第11話 聖槍?グングンヌク

「おーー!!神よありがとうございます」

「女神様は預言の通り勇者を遣わしてくださいましたな」

「神の御心に感謝いたします」


俺はどうやらまた召喚とか言うものに巻き込まれたようだ。


まあ、そうじゃなきゃ、あの使徒とかいう男を這いつくばらせて、雑魚は自分だと思い知らせてやれねえしな!召喚大歓迎だぜ。


しかし、前回出てきた場所とは趣が違う。

目の前にいるキリスト教の聖職者のような衣装〜金の刺繍がされた白い衣装〜を羽織る奴らの背後には巨大な女性の像が立っていて手を差し伸べている。


建物も前は大理石のような石が使われていたが、ここは白い漆喰で整えられた大広間で天井が異様に高く、女神の像の後ろにあるステンドグラスからは光が差し込んでいる。


「ここは何処だ?」


「ここはこのインテグリダッド聖王国の王城です。

あなたは女神様のご意思により遣わされた勇者様でいらっしゃいますね?」


中央に立つ聖職者のような30代の女が話を切り出した。


「あ??勇者? ああ、まあ俺は勇者だ」


「俺様は聖槍のグングンヌクだ!!女をよこせ!!」


「ゆ、勇者様!?今何と??」


「なんだ?!!俺は何も言ってないぜ!?」


「だから聖槍のグングンヌク様がお前の代わりに言ってやってるんじゃないかよ!相棒!」


聖職者達の視線が俺の右手にある槍に集まる。


「そのグロテスクな槍が聖槍•••」


俺の視線も自然と手に持つ槍に向かうが、そこにある槍はなんとも変な槍だった。


先端は大きく鋭利な黒い金属の歯がついているが、その歯がつけられた棒の先には黒い毛がモジャモジャと生えており、何より棒の表面は人間の皮膚のようで、血管のようなものが浮いているのもわかる。

触り心地もまるで生物の肌のようにグニグニしているが、実際は芯があるような硬い棒なのだ。


俺は槍を少し持ち上げて、持ち手の槍の柄の部分を見てみると、まるで男性のアソコのような形状をしていて先端には割れ目のようなものまである。


「何じゃこりゃ〜!?」


俺は思わず槍を手放してしまった。


「何じゃとはどういう了見だ?相棒。俺様は聖槍だぞ。刺し殺されたいのか?」


そう槍から声が聞こえると、槍は宙に浮き上がり、刃先を俺に向ける。


「おお〜〜!!!」


聖職者たちからどよめきが起こる。


「女神が魔王を殺すことが出来る聖なる武器を持つ勇者を遣わすとの預言の通りです!

女神様!!ありがとうございます!」


「そうだぜ俺が聖槍のグングンヌクだ!!崇め奉れ!!」


そう言ってぐるっと水平に一回転する聖槍


どうやら意思がある聖槍というのは喋って自分で移動できる槍だったらしい。

自分で移動するから自動追尾ってか。そりゃ手元にも戻ってくるわな。


これって俺はいるのか??俺がつえぇわけじゃないような•••。


「勇者様!!その力でどうか魔族の国を打ち滅ぼしてください!」


「•••ああ。だが条件がある」


「女をよこしやがれ〜〜!!」


そう言うと聖槍グングンヌクが水平に一回転半し今度は、聖職者達の方に刃を向ける。


「おい!勝手に喋るな!!それは俺のセリフだろうが!!」


「お、女ですか?清純な女神様の使徒様が女をよこせ!? その女性を如何様にするのでしょうか?」


この中で1番偉いと思われる中央の女性聖職者が怪訝な顔をする。


「俺の下の面倒を見るに決まってるだろう」

「俺様に女を貫かせろ!!贄をよこせ!」


「おい!槍如きが勝手に喋るな!!」

「なんだと?相棒でも言って良いことと悪いことがあるぜ!」


「下の面倒を••••。女神の使徒である勇者様が••••。」


「そうだ!俺様には女が必要なのだ。はやくよこせ。お前を貫いてやろうか?」


グングンヌクがグルグル回り始める


「わかりました。では娼館に行くための金貨をお渡ししましょう」


「娼館かよ。シケた国だなおい。金はたんまりくれるんだろうな」

「娼館でもなんでもいいぜ!ウヒョー!!久しぶりの女だな」


「ではその前に、勇者様と魔王討伐を共に行うメンバーをご紹介いたします。

2人をここへ」


そう中央の女性聖職者が告げると、赤いローブに黒いとんがり帽子を被り、手には木で造られた杖を持つ若い女と、聖職者の格好をした若い男性がやってきた。


んん!?この2人見覚えが!?


こ、コイツら!俺を殺した悪魔の使徒の仲間じゃねぇか!!


「おい!お前ら!!あんときは世話になったな!!お礼はたっぷりさせてもらうぜ!」


「どういうことです?!お知り合いなのですか??」


女性聖職者が驚いて事情を聞く。


「お世話をした覚えはありませんけど?」

赤いローブを羽織った女が答える。


「お前が覚えてなくても俺が覚えてるんだよ!!」


「この方が勇者ですか??随分頭の弱そうな方ですけど大丈夫でしょうか?」


赤いローブの女は素直に感想を話すタイプのようだ。


「なんだとこらあ!!」


「勇者様ちょっと落ち着いてください。ロホミン様もお会いした事はないようですし、これから一緒に魔王を討伐するお仲間ですよ」


まあ、話し方は気にくわねぇが、よく考えたら俺は前回この世界に来るより前の時間に来たと言う事かもしれねぇ。

会ってない可能性の方が高そうだ。


なんなんだ転生って!?


「その生意気な女を俺様に貫かせろ!!」

「お前は黙っとけ!!」


物騒な事を言う槍だぜ。女は殺すもんじゃねぇ。可愛がるもんだろうが。


「そのグロテスクな槍。喋るんですか!?どういう魔法理論でしょうか?気になりますねぇ!!」


赤いローブの女はグングンヌクの脅しに平然と答える。


「女性を槍で貫いてはダメですよ。勇者様でも殺人は死刑に致しますので!」


「貫くっても殺したりしないぜ!!気持ち良い思いをさせてやるってんだ!!ヘヘヘッ」


グングンヌクは何処を貫くつもりなんだ?


「ではお二人をご紹介しますね。赤いローブの方は大魔法使いのロホミン様。戦術級魔法である爆炎魔法の使い手です。

隣の男性は我が聖王国の誇る聖職者、プロテ司祭です。彼は治療魔法と防御魔法の使い手です」


「こんな奴らいなくても俺とグングンヌクがあれば魔王なんぞ屁でもないぜ。だがそこのロホミンはいい女だからついてくるのを許可してやろう」


「いくらあなたが勇者でもプロテ司祭がいなくては魔族の猛攻に耐えきれませんよ。3人で魔王討伐は女神様のご意志です」


「わかったわかった。コイツら連れて魔王は討伐してやるから早く娼館にいく金をよこせ。

それと魔王討伐したら一生遊んで暮らせるだけの金をよこせよ」


「俺様を早く娼館に行かせろ〜〜」


勇者の冒険が今はじまる。



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