。


 ここは家さんに頼ろう。


 コンクロイ。


『ぐぅ~ぐぅ~ぐぅ~』

 家さん……。


『どうしたフィン?』

 さっきのは何だったんだ……。


『なんでもない、なんでもないから』

 怪しい……。


『で、どうしたんだ?何かあったのか?』

 えーとね。魔導騎士団は残念ながら負けちゃってね。


『えぇ??』


 僕は報告を受けた内容を整理して家さんに伝える。

 僕自身ショックは大きかったけど話したおかげでだいぶ頭の中は整理できた。


『攻撃魔法を封じる魔道具か』

 心当たりがあるかな?


『もちろんだとも。だいたいみんな考えるからな』

 そっか。どんなものなんだろう。

 戦いの間ずっと魔法を封じられるのは厳しい。

 クロード王国はずっと魔法に頼ってきたから。


『それもあってその魔道具が作られたんだろうな。仕組みはそんなに難しくないのに効果は高いから』

 そうなんだ。

 難しくない?


『あぁ。魔法ってやつは魔力によって引き起こされる現象だろ?それがいつ威力を持つかという話だが、わかるか?』

 いや……あぁ、思い出した。

 王城の授業で習ったんだけど、着弾したとき、だ。


『そうそう。魔法と言うのは魔力を集め、集めた魔力を使って現象を起こすものだ。その現象を起こすまで、つまり火魔法なら何かにぶつかって火になるとかだな。その前までは魔力の状態なんだ』

 理論としては学んだが、なかなかに理解は難しいものだったので覚えている。

 じゃあ水魔法は?って思ったような。


『水魔法も何かが当たった時なのは一緒だが、空気中のごみとかにまで反応してるからわかりづらいな』

 そういうことだったのか。


『で、その魔道具だが、空気中を移動している魔力を拡散させる魔道具だ』

 ほうほう。


『攻撃魔法はもちろんだが、支援魔法も対象者のところまで魔力を飛ばし、対象者に当たって初めて効果に変わるから、同じく使えない』

 なるほど。

 でも、回復魔法は使える?


『そうだ。回復魔法は他の魔法みたいに飛んでいくわけではなく、対象者に魔力を集めてそれで治療する。だから、ラザクリフ軍が使った魔道具では消せないんだろうな。体内にある魔力には作用していないと思う』

 さすが家さんだ。

 

 でも、どうやって壊せば……。


『できれば起動前に壊したいな』

 それしかない?


『他は難しい。接近して叩き壊すのもありだが……』

 準備万端で相手に待たれていたらなかなか難しそうだね。


『他に弱点と言えば、たぶんだけど消費は激しいから長い戦闘の場合とか、連戦とかだと魔力不足で動かなくなりそうだけどな』

 なるほど。

 でも、それは狙いづらい。


 こちらは魔法主体の軍、向こうはもともと魔法にあまり頼らない構成のはずだ。

 そもそも長期戦になったら不利なんだ。


『防衛戦をやるんだよな?』

 今はそれしかない。

 王国軍の本隊が来たらせめて出るかと思ったけど、それすら考え直す必要がありそうだ。



「フィン閣下~」

 ん?


 ごめん家さん。

 誰か呼びに来たようだ。


『わかった。また話そう。無理はするなよ』

 ありがとう家さん。



△△△△家のつぶやき△△△△

ここまでお読みいただきありがとう!

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