第26話立ち入ってはいけない場所
漣は次の日、先輩にあたる
「で、だ。この辺から先、俺達が立ち入って良いのはここ迄」
そう言って指差した先には分かりやすく三角コーンが道の両端に置かれ、立ち入り禁止のテープが三角コーンに貼られて道を塞いでいた。
「此処から先に何があるんですか?」
当然の疑問を漣は口にした。
「うん、一応向こうにも家とか色々あるんだけど誰も住んでないし行く必要は無いから」
と、きっぱりと言い切った。
「え・・・でも、誰も住んでいないならかえって危ないのでは・・・・・・?」
「まあな、でも俺達人間では対処できないから余計な事はしなくていいぞ」
答えになっていない気もしなくも無いが、高見はそれ以上は答えてくれず次行くぞ、とスタスタと自転車を押して道を引き換えして歩いて行ってしまう。
漣は慌ててその後を付いて行く。それから後ろをちらと振り返り、静かに佇む廃墟群を一瞬だけ見ると急いで高見の後を追うのであった。
高見が行かなくていいと言っていたカラーコーンから向こう側には、少し歩くと緑色のフェンスで道のど真ん中を塞いであり、そこから先には本格的に進めないようになっていた。
勿論、左右には普通に家が建っている。
その、家の軒先ギリギリの所────猫位ならすり抜けられそうな隙間があるだけ────にフェンスを設置してあるのだ。
フェンスの一番上の部分には有刺鉄線が張り巡らされ、古ぼけた注意書きの看板が設置されている。
ここから先、日本国憲法と常識が通じません。侵入して何かあっても、市は一切の責任を負いません。
伏木市
と、市からはっきりと警告されている。
この、フェンスの向こう側に何があるのかと言うと、正確に言うとこの近辺には何も無い。問題はこの好矢見町から歩いていける堅須山にあるトンネルだ。
この堅須山、大した標高では無いが大して整備もされておらず車はおろか、人も入るのも難しい山である。
しかし、何故かそんな山にトンネルがあると言われている。
そのトンネルの向こう側にはもうひとつの町が、異界の町に繋がっておりそこは日本国憲法が通用しない、だとか常識が通用しない、と言われている。
特に好矢見町の住民は、子供達に絶対にフェンスの向こうに行くなと口を酸っぱくして言う程である。
それから同時に言われているのが”緑ババア“に声を掛けられても付いて行ってはいけない、だ。
緑ババアは全身緑色の衣服に身を包み、好矢見町内で何やら困った風で座り込んでいる。
親切心で声を掛けると、喜んで家に招待して来ると言う。
そのまま付いて行くと堅須山のトンネル向こうにあると言う家に連れて行かれ、二度と帰れない、或いは生きては帰れないと言われている。
その為、好矢見町で一見して困っている風の人間は大抵妖であり、人間の親切心に付け込んで悪さするだけなので何があっても無視をするのが鉄則なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます