第7話 新しい人生

俺はテレビを見ていた。

俺の周りには精神を患った人達が沢山いて、ラーメンの様なものをガッツきながら一緒にテレビを見ている。


この世界のテレビは大きなガラス板の様なもので、そこに流れているニュースでは怪奇事件の結末を伝えていた。


無罪!!!

と日本語では無い文字で書かれた布を持って弁護士事務所の関係者だろう人物が裁判所から出てくる映像だ。


「さて、今日1番のニュースはこれですね。

ニハン国中を震撼させた連続ミイラ事件の被告が無罪となりました。その大きな理由ですが、凶器が認められない事が最大の要因の様ですね」


「そうですね。杖で人をミイラにしたと言うのは科学的ではありませんし、再現性もありませんでした。それでは裁判所も凶器と認定することはできないという事でしょう。それと被告は自分が誰かもわからない記憶喪失だと言うのも大きな理由ですね。

記憶喪失の人間を凶器も不明なまま起訴した検察に問題があったのでは無いでしょうか」


「連続ミイラ事件。世間を騒がせたこの異様な事件はいったいなんだったのでしょう。では事件を振り返って見たいと思います」


テレビでは解説者と元裁判官だと言うコメンテーターがそんな話をしている。


そう。俺は生き延びていた。

ビルから飛び降りた俺は街路樹にぶつかる前に咄嗟に両手で杖を持ち身を守ってしまったのだ。

そして街路樹の枝にぶち当たったあと落ちた場所が車の上だった事も功を奏した様だ。


車の屋根は大きく凹んだものの俺は即死を免れた。その後すぐの事はよく覚えてないのだが、誰かが俺の持つ杖に触ったのだろう。そいつは干からびて、代わりに俺は意識を取り戻した。

いや、ビルから飛び降りたとは思えないほど回復してしまった。


そして、すぐに警察に捕まり1年以上かけて取り調べと裁判が行われたが、今日判決が降り俺は無罪となった。


今は精神病院に一時預かりとなっている。

俺はこの世界の事を何も知らない。

記憶喪失者として病院に収容されたわけだが、これであの天使の格好をした疫病神と二度と会う事はないだろう。


俺は一年を生き延びたのだ!!ここから俺の新しい人生が始まる!




ーーーーーーーーーー


「気がついたかしら?

私は女神アルデ様の使徒カリンです。貴方はB 15374世界の生を終え、魂の状態になっています」


「なんだテメェ!!気持ち悪い格好しやがって!!俺がなんだって!?」


「あなたは魂の状態ですと言ったのですが耳が遠いのですか?」


「魂!?訳のわからない事言いやがって!しばかれたいのか!このアマ!!」


「フフフッ 野蛮な人ですねぇ。これは楽しみな人材が入って来ました」


「なんだとコラあ!!」


俺はこのふざけた格好をしているアマに殺気を覚え、衝動で拳を振るう。こう言う女は暴力で支配するのに限るのだ。

俺はそうやって生きて来た!


!!?

なんだ!!俺の拳が無い!!俺の腕はどこに行ったんだ!!


「何を考えているんですか?

私を殴ろうとか思っちゃってます!?

フフフッ。ちゃんちゃらおかしい人ですねぇ。魂ごときがどうやって天使を殴るというのですか?」


「何笑ってやがるんだ!!このアマが!!く、薬でも盛りやがったのか?俺を自由にしろ!!」


「だからあなたは魂なんですよ。まあいいですよ。今からあなたを自由にします。


貴方は生前、暴行にレイプと殺人まで行った鬼畜ですが、一つだけとても良い行いをしましたので、アルデ様の作ったルールにより記憶を持ったまま新しい生を与える事になりました。

私たちはそれを転生と呼びます。

面倒臭いので説明はこの辺で。


それでは新しい人生を謳歌してくださいね。

行ってらっしゃい」


「転生?なんじゃそりゃ!舐めやが•••」


目の前が真っ白になる。


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