お祓い系BouTuber
第32話お祓い系BouTuber SEI☆MEI
艶鵺の足元に真っ黒な獣が倒れていた。
一見すると犬かと思われたが、尻尾の太さや顔の造りがどちらかと言えば日本本州に生息するホンドギツネによく似ているが、しかし体色が狐によくみられるきつね色と言われる赤みがかった黄色では無く、真っ黒な色合いをしているのだ。
黒い体毛の狐は善狐として物語で語られたりするが、如何やら彼女はそうでは無かったらしい。
野狐────いわゆる野良の狐の事だ。中国では仙狐を目指し、修行するための試験に合格していない狐を指す場合がある。
日本だと、人間に対して悪事やいたずらを行う狐全般を指して野狐と言う呼ばれ方を用いたりもするが、彼女はどうだったのだろうか。
艶鵺が立っているのは、様々な商品が所狭しと置かれた雑貨屋だった。
今時のお洒落なアクセサリーが置いてあるような店では無く、笊や籠のような金物など、生活に根付いたような商品ばかりを扱う方の雑貨屋だ。
艶鵺が立つ店舗の奥、住居部分にあたる部屋では出しっぱなしになったままのこたつの中で────雑貨屋大黒堂の主である老人の変わり果てた姿と思われる────白骨死体が鎮座していた。
そして、この真っ黒な野狐は大黒菊狐こと、キッコだ。
血反吐を吐いて死んでいる。
「・・・・・・さて」
少し離れた場所では三人の少年達の変わり果てた姿があった。
キッコが死後数分、と言った感じであるのに対して少年達は少なくとも数年は経っているように見える。
服装で辛うじて男児であると判断できる程度だ。
艶鵺が感じていた違和感は、如何やらキッコではなくて少年達にあったらしい。
歳のせいで勘が鈍ったとは思いたくないが・・・・・・。
艶鵺は、苦々し気に小さな躯を見下ろしていた。
躯自体は死後数年経っているのに、身に着けている衣服は真新しい。
キッコがナオヤ達を殺してその遺骸を操っていたのは確かだ。
ナオヤ達の骨に、禍々しい呪符が貼られているのが見えていたからだ。
取り敢えず、私の代わりに退治してくれたのは助かるが・・・・・・後始末もしっかりしていってくれないものかね。
辛うじて、周辺に物音を立てずに行われたようだが通報もちゃんとしていって欲しいものである。
「しかしまあ、その手腕は大したものですよSEIMEI君」
お祓い系BouTuberの元祖であり、現在は高校生霊能者として活動している『SEI☆MEI』と名乗る青年BouTuberだ。
自身を安倍晴明の子孫と名乗り、霊能者として様々な心霊スポットを巡り除霊浄霊を行って、時にはお悩み相談などもやっている。
中々のイケメンであることから、登録者数数万人のそこそこ人気活動者である。
皆、SEI☆MEIの安倍晴明の子孫、と言うのはただの設定だと思っているが、実はそれは本当のコトであると言うのを艶鵺は知っていた。
正し、安倍晴明の子孫と言うのは本当だが、本人は本来清明の名を名乗れない立場にある。
苦肉の策として、SEI☆MEIと名乗っているのだろう。
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