第34話町内会議
宵闇町の住民達が、そこそこの広さの有る会議室に集合していた。
しかし、会議室の中はやや閑散としており、全ての住民が参加している訳では無いようだった。
「さて、今回は宵闇町から引っ越し予定の皆さんだけ集まっていただきました。もうご存じの方もおられるでしょうが・・・・・・」
と、町内会長の金田が話し始めた。金田は人間で、この宵闇町から引っ越し予定は無いが取り纏め役として参加していた。
伏木小学校は今、慈雨達四年生を最後の学年にしてもう新学年を受け入れていない。慈雨の学年が卒業したら、伏木小学校は閉校する予定だからだ。
そして宵闇町は封鎖されて、現世と隔離されるのだ。
なかよし商店街の商店主や、酔いどれ横丁の店主達の大半は宵闇町に新しい店舗を構えて、再び商売を続けるつもりで居る。
勿論、中には外へ向かう住民もいて、今回は引っ越し予定の住民だけが集まっての話し合いであった。
人間の住民の他にも、ちらほらと妖の住民の姿がある。彼らも、引っ越し予定なのだろう。なにも、人間だけが出て行くわけではないのだ。
「お祓い系BouTuberと名乗る者達が、好矢見町に集合しようとしている件についてですが・・・・・・」
金田がそう言った瞬間、場がざわついた。勿論大半がもう既に知っていた事だが、矢張りその話題か、と言う感じのざわつきだった。
SEI☆MEIがBouTube上でお祓い系BouTubrや、その他の除霊浄霊を生業にしている霊能者達へ好矢見町へ殴り込み・・・・・・好矢見町を丸ごと除霊浄霊しようじゃないかと呼び掛けたのである。
その呼びかけに、何人か手を挙げたようで近々来るのではないか、と言う事でもしかしたら封鎖が早まるかもしれないのだ。
「えー、そう言う訳ですので、引っ越しを検討中の方でまだ新しい住居を決めていない方はお早めに町外に物件を見つけて頂かないといけないかもしれないです」
会議、と言うよりは何時頃出て行くべきか、等のタイミングの話し合いが中心でそれらの話し合いは三時間ほどで終わった。
19時頃から始まった話し合いはやや纏まりなく終わり、ただ何となく疲れただけで終わってしまった感が否めない。
「・・・っ、あー疲れた・・・・・・」
そう言いながら出て来たのは皇慈であった。
皇慈は元々町外の人間だが、今は修行の為に此処に住んでいるのである。
皇慈的にはこのまま宵闇町に住んでも良いと思っているのだが、中々そうは行かないのが常だ。
「おや、皇慈君」
駅の高架下にある会議室から出て来た皇慈に声を掛けて来たのは、艶鵺であった。
「あ、艶鵺さん! 祇鏖さんも一緒、っスか」
丁度高架下にある飲み屋から出て来たらしい男ふたりを認めて、皇慈はパッ、と笑顔を見せた。
「ああ、今日は引っ越しする人達の会議でしたか」
「うっ、ス。いやあ、疲れた、っス」
肩をガクリと落として殊更疲れたアピールをする皇慈に、祇鏖はくしゃりと頭を撫でた。
「なら、これからラーメンでも食って帰るか」
「マジ、っスか! ごちですッ!!」
現金な皇慈に苦笑しながら、男達は締めのラーメンを食べに行くのであった。
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