第45話非常階段に居る生徒
本校舎側の非常階段。二階に続く踊り場に、時折此方に背を向けた生徒が立っている事がある。
今は、高学年くらいの男子が立っている。
彼に近付いて、顔を見ようとしてはいけない。もし、そんな事をしてしまえば、入れ替えられてしまうと言う。
自分と、その男の子の立場が入れ替えられてしまうのだ。そうなったら、今度は自分がその踊り場で立ち続ける事になり、今度はその子が自由になるのだ。
話では、数年前は低学年くらいの女の子が立っていたらしい。
取り敢えず、顔を見ようとしなければそれ以外は無害(?)なので皆近寄らないようにしている。
とは言え、運動場にいるとどうしても視界に入るので、あまりいい気はしないのだけれど。慈雨達はボール遊びをしながら、其方へ飛んでいかないように気を付けながら校庭を走り回るのであった。
それから数日後────。
「あれ・・・・・・?」
慈雨が声を上げた。
非常階段を見ながら足を止める慈雨に、桃瑠はどうしたのか、と足を止めた。
「ナニナニ、どしたの?」
「あれ・・・・・・」
慈雨が非常階段に立っている男子生徒を指差す。男子生徒が、此方に背を向けて立っている。何時もの事だ。
「あの子がどしたの?」
「うん・・・あの子あんな服だったかなあ、って・・・・・・」
此方に背を向けている彼はチェックのネルシャツにデニムを履いた秋冬頃の服装をしていた────筈だった。
「えー、アレ? 違う???」
男子生徒であるのは変わらないのだが、着ている物が変わっていた。
長袖のTシャツにカーキ色のカーゴパンツになっていたのだ。
「え、着替えた?」
「ンな訳ねえだろ、誰か入れ替わ・・・・・・」
さらに隣に居た一つ目小僧のヨウタがツッコミかけて止めた。
「・・・・・・え・・・ウソでしょ?」
「マジ?」
「うわっ・・・や、止めようぜこの話・・・・・・」
三人は顔を引きつらせながら、その場をそそくさと去って行った。
それから本校舎では入れ替わった、と言う噂が流れて来ないのが不気味だったが入れ替わるとその生徒は立場ごと入れ替わる、と言う説が妖側の生徒達の間でまことしやかに流れたが、真偽はその後も不明のままであった。
今日も慈雨は元気に桃瑠達と校庭を走り回っていたが、ふと足を止めて非常階段の方を見た。
「・・・・・・」
・・・・・・入れ替わってる。
今度は女子生徒だ。肩より少し長いくらいのロングヘアーに、淡いブルーのパーカー、チェックのスカートの高学年くらいの女子だった。
最短記録かも、と思ったが自分が気付かないだけでちょくちょく入れ替わりは起こっていたのかもしれない、と思い直すと、慈雨はこれ以上深く考える事を止めた。
分かった所でどうする事も出来ないからだ。
精々、仲の良い友達たちに忠告をする事ができるくらいである。
後で桃瑠達に言っておこ。
こうして、妖側の生徒達の間だけで情報共有がなされていくのであった。
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