第33話 異世界名探偵アガサ

俺は死んだ??


この女は事あるごとに俺が死んだと言うが、俺は死んではいない。

ここにこうやって生きているんだからな。


「まだ犯人を告げてないのにロープレイベントは終了?? な、何故だ!?」


「ロープレイベントってなんでしょう?

貴方はアンドロメダ星雲の宇宙鉄道の中で殺された様ですけど?」


「殺された?ゲームオーバーって事か?」


「ゲームオーバーといえばゲームオーバーですね。不用意にそこの宇宙を支配する人間の秘密をバラさないほうがいいですよ」


「犯人を告げてないのにゲームオーバーって厳しすぎないか?」


「厳しいですけど現実です。殺されましたし」


「くっそ〜〜!!もうちょっとで俺の推理で事件を解決出来たはずなのに!!」


「そんなに心残りなんですね。じゃあ私に犯人を言ってください。聞いてあげますよ」


「いや、犯人に言わないと意味ないんだよ!!」


「ではロープレとやらの続きです。私を犯人だと思って言ってください」


「わ、わかった。このまま決め台詞を言わないのは精神衛生的にも良くないしな」


俺は深呼吸して一拍置く。(※深呼吸したつもりになっている。体は無い)

よし!!


「魂は知っている!犯人はエメラル、林蛍、銀郎の3人だ!!」


ふ〜〜!!犯人に言えなかったのは残念だが、少し気が晴れた気がする。


「あれ?刺し傷は4つあったんですよ?3人で良いのですか?」


「マーテルは殺しはやってない。やる理由がないからな。銀郎達に協力しただけだ。

胸の傷痕の写真を見たが、胸の4つの刺し傷のうち2つは右利きの人間が刺している。最後にナイフが突き立てられた傷を含む2つは左利きの特徴があった。

4人の中で左利きは銀郎だけだ。そのあたりは食事の時に確認している。

銀郎は最後にもう一度ナイフを突き立てた時に「母親の分だ」とでも言ったのではないか?」


「すごい!見てたかのようです!!当たってますよ。まあ、マーテルはアドラーを殺さなかった代わりに貴方を一瞬で殺しましたけどね」


「マーテルの秘密を暴いたらゲームオーバーとか、地雷がクソゲー並だな。

マーテルとは一体何者なんだ?」


「助言の鏡に聞いてないのかしら?ラーモータル人はいわゆるヴァンパイアの真祖と言える存在よ。ラーモータル星は1200年に一度ティエラに接近する星で、そこから惑星ティエラにヴァンパイアが誕生したの」


「真祖??よくわからんがまあいい」


「それで、どうやってデサラーの部屋に3人が入れたのです?」


「それは簡単だった。

いい女が抱けると思えばデサラーは警戒もせずエメラルを招き入れた。

奴は殺し屋が一等の客にいるとは本心では思ってなかったのだろう。実際にマフィアの殺し屋は居なかったしな。

俺は怪しい奴がいた時の保険程度だったのではないだろうか?

エメラルはデサラーの部屋に2回入っている。最初は簡単に近づけるのか試したのだ。そして簡単に部屋に入れる事を確認した後に、林蛍、銀郎と共謀してアリバイ作りと殺害計画を立てたってわけだ。

2回目に入った時にはナイフを隠し持って入ったのだろう。ベッドの上で隠し持っていたナイフで心臓をひと突きにした。その後で林蛍と銀郎と招き入れ2人にもナイフを突き刺す機会を与えた。そう推理する」


「凄いです!ほぼ正解ですね。

実際は酒に睡眠薬を盛って動きを封じてから3人で殺したんですけどね。鑑識が居ないので睡眠薬は検査できなかったのです」


「そう言うシナリオか!!俺とした事がそこを見落とすとは!」


「3人がこの列車での殺害を考えたのはいつだと思います?」


「偶然乗り合わせて・・では無いのか?」


「アルアラメインを経由してアンドロメダに行く宇宙鉄道は1ヶ月に一本程度です。運良くデサラーはその列車に乗れたと思いますか?3人も偶然?」


「偶然にしては出来過ぎだとは思ったが」


「宇宙鉄道666がやってくる時に合わせてエメラルが昔の知り合いのマフィアをけしかけて、この列車にデサラーが乗り込むようにしたのが真相ですね。エメラルと林蛍はアドラーを追う仲間として行動を共にしていました」


「と言う事は3人は初めからデセラーを殺すために乗り込んだのか?」


「いえ、銀郎とマーテルだけは偶然なのですよ」


「そう言う事か!そう言われれば筋が通っているな。真相が知れて気分がスッキリしたぞ!!天使さんありがとうな!」


「転生をこれだけ楽しむ人は珍しいですね。ちょっと嬉しくなっちゃいました。まあ死んで帰って来てますけど」


「こんな面白いロープレはどんどんチャレンジしたいんだが、いいのか?」


「もちろん。転生者が一年以内に亡くなった場合は再度転生させるルールですから」


「次はどんなシナリオが待っているのか、ワクワクだな!」


「ロープレ??では無いんですけど、まあ面倒臭いからそう言う事にしておきましょうか。次はどんなアイテムが欲しいですか?プレゼントしちゃいますよ?」


「いや、助言の鏡が超気に入った!助言の鏡があればそれでいい」


「そう言えば、助言の鏡使いまくりでしたね。助言どころか鏡が全て暴いた気がしますけど、名探偵として恥ずかしくないのですか?」


「謎を解くのが探偵だからな。そのために有用なものは何でも使うのが俺の主義だ。必要なのは助言の鏡だ!」


「はいはい。じゃあ新しい人生を楽しんでくださいね」


目の前が真っ白になる。




********






「また殺されたんですか?今回はまだ3日ですよ」


「???俺は・・死んでないのか?・・生きている?」


「死んだから戻って来たんですけど??」


「ああ!また天使の姉ちゃんか。どうして俺はここに?」


「あなたは死んだんですよ。どうやって死んだかわかります?」


「いやあ、宮本武蔵とか名乗る変わった女と旅をしていて、暗殺事件に遭遇したんだが、鏡の力で犯人を突き止めてラッキー-スチールとか言うマフィアのボスが首謀者だと言ったら、黒い車がやって来て銃で撃たれたんだ。

それでゲームオーバーってことか。身体中蜂の巣にされた時は流石にビビったな」


「痛くなかったんですか?」


「痛いというかドドドってすごい衝撃と激痛みたいなものが身体を通り抜けた感じだな。その次の瞬間白い世界にいて・・・白いモヤが晴れるとここにいる。どんな仕組みなんだ?一体」


「それは企業秘密ですね。宮本武蔵を名乗る女?また変わった世界にいったんですね」


「宮本武蔵って男だろ?あの女は同姓同名なのか、勝手にそう名乗っているだけなのかはわからないが、同じ日の本出身って事で意気投合したんだ。

しかし宮本武蔵を名乗るだけはあってやたら剣の腕がたった。

マシンガンを持って襲って来たマフィアを斬りまくってたが、先に俺がゲームオーバーだ」


「なんだか恐ろしい異世界に行ったのですね。そんな恐ろしい世界に行くなら、助言の鏡より武器の方がいいのかも知れないわよ」


「俺の武器は推理だ。助言の鏡さえあればそれでいい」


「助言の鏡の虜ですねぇ」


「ああ!助言の鏡の婆さんを見ないと俺は生きていけない体になっちまったようだ。よろしく頼む!!」


「わかりました。じゃあ、新しい人生を楽しんでくださいね」


目の前が真っ白になる。

また新たなロープレの世界へ俺は旅立つのだ!



******異世界 名探偵アガサ(亜我左)第一部 完*******

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