第22話 <家> 戦後処理
さて、戦争がひと段落つき、私のとりあえずの居場所の確保もひと段落ついた……。
どこにいるのかって?
フッフッフ。
フィンたちが本営に据えたのは当然ながらリシャルデの公館だったからな。その公館には割と広い庭が備わっていたから、その一角にいさせてもらっている。
私が空を飛んでリシャルデを囲む壁にある門の1つを超えて街の上空に入ると、当然ながら残っていた駐留兵などに驚かれた。
住民はもう少し南にある町や村に避難させているようで、ここにいないのが幸いだった。もし住民たちがいたら戦争中でストレスが溜まる中、驚くだけですんだだろうか?
そして私はここに滞在してフィンを休ませたり、精神を飛ばして公館の中を覗いたり、食事を作ってフィンとハゲ団長をもてなしたりしていた。
2人の中はかなり親密で強固なものになったようだ。聞けばハゲ団長はもともとフィンにもフィンの弟にも関与せず、ただただクロード王国の魔法と魔導騎士団の発展だけを目指して働いてきたらしい。ただの堅物だ。だからこそ魔導騎士や魔導士たちに楽をさせてしまい、魔法の発展を止めてしまいかねない魔道具の存在を疎ましく思っていたようだ。
実際に私が一般人より魔法を使えるものの方が当然ながら魔道具をよりよく使えることを説明したところ驚いていた。魔道具を生み出したのが獣人のため、見下していたようだ。食べず嫌いはいかんぞ?海藻ももっと食べろ。
そうして、実際にいくつかの魔道具を見せてやった。
私が持っているもので一番いい魔道具は火無効だ。これは壁紙に仕込んでいるが、もちろん予備も持っているのでそれをハゲ団長に持たせて思う存分火魔法をお見舞いしてやった。
大丈夫だと言っているのにハゲ団長が焦るのが面白くて、つい全力でフレアを放って公館の庭の芝生を燃やして怒られたのは内緒だ。
誰に内緒だって……?
揚げ足をとらないでもらいたい。
なぜ魔法を使えるものの方が魔道具を上手く扱えるかって?
そんなの当然だろ?そもそも魔道具を使用するのには魔力がいるんだ。魔石が備わっていたら問題ないが、そうじゃないものはそもそも魔力があるものにしか使えない。この世界のほぼすべての生命体は魔力を持っているが、魔道具を動かすのに十分な魔力が必要なんだから魔法使いの方が有利だ。魔法を使えば使うほど魔力は上がるんだから。
次に魔法を使うタイミングに関してだ。日常生活ならそんなに問題はないが、戦闘で使う場合は魔道具を起動するタイミングも重要だ。なにせ魔道具の効果は一定じゃないし、消費魔力の問題もある。効果的なタイミングで使ってこそ意味があるんだから。
つまり、魔法を使って普段から戦っているものが魔道具を使う方がより必要なタイミングで使えるのだ。
今回の経験もあってハゲ団長はフィンに、必ず魔道具の研究を進める支援をすると約束していた。ただ私は怪しいと思っている。彼は支援ではなく、全力で自分で研究しそうだ。少なくとも魔法を防ぐ障壁の魔道具と、それを打ち崩すための魔道具は必ず研究するだろう。
そんなハゲ団長は昼食に加えて夕食まで食っていった。
胃袋から取り込んでやろうかとフィンに言ったら、ハゲがずっと居座るのはむさ苦しくて嫌だなとか言うから笑ってしまった。
フィンとの何気ないやり取りはやっぱり楽しいな。
しかし……まずいな。
フィンはしばらく戦後処理にかかりきりになるし、引継ぎが終わるまでは王都には帰らない。
それだと私の語りで今日の話が終わってしまいそうだ。
そうはいかない。
まだエピローグじゃないぞ?
私だって1つやっておきたいことがある。フィンの許可は貰ったから、思いっきりやってやるとしよう。
フィンやハゲ団長を陥れたやつらの処分を、な。
本命は王城に戻った後に取っておくとして……。
「くそっ、なんだというのだ」
私の壁紙の切れ端と、割れた外壁の一部に追われるガッシリとした壮年の騎士……。シュールだ。
『ふはははははは』
せいぜい恐怖を煽ってやろう……。
私の怒りはまるで業火……いかんいかん火はまずい。
私の本体は家具型魔道具のおかげで火耐性を獲得しているが、私の一部であるこいつら、特に壁紙にそんなものは付与されていない。
「化け物め!この私が魔導騎士団中隊長のメロードと知って、なっ……ぐぁ」
とりあえず壁紙の一部がこいつの顔に巻き付き、外壁の一部が体当たりする。
呼びにくいから壁紙と外壁でいいかな?
こんな意味の分からないものたちに名乗るおっさん騎士。中隊長とか聞いて退くと思ったのだろうか?
そして全身にとりつく白い壁紙……。
ミイラみたいになったな。
フィンが救出に行くという情報をあろうことか敵に渡すとは許せん。
多少の偶然もあってフィンによる救出方法までこいつに伝わってなくて助かった。
フィンは何か感じていたのかな?
そもそもいくら太陽があるからと言って魔法騎士団の中隊長ともあろうものが突撃に遅れるなんてことがあるのだろうか?
そこから不自然さを感じて近くに寄せ付けなかったとしたら、さすがだなフィン。
「家さん?」
いけないいけない。分割に気を取られていた。公館の庭にいる私に話しかけるのはフィンだ。
『大丈夫か?疲れていないか?』
「それはこっちのセリフだよ、家さん。また何かしてたんでしょ?」
『まぁな。ただフィンは気にする必要はない』
「わかったよ」
『さぁ入れ。休んでいくんだろう?』
「うん、ありがとう」
私はいつものようにフィンを迎え入れ、風呂に入れ、食事を出し、ベッドに寝かせた。
もうしばらくはこっちでこの生活だ。
国王陛下は出陣予定だった王国軍を再編して送り出すからそれが来るまでリシャルデで指揮を執るようにと言っていたと思うが、王国軍はどうなったんだろう。
秋にあるという選定会議までは当然帰れるんだよな?
まぁ、今はこっちにいるしかないから、私はフィンの支援をしていよう。
△△△△家のつぶやき△△△△
ここまで読んでくれてありがとう!
私もちゃんと活躍しているぞ!見てくれたよな!
見てくれたというそこのあなた!
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