新生「ドラゴンノベルス」の柱となる、新時代のファンタジー小説大募集!
2,939 作品
この度は「第6回ドラゴンノベルス小説コンテスト」にご応募いただき、誠にありがとうございました。
今回、第6回コンテストはドラゴンノベルスとして初めて、長編部門と中編部門の二部門でのコンテストを実施いたしました。カクヨム上でのコンテストとしては実績のある異世界/現代ファンタジー長編部門はもちろん、編集部からの三つのお題を掲げた中編部門にも多くの方にご参加いただき、応募総数は過去最高となる2,939作品となりました。ご応募いただいたすべての作品、著者の皆さまに重ねてお礼申し上げます。
ドラゴンノベルス小説コンテストでは、読者選考ののち編集部内の一次選考を行っており、今回は長編25作品、中編16作品を最終選考候補とさせていただきました。どれもそれぞれに強みを持ち、楽しませてくれる作品ばかりで非常に悩ましく、多くの意見が交わされる選考となりましたが、最終的にその中から大賞1作、中編「求道者」賞1作、中編「旅と相棒と奇跡」賞1作、特別賞4作を選出いたしました。
受賞作は、2025年春刊行を目指して書籍化を進めてまいります。楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
また、第7回のコンテストも2025年春に開催を予定しております。
今後もドラゴンノベルスをどうぞよろしくお願いいたします!
総評・講評:ゲーム・企画書籍編集部
元男だからイケメンに恋愛感情なんか持つ訳ねえし、年の離れた弟が堅信式迎えるまでは当主代理しないといけねえし
主人公だとか悪役令嬢だとか言われても戦争おっ始まったんだから従軍しねえといけねえし
身代金交渉とか出来る家臣とかもいねえんだから敵国の皇太子の首落としても仕方ねえよな?
フルオライト・ルヴェールはルヴェール男爵の嫡子。火の精霊、サラマンダーのラヴァとの出会いによって、ガラス工芸作家だった前世の自分を思い出した。この世界は精霊も神獣も神も身近な存在で、魔物がいる。科学の代わりに魔道具が、電気の代わりに魔石がある、そんな剣と魔法の世界。色々な技術は各ギルドや工房で秘匿され、辺境の村は魔物に怯え、税にやせ細るようなそんな状況だ。領主、ルヴェール男爵家の屋敷にだって、窓ガラスはない。ガラス工房どころか、鍛冶工房すらもない。食料さえも不足している、ないない尽くしの辺境の小さな貧乏領。それでも、五歳のフルオライトことルオは決意する。この世界でガラス工芸作家に俺はなってみせる!
本作は異世界でガラス工芸作家を目指す少年が、相棒のサラマンダーとともにがんばる物語です。家族や師匠といった優しい人たちに囲まれた、のんびりほのぼのとした日常や製作風景。読んでいるといつの間にか引き込まれていってしまう、そんな不思議な魅力のある作品でした。主人公がガラス製作のためにひたむきに努力する姿は、まさに求道者そのもの。提示されたテーマを作品にうまく落とし込みながら誰もが楽しめるような物語を作り上げた点を評価し、「求道者」賞として選出いたしました。
かつて栄えた文明は、今や滅び、世界は荒廃した。
〝オーサン・オルグレン〟は、そんな終わった世界を、気ままに旅する。
相棒は、一台のバイク。
そして、とある朽ちた施設で拾った不思議な少女、〝ロースト〟。
荒廃した世界を、旅する。
相棒は一台のバイクと、純白の少女。
オッサンと、少女は、旅をする――
不穏な空気が漂う荒廃した世界で、どこか諦めながらも努めて明るく生きようとしている登場人物たちの健気な姿、ほどよいニヒルさと純朴さが魅力的な主人公、謎めいたヒロイン、感傷的でドラマチックな真実など、読者の興味をそそる要素がうまく絡み合った、爽やかな感動作でした。どちらかと言えば短編向きのアイデアということと、分量の上限を意識したからでしょうか、世界観の説明や細かいエピソードが「足りていない」と感じるところもありました。そこをきちんと補完できれば、より印象深い作品になることでしょう。
社畜を卒業し、一念発起してダンジョン探索者になった阿尻ダイシ(37)。
初期登録で付与された適性職が『僧侶』だったので、1人じゃ戦えないと思い、ギルドで仲間を募集しているパーティに片っ端から申請を出すのだが……。
「回復スキルを使えない僧侶はいらない」
結局どこにも入れてもらえなかった俺。しょうがないので1人でダンジョン探索をすることに。
「とにかくレベルを上げてヒールを覚えよう」
すぐに回復くらい使えるようになると思ってダンジョンを進んでいたのだが……。
なんかヘンなスキルばっか覚えてぜんぜん回復が身につかない。
しかも何故か魔物は強敵ばかりだし。
一体どうなってんだよ。
……あれ?ていうかそもそも、『僧侶』ってヒーラーでいいんだよね??
カクヨムではいわゆる「ダンジョン配信」ものが人気のジャンルですが、本作もそのうちの一つとなっています。ただ本作は「僧侶」の職業となったおっさんがダンジョンで様々なモンスターを「葬送」していくという、聞いただけでは頭にハテナが浮かんでしまいそうな設定です。それをコメディ調でうまく仕立て、「配信」という特徴を生かしてリスナーのコメントにツッコミをさせるなど、工夫が光る作品でした。タイトルや設定のキャッチーさもありながら、面白く読める物語として作り上げた点を評価し、特別賞に選出いたしました。
終電で俺のことを底辺社畜と馬鹿にしてきた大学生カップルと勇者召喚された。
どうやら俺は巻き込まれただけで、勇者は大学生カップルの二人だけだったようだ。
「ぷぷぷ…何そのステータス笑」
「おじさん、向こうでもこっちでも負け組とかマジで可哀想だな笑」
勇者の二人は思いっきり俺のことを馬鹿にしてくる。
「勇者じゃないなら要りません。今すぐ城を立ち去ってください」
さらに俺は勝手に召喚された身にも関わらず、理不尽にも勇者じゃないからと追放される。
手切れ金すら渡してもらえなかった俺は、異世界の街で絶望するのだが…
「シークレットステータス? なんだこれ」
隠されていたステータスが覚醒。
実は俺こそが王族たちが必要とする人材だったと知ることになるのだった。
現代社会で疲れ切っているサラリーマンのおじさんが、一緒に召喚された学生たちや、召喚者の王女からバカにされつつも、異世界で人々のために生きていく物語です。主人公の誠実さや無欲さが、その後の活躍をより引き立てる要因になっています。序盤はヒーラーとして人助けに奔放しますが、主人公がいつ表舞台に立って活躍するか、ワクワクしながら読まさせていただきました。「人を助け、また人に助けられる」人間くさい主人公のキャラクター性と丁寧なストーリー展開を評価します。
財布を落とした、と勇者は言った。
トマーシュは実家が没落して以降、小役人としてつましく暮らしていた。そんな彼の人生は、旧友と再会した夜を境に激変する。
旧友は、今では王国唯一のS級冒険者。勇者と名高い彼は輝かしい冒険の日々を送っている――の、だが。彼はどうやら私生活面がポンコツで、けれども解決策を見いだすのはトマーシュにとって造作もないことだった。
トマーシュはまだ知らない。それがきっかけで曲者揃いの勇者一行の空中分解を未然に防ぎ、金策に奔走し、拠点を整備して、気が付けば勇者ギルドのマスターに成り上がることになると。
学院の同級生でありながら、片や勇者、片や没落貴族で小役人。そんな彼らが久しぶりに再会すると、勇者となったはずの友は戦い以外のあらゆることに問題を抱えていて――という導入から始まる主人公の成り上がりを描いた本作。
勇者という題材は良くも悪くもスケールの大きな作品が多い中、本作は勇者と主人公との間の友情と、彼が抱える個人的な問題解決に焦点を当て丁寧に、面白く描いていた点を評価し、特別賞に選出いたしました。
欠損奴隷を安く買ってスライム型人工知能搭載ロボで治せば良いのでは?
魔術平均以下、剣術平均以下、座学平均以下、プライド平均以上、そんな俺は公爵家の産まれという権力を使って好き勝手生きて来たし、偉そうな態度を取ってくる奴は黙らせ、婚約者も家の権力で手に入れた。
努力や勉強は嫌いである為、魔術や剣術に勉学ははっきり言って学園の中でも最底辺であり、そんな現実から目を逸らしてマイナス部分は実家の権力で補い、ふんぞり返る始末。
それだけならばまだしも、それが自分の実力であるとすら本気で思っている救えないクズ。
それが俺であった。
そんな時、俺は前世の記憶を思い出すと同時に、今の俺を客観的に見てクズであるという事に気付き、今までの行動にかなり後悔するのだが、それと同時に前世ではこの世界よりも魔術や科学が発展した世界であり、さらにその世界の先進国の一つで国家魔術師として戦い戦死した事を思い出す。
試しに前世で行使していた魔術を試してみると問題なく使え、さらに前世で使用していたストレージや、その中に保管していた科学と魔術の最先端技術の武器や防具の数々も使用できることが分かった。
しかもそれだけではなく通販大手サイト〇マゾンストアのアカウントも生きているらしく、ストレージを通して使えるではないか。
これならばこの世界でも何とか生きて行けそうだな。
そんな時、学園の授業の一つであるダンジョン探索で数百年に一度と言われているダンジョンの進化に巻き込まれて俺と元婚約者だけがダンジョン内に取り残されてしまい、流石に見捨てる訳もいかず俺の能力は他言無用という約束をして元婚約者を助けたのだが、その日以降元婚約者からの視線が俺に向いているような気がするのだが、気のせいだろうか?
とりあえず前世で使っていたストレージから通販大手サイト〇マゾンストアや人工知能搭載ロボを駆使して欠損奴隷を治したり、人工知能の知識でスローライフを目指すか。
前世の記憶を取り戻し、現世の自分のクズさに気付いてしまった主人公が選んだ道は、クズとしての仮面を付けたまま生きること。露悪的に振る舞いながらも、彼は手の届く範囲の世界を良い方向へ変えていくことになります。そんな主人公を慕う配下も少しずつ増えていきますが、一癖も二癖もある者たちばかり。彼らとの軽妙なやりとりも、本作の読み味をより良いものとしている要素のひとつでしょう。スローライフを目指しつつも多くを救う、爽快感溢れるアンチヒーローの物語としての楽しさを評価し、特別賞としました。
「第6回ドラゴンノベルス小説コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
乙女ゲームの世界に弱小貴族令嬢として転生した主人公は、原作を知らない元日本人男性。その言動は、世紀末感漂う“ザ・漢”。そんな出オチとも思われそうなコメディ感ある設定に、本筋の乙女ゲー展開、歴史、群像劇、バイオレンスと様々な要素がぎっしり詰め込まれた作品。どんどん転がっていくお話は疾走感があり、読者をいい意味で裏切ってくれます。そして何より、荒唐無稽なストーリーを一本筋が通ったものとし、しっかり読ませる構成力に感服! この唯一無二の快作を大賞といたします。