第42話好矢見町にある神社・3

「・・・あーっ、もうっっ! ヤダヤダッ! メンドクサイいぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」



 クミ子は絶叫してお札を地面に叩きつけた。



「何でッ! アタシがッ! こんなコトッ! しなきゃいけないんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!」



 傍から見ればドン引きされるであろう、癇癪を起こし始めたクミ子は、まるでお手本のような地団駄を踏んでお札を踏み潰した。

 踏みつけられる度にスニーカーの足型が着き、破れ、グシャグシャになって行く。



 中の木札すら真っ二つにする勢いでガンガン踏んづけた。

 今のクミ子を止める者は居ない。何時もなら取り巻きがなだめすかしたりして早くご機嫌を取ってくれるのだが、それも無い状態でクミ子は肩で息をする程地団駄を踏み続けた。



 ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!



 まるで何かに憑りつかれたように、どうしてそこ迄怒りに駆られたのか自身でも分からないくらいに、クミ子は地団駄を踏んで踏んでしていた。

 流石に疲れてハア、ハア、と荒く息を吐いて漸く落ち着いて辺りを見渡した時、辺りはすっかり暗くなっていた。



 携帯を見たら、十七半を過ぎていた。

 こんな事をしていなければ、とっくに家に帰り着いている時間だった。



「あ・・・・・・」



 何やってんだろ、アタシ・・・・・・。



「・・・・・・帰ろ」



 クミ子は踵を返して帰って行った。



 次の日、教室に入ると取り巻きふたりが早速近寄って来た。



「おはよう、クミちゃん」

「おはよう」



「うん、ふたりとも早いじゃん」



 と、言うとふたりは顔を見合わせて。



「だって、あのお札一週間以内に納められなかったら呪われる、って言われてたからさあ・・・・・・」

「クミちゃんなかなか納に行かないからハラハラしてたんだよお、もう行ったんだよね?」



 吉田達がそう言った瞬間、クミ子の顔色が変わった。



「・・・え、何ソレ・・・・・・」



「何言ってんのクミちゃん、あの日ババアが言ってたじゃん! お札を納められなかったら呪われるよ、って」



 内山が驚いたように言うと、クミ子は顔を引きつらせながら否定した。



「そんなのある訳ないじゃん、呪われる、ってマジで信じてるの?」



 強気な態度でそう言うが、もう一度行くにもお札はもう既にズタズタにしてしまった。



 呪い何てある訳ない、は自身に言い聞かせているのだ。



 しかし、好矢見町ではそんな態度は通用しない。

 関わってルールを破れば、容赦なく命を刈り取られるのだ。

 

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