第19話 イケメンは必要

「愛しのクルーズとはうまく行かなかったんですね」


目の前に現れた黄金の羽を背負った女が話しかけてくる。


私はコウモリの化け物に変わったクルーズの事でまだ頭がいっぱいだ。ついさっき起こった出来事なのだから。


「クルーズが化け物になっちゃったよ!」


「死んだ第一声がそれですか?」


何だか目の前の女が太々しく感じる。


「だって、クルーズがコウモリの化け物に!!いやよ!私は認めない!」


そもそもこの天使の女が元凶ではないだろうか?そう思ってしまう。


「あれは、あなたのくれた指輪のせいよ!

あの指輪は人を化け物にする指輪なんだ!

酷い!クルーズを返して!」


「えっ?私のせいなのですか?

あの指輪は対象が性的に魅了されてしまう指輪なんですけど。化け物になったのではなく、ヴァンパイアは元から化け物なんですよ」


「嘘よ!あの指輪のせいだわ」


「私は嘘などついてません。でも面倒臭いのでそう言う事にしておきますか。で、どうします?

またヴァンパイアのところに行って殺されるのはダメですよ。もうここに帰ってきて欲しくないので」


「クルーズじゃなきゃ嫌だ」


「それは無しです。愛しのクルーズは化け物なんですから諦めて下さい。別の要望なら聞いてあげます。私は女の子には優しいんです♪」


「絶対にダメなの?」


「絶対ダメです」


「じゃ、じゃあイケメンの王子様がいる学園にして。ヒロイン役でお願い!」


「ヒロイン役とかないんですけど・・。転生するのは貴方自身ですので」


「じゃあイケメンが一杯いる学園でいい」


「転生する先の世界を指定するのも、特別なんですよ。イケメンが一杯いる学園とかそんな指定は出来ません」


「じゃあクルーズの所に戻して!!」


「面倒臭いな。

ハイハイ。イケメンの学園ね。世の中には凄い数の異世界があるのよ。その中に希望の場所があるかデータベースを見てくるからちょっと待ってて」


女の天使は後ろに振り向き歩き始めると、雲の中に消えていった。


ギー バタン!


ドアが開いて閉じたような音が聞こえる。雲の奥に扉があるのだろうか?


1時間ほど経ったころ・・(雲に囲まれたような世界なので時間はよくわからないけど)


ギー バタン!


またドアが開いて閉じたような音がして、黄金の羽を背に生やした天使の女が雲の中から現れた。


「はー。疲れました」

女の天使は明らかに疲労を感じさせる顔をしてそう呟く。


「ありましたよ。イケメンが沢山いる学園が」


「えっ!本当に??やっぱり貴方は天使なの?」


「私は天使だと言ってるじゃないですか。世界を指定するなんていつもはしないんですからね」


「やった!!憧れのイケメン学園生活だ!」


「いえ、貴方は学園生でも何でもないただの転生者ですよ」


「何でよ!それじゃあ意味がないじゃない」


「そうですね貴方は学園に入ることも出来ないでしょうね。普通なら」


「普通ならって事は、学園に入る方法があるのね!?それを早く言ってよ」


「その学園は魔術が使える人しか入れない学園らしいわ。だからあなたには魔物を召喚できる召喚魔法の杖をプレゼントしてあげる」


「魔物を召喚!?そんな魔術はいやだよ!」


「でもね。その学園の生徒が使える魔術ってのが魔物の召喚、魔物のテイムのいずれからしいの。より強大な魔物を召喚できる人が重宝されるそうなんだけど」


「強力な魔物を召喚出来たらモテる?」

「モテモテじゃないかしら」


「魔物が出てきても私は殺されない?」


「それは大丈夫。召喚する場合はテイム魔術が使える人が一緒にいるだろうしね。最悪でも魔術教師がいるから大丈夫だと思うわよ」


「そ、そう。じゃあ強力な魔物召喚出来る杖を用意してよ」


「そうこなくっちゃ、小一時間も調べてあげたのに、違うところが良いって言われたら荒野に転生させちゃうところだわ」


「私はイケメンがいるんなら頑張るし」


ドラゴンとか呼び出したりしても大丈夫なのだろうか?火を吹かれて焼け死んだりしない??

ちょっと怖いけどイケメンのために頑張るしかないわよね。


「杖があるから、頑張らなくてもいいのよ」


「私は頑張るの!クルーズより良い男がいますように」


「フフフッ じゃあ行ってらっしゃい。もう戻ってこないでね♪」



目の前が真っ白になる。



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