番外編その3 第6話 神との遭遇

「ありがとうございました、家様」

『うむ。なかなか面白かっただろう。かつての家主も』

「はい。とても悲しい物語なのかとも思いましたが、無事再会できてよかったです」


 それにしてもこの魔道具はなんだったんだろうか。


 私が調べる限り神のもので間違いないと思うのだが、こんなものを元"勇者"と元"魔王"に渡したのは誰だ。

 悪意は感じない。

 むしろあの2人に幸せをくれたんだろう。


「この魔道具はとても不思議ですね」

『あぁ、私もいまだにこれが何なのかわからない。人の手によるものではないのは確かだ。神の作ったものなのだとは思うが、特定はできない」

 なにか大きなものの介入なのだろうか?


 私自身の長い生において、何度か神と関わることがあったが、どちらかというと余裕がないように思えたのだ。


 しかし、この魔道具から感じるのは愉悦、楽しさだ。

 なんというか雰囲気が違う。


 考えても不思議なだけだし、今となってはあいつのもっていた記憶用の魔道具が動かないから検証はできないがな。



 フィンの研究が辿り着く先にはこんなものがあるのだろうか?


 それとも私のように別の世界から来たのだろうか?


<それは今考えない方がいいね>

 

『だれだ?』


 気付けばローザが動いていない。


 時間が止まっている???


<はじめまして。ボクは……すまない、今キミに明かすことはできないようだ>


『神か?』


<うん、そうだよ。あぁ、それは言ってもいいんだ。ルールがよくわからないよ>


『私には何が何やら』


<あはは、そりゃそうだね。混乱させてごめん>


『何かを止めに来たのか?』


<あぁ、そうそう。イレギュラーな君が思考していくと辿り着いてしまいそうな気がしたから止めておこうかと>


『辿り着くとまずいのか?』


<いや、ボクとしてはまずくないし、なんなら仲間に誘いたいくらいなんだけど、こっちの〇×※□さまがやめておけって>


「誰だ?」


<あぁ、ごめん。これは言えないみたいだ>


『ひとつだけ教えてほしい』


<言えることなら>


『あなたは敵か?』


<ボクが?ないない。ボクはこの世界の味方だよ?決して滅ぼそうとか、何かを害そうとかそういうんじゃないから>


『だろうな』


<いや、だろうなってなにさ?>


『あなたから感じるのは楽しさ、嬉しさ、あと悪戯心と……>


<ストップストップ。ボクを読まないで。それはまずい>


『すまない。了解した」


<うん。キミとは友達でいたいしね>


『わかった。あなたからはこの世界に住むものへの深い愛を感じる。であるならば、何か目的をもって活動しているのだろうし、それを止めるべきとは思わない』


<ありがとう。いや、恥ずかしいから内緒ね。では、ボクはこれで。また会うことがあったらその時は遊ぼうよ>


『わかった。楽しみにしている』


 行ってしまったな。



「家様?なにか?」

『あぁ、フィンには内緒だ。神が来ていたのだ』

「えぇ?」



<<あぁ、そうそう。その人のお腹のお子さんを大事にね。僕たちの希望につながるからね!>>


 遠くで何か聞こえた気がした……。


 もちろんだ。

 そのために私が守っているのだ。

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【番外編その2完結】取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話 蒼井星空 @lordwind777

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