第6話 君は生き延びる事が出来るか

日本とよく似た世界、前回と同じ場所に転生したが、先ほどとは違う騒がしさがあった。


警察官らしき人達が慌てて向かう場所にその元凶があるのだろう。


この騒ぎ。気になる。


そこにはもしかしたら前回の俺がいるのかも知れない。転生の時間軸が被っている可能性がある。


近づくのは危険だと脳が危険信号を発しているが、確認したいと言う好奇心が勝ってしまった。


見るだけなら。

そう思い、走っていく警察官の後を追いかけると、前に来たアーケードの近くで男が何やら叫んでいるのが聞こえる。


警察官がその叫ぶ男を取り囲んでいた。


「俺はこんなことしたくないんだ〜。」


「武器を捨てろ!!君は何をやっているのかわかっているのか!!」


近づくとその男は剣を大きく振り上げて警察官を威嚇しているように見える。


剣を振り上げるその姿は先ほどの自分と被るのだが、服装は俺とは違った。

剣を振り回す男は警察官の服を着ていたのだ。


警察官が警察官に取り囲まれている?


そして男が持つ剣には見覚えがある。

あの、狂った聖剣と特徴が完全に同じで、剣を構える男の言動もそれを裏付けている。


聖剣エルクスを何故、警察官が持っている??


もしかして今回転生した時間は、俺が前回事件を起こした直後なのかも知れない。


俺が警官に撃たれて気を失った後に残された聖剣に警察官が触ったとすれば!?


狂った聖剣に腕を乗っ取られて俺と同じ運命を辿る事になるだろう。


俺のせいか??

少し罪悪感を感じるが、よく考えれば俺も狂った剣の被害者だった。


ここから離れよう。

こんなところにいたら俺はトラブルに巻き込まれて、また死んでしまうかも知れない。


俺はその場を離れようと踵を返したその時に後ろからきた警官と肩がぶつかってしまった。

正確にはぶつかったのは肩だけでは無い。手に持っていた杖ももちろん当たった。


「ウガガ、ガ〜〜」


ぶつかった警官がうめき声をあげる。


「えっ?! だ、大丈夫ですか?」


警官の顔から正気が消えて倒れると、その顔はどんどんひしゃげて干からびていく。


「ええええ!!!!」


近くにいた警官がこちらを振り向いて、悍ましいものを見る目をした。


「ど、どうしたんだ!!!」


声を上げてその警官が倒れた警官に近寄るが、その体はすでに干からびてミイラのようになっている。


まずい!!俺はたまらず走り出す。


「俺じゃないんだ!!」


「仲間がやられたぞ!!追うんだ!!」


「奴を捕まえろ!!」


やっぱり近寄ったらダメだったんだ!!

俺は必死に走るが、既に集まって来ていた警察官の数は多い。


何度か捕まりそうになり、そのたびに警官を杖で撃退した。


いや撃退といえば聞こえがいいが、要するにミイラにしたのだ。

警官や邪魔をする通行人をミイラにするたびに俺は力が漲るのを感じる。


体力の無い俺でもこれを続けるといつまでも走り続けられるだろう。


しかし、とうとう銃を持つ警官に包囲された俺はたまらず近くの古いビルに飛び込み非常階段を駆け上がる。


失敗だった。ビルの上には逃げ道などないのだ。


今、俺はビルの屋上のフェンスの上に登っている。

その後ろを警官が銃を構えてズラリと取り囲む。


「もう逃げ場はないぞ!大人しくこっちに来い!」


もう遅い。

ここまで逃げるうちに警官を何人も干涸び殺しているのだ。


もう痛いの苦しいのは嫌だが、殺人鬼として刑務所で暮らすのもいやだ。


即死がいい。


ふっと力が抜け、マンションの屋上から体が落下する。

この浮遊感に何故が安らぎを感じる。すぐに楽になると思えば何も怖いものは無くなっていっていた。

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