第20話 ミスカトリック学園
私は煉瓦造りの赤茶色の壁が特徴的な西洋の街並みの中にいた。
そこは多くの人が石畳の道の上を行き交
う場所だった。
皆、映画の中で見るような少し古い時代の西洋風の服装をしている。
ここは何処だろう?もしかするとヨーロッパに転生したのだろうか?
頭を巡らせていると、一台の馬車が街角から現れ私の方に向かって走ってくるのが見える。
これは馬車じゃない!?
馬車だと思ったけど、引いているのは馬ではない。恐竜のような大型の爬虫類が荷台を引いているのだ。
何!?これ?これが魔物って奴?
どうやら私の知るヨーロッパでは無いようだ。やっぱりここは異世界。
「すみません。この辺りに学園があるって聞いたのだけど?どこにあるかご存知ですか?」
とりあえず学園に行かなきゃ始まらないよね。私は道を歩くカッコいいおじさんに声をかけて聞いてみた。
「ミスカトリック学園だね。この街が学園都市なんて言われているのはミスカトリック学園があるからだよ。全国から魔術師の卵が集まってくる。あんた学園に入るのかい?」
「ま、まあ。そのつもりです」
「そうかい。ここには異国から学びに来る人も多いからね。で、何の魔術が使えるんだい?」
「魔術? あ、ああ魔物の召喚が出来るわよ」
私は右手に持つ杖を持ち上げた。
「召喚が出来るのかい!それは大したもんだ。その立派な杖は如何にも魔術師だけど、その服は変わってるねぇ」
あれ?天使は魔術は召喚とテイムしかないと言ってたけど、召喚は凄い魔術なのだろうか?
「魔術って他にどんな事ができるんですか?」
「魔物の召喚は1番レベルが高い魔術だな。魔物を操る魔術テイムが次に重宝される。
今走って行った魔獣車などはその魔術が使われてるんだ。庶民には縁のない話だけどな」
「他はどんな魔術があるのですか?」
「ああ、金属を錬成する魔術は錬金術と呼ばれて昔はとても貴重だったんだが、今は効率が悪いってんで全く人気がないな。
あとは霊を生き物に憑依させる魔術や、死体に霊を憑依させる魔術なんてのもあるが、魔物をテイムする方が便利だからあまり価値がない」
れ、霊って?あの霊ですよね?
霊を憑依させるとか怖すぎるんですけど。
良かった魔物の召喚で。
「ミスカトリック学園に入学するには、魔術が使えるだけで良いんですか?」
「そう聞くけどな。このメインストリートをずっとまっすぐ行くとおっきい建物があるからすぐわかるさ。いっぺん学園で聞いてみな」
私はおじさんに礼を行って学園に行く事にした。
大通りの突き当たりにまで行くと、確かにミスカトリック学園はあった。
ここにイケメンが集っているのね。
レンガ造りの大きな建物の前には噴水があり、綺麗な赤や黄色の花が咲き誇っている。
だけど、その庭に入るためには、大きな門を越えなければならない、
私は門の前に立つ警備員に声をかけてみる。
「すみません。この学園に入学したいのですが」
「入学希望者ですか。推薦状はお持ちです?」
「推薦状?」
「推薦状がなければ入学のための試験を受けることは出来ませんよ」
「推薦状ってどうやってもらえば良いのでしょう?」
「領主様か教会が学園に推薦するようになっています。要するに金が必要って事だろうね」
金を積んで推薦してもらうって事?
富裕層しか来れないよ。私はここの通貨も持ってないのにどうしよう。
「私は見ての通りの異国から来たから推薦状は無いの。でも魔物の召喚には自信があるわ」
「変な格好してるとは思ったけど、やっぱり異国の人か。魔物の召喚ができるんだったら一度校長に聞いてみましょう。ここで待っててください」
—————-
結局、異国の召喚魔術に興味を持った学園長が会ってくれる事になった。
学園長はとても美人な40歳くらいの女性で、副学園長は50歳くらいの年齢の髭を生やしたダンディなおじさんだった。
美男美女だよ。これは期待できるかも!
「ニッポンという国は聞いた事がありませんね。確かに顔つきといいその衣装といい、私の知らない異国の方のようですね。ニッポンという国の召喚魔術ではどんな魔物が召喚されるのです?」
「に、日本特有の魔物かな?」
天使さんに何が召喚されるのか聞いてなかったよ。魔物が召喚出来るとしか言われてないし。
「二足ドラグーンやユニコーンなどとは違うのかしら?もっと低位ならホワイトウルフやリザードフォックス、ワイズスネークなどが一般的だけど」
「ち、違うと思います」
「そう。それはたのしみね!わかったわ。試験を許可するわ。今から始めましょう」
結局、問題なく今から試験を受ける事になった。
とりあえず第一関門突破ね!
運動場のような広い練習場に連れてこられると、建物の中から生徒らしき人影がわらわらと出てくる。
中には20代も僅かにいるけど、殆どは高校生くらい。でも私は年齢は気にしないの。
よく見ると若いけど皆美男美女揃いだ。凄いよ!
美女は見る分には良いんだけど、これだけいると私なんて見向きもされないかもしれない•••。
ちょっと焦る。
この学園は異常なくらい美男美女が揃っている。さすが天使さんが調べてくれただけの事はある。
「ニッポンの魔物。
どんな魔物が召喚されるのかワクワクしますね」
学園長が副学園長に声をかける。
「全くですな。楽しみで仕方がありません」
「学園長。私が控えております。
どんな魔物が出てこようが、私のS級テイム魔術がある限り大丈夫ですので安心してください」
若き日のブラッドピットのような顔の30前後の教師が学園長に声をかけていた。
ブラピがいる!!
やっぱり私年上が好きかも!超好み!!
それに生徒と教師の恋なんて燃えるわね!!
同じイケメンでも高校生には大人の魅力が欠けている気がするしね。
恋のターゲットを見つけた事に、私の心は躍ってしまう。彼女はいるのだろうか?気になるなあ。
「では、テイム魔術が使える生徒は現れた魔物を競ってテイムするように。
ただしキャパが一杯の生徒はテイムしてはいけないぞ。魔物の暴走は恥だからな」
ブラピ先生が生徒に指示をだしている。
その姿もかっこいい!
「では召喚始めてください」
学園長が私に試験開始を告げた。
「召喚」
私はそう呟いて杖を振る。
すると10mほど先に黒い2-3mほどの球体が突如現れる。
「黒い球体だと!?なんだこれは?」
ブラピ先生が驚いた声を上げる。
少しして、その球体が縮小して消えると、そこには全身濃緑色の鱗に覆われた奇妙な人型の生き物が現れた。
その顔はカエルのように醜く、首はなくエラのようなものがある。
指には水かきのようなものがついていて、要するにとても気持ちの悪い生き物だった。
その魚と人間が合わさったような生き物は、そのギョロッとした目で周りをキョロキョロと見ている。
「こ、こいつはなんだ!?人型!? みんなテイム始め!!」
ブラピ先生が命じると、
「テイム」「テイム」「テイム」「テイム」
と、美男美女のテイム持ち生徒が叫び始める。
なんかちょっと嫌だ。
イケメンが狂ったように「テイム」と叫ぶのは見たくなかったよ。
少しして魚人間が光り輝く。
「よっしゃ!魚人間ゲットだぜ!!!」
赤い髪をしたイケメン男子生徒が大声を上げる。
「よし!やったな。お前がこの奇妙な魔物を責任もって管理するように。
リンさんと言ったかな?この魔物は何と言う魔物なんだい?」
ブラピ先生が私に魔物の名前を聞いてくるが、こんな気持ちの悪い生き物は見たことも聞いたこのもない。
「かっぱ??」
頭の皿はないのだが、何となく河童が一番近いのではないかとそう名付けてしまった。
「カッパと言うのか。ニホンと言う国では変わった魔物を使役しているのだな。しかし新しい魔物はこの国では50年ぶりだ。本当にすごい。君には期待しているよリン君!」
ブラピのようなイケメンの先生は白い歯を私に見せて微笑んだ。
—————
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