第18話 魅了の指輪
「やめて〜!!いや〜!!」
気持ちの悪い太ったおじさんに押し倒され服を捲り上げられた私は力一杯抵抗するが、私のか細い腕ではおじさんを止める事は出来ない。
おじさんの手が私の乳房に触れる。
ほんとうに嫌だ!!
その手を押し払おうとおじさんの腕を掴む。
でもダメだ。動かない。
嫌だ!!!
えっ!!?
何か光ってる!?
おじさんの腕を持つ私の手の指に赤く光る物があった。
指輪!?指輪が光っている!?
この指輪は天使がくれた【魅了の指輪】だ!指輪が光ってるという事はもしかてこの状況はこの指輪のせい!?
私は乳房を弄るおじさんの腕から両手を離し、左手で右手の指輪を外してみる。
!!??
すると突然男の動きが止まった。
「えっ?!私は何を!?」
男は呆然としてそう呟く。
「やめて〜!!!」
私は男の止まった腕をめいいっぱい突き払う。
「え!!!?
わ、私はなんて事を!!すみませんお嬢さん!こんな事をするつもりは無かったのです!!何故か急にあなたに取り憑かれたみたいに•••本当にすみません!!」
男は私の体から離れると土下座を始めた。
「そんな人だとは思いませんでした!!
どうしてくれるんですか!?」
私は乱れた服を治しつつ、ちょっと強気に出てみる。本当に怒っているのだ。
「あ、あの、本当にすみません!!私は妻も子供もいます。ここに10ゼニーあります。これで許してはくれませんか?」
「わかったわ。それで許してあげる。それとちゃんとクルーズの屋敷に連れて行って」
「わかりました」
そういうと男は銀貨を10枚くれた。
ーーーーーー
夕暮れどきにクルーズの屋敷についた私は前のように鎧戸についた鉄の輪でノックをする。
しばらくして召使であろう青い瞳のおじさまが顔を出した。
「どちら様でしょう。えっ!?あなたは!!」
おじさまが私を見て驚きの声を上げたのは、死んだはずの私がまた現れたからかも知れない。
「すみません。この屋敷に私の双子の姉がやってきたと思うのですが、ご存知ないでしょうか?」
「双子の姉?? ああ!!来られました。道に迷ったという事でここで一泊されて昨日の朝に出て行かれました」
「そ、そうですか。何処に行くと言っていましたか?」
「それは存じません。主でしたら存じているかも知れませんので、どうぞ中に入って応接室でお待ちください」
双子の妹作戦は成功して、私は応接室でクルーズに会える事になった。
おじさまに襲われてはいけないのでまだ指輪は付けてはいない。
この指輪があればクルーズは私に夢中になるはずだ。
さっきの馬車のおじさんの事を考えると、効果が強すぎて少し不安があるが、クルーズに襲われるなんてドキドキする。
この胸の高まりには私が抵抗できない。
しばらくして青い目をした若き日のトムクルーズ似のイケメン=クルーズが前と同じ赤と黒のゆったりしたローブを纏って現れた。
私の胸がどんどん高鳴っていく。早く襲われたい!
「初めまして。私はこの屋敷の主のクルーズと申します。
お姉さんを探しに来られたとか」
「初めまして。わたしはカリンと言います」
「確かにあなたは先日ここに来られた女性の双子の妹さんのようですね。お姉さんに似てとても素敵な方だ」
クルーズがまた私のことを素敵だと言ってくれた。超嬉しいんだけど!
「姉がここを出て何処に行ったか知りませんでしょうか?」
姉など作り話だけど、探してる振りをしなくっちゃ。
「申し訳無いのですが、わたしは何も聞いていません。
ですが、もう夕暮れで外は暗い。ここでご一泊されてからお姉さまを探されてはいかがでしょう?」
それが目的なのだからもちろん断る事はない。
それから私は前と同じように風呂に浸かり、身を清めてからクルーズと食事を取る。
食事も前と同じ肉の無い料理だった。
クルーズとの話はやっぱり楽しかった。とっても聞き上手で、つい夢中になって自分の事を話してしまう。
そして私の話を聞いているクルーズの綺麗な青い瞳に吸い込まれそうになる。
さて、いつ指輪をつけて魅了しようかな。
おじさまも素敵だが、2人に襲われては身が持たない。
ベッドで寝たふりも考えたが、おじさまが来る可能性もあるのだ。
クルーズと2人きりになる時間を作って指輪をはめる必要がある。
「少し酔っ払ってしまったの」
そう言うとクルーズは、
「それではお部屋にご案内させましょう」
と言って召使のおじさまを呼ぼうとするので、
「クルーズ様に部屋に運んで欲しいな」
と、甘い声でクルーズを誘ってみる。
「魅力的なあなたの体に触れると私が昂ってしまいますよ」
クルーズはそう言って結局おじさまを呼んでしまった。
いやいや、私に触って昂って欲しいんです!!
でもそれは言えない。
作戦失敗だ。クルーズは紳士なのだ。
嬉しい一面ではあるのだが、2人きりになる手段がなくなった。
仕方がない。寝たふり作戦しかない。
—————
深夜、眠気どころかこの身につけた指輪の効果が気になりドキドキしてクルーズが来るのを待っていた。
ギーー。
ドアが開く音が聞こえてランプを持った人が入ってくる。
わたしはドアとは反対方向を向いているので誰かはわからない。
「グッスリおねんねしてますよ。お坊ちゃん」
この声はおじさま!!どうやらクルーズと一緒らしい。2人に私は犯されてしまうのだろうか!?
「そうか。若い娘の血がまた飲めるとはな。フフフッ」
「私にもお残りをくださいよ」
「わかっている。私が満足したら残りはやる」
「ありがとうございます」
男の1人がベットに腰をかけて、私に掛かった毛布を引き剥がした。
そして耳元にその吐息があたる。
「アンッ」
私は思わず声を上げてしまった。
「ん??この女、変な匂いがする。この匂い•••なんだこの女は!!」
クルーズが何かに気がついたようだが、魅了はまだ効いていないようだ。
クルーズの動きが一瞬止まる。
そして、次には激しく動き出す。
「いや、この匂いは!良い匂いだ。良い匂いがするぞ!!」
あれ?様子が変わった。指輪の効果が出てきたのかな?
「うおー!!なんだこの淫美な匂いは!!たぎる!たぎるぞ〜〜!!」
ええ〜〜!!クルーズ!?こんなクルーズはいやだよ!!
クルーズの叫び声に私は思わず振り向いてしまった。
クルーズの素敵な顔がそこにある、はずだったのだが、その顔はどんどん黒い肌に変わり、さらには潰れたネズミのような顔に変わっていく。
えええーー!!クルーズどうしたの!!
「ク、クルーズ坊ちゃん!!どうしたのです!!」
後ろにいる青い瞳のおじさまも慌てた声をあげる。
クルーズはどんどん姿が変わっていき、服は破れ腕の下からは黒い翼のようなものが生える。
その姿はコウモリ人間のようだった。
「ハハハッこんなにたぎる女は初めてだ!!素晴らしい女じゃないか!!
では遠慮なく頂こう!!」
「きゃー!!!」
さっきまでクルーズだったはずのコウモリ人間は私にのしかかると首に鋭い牙を突き立ててきた。
抵抗する事はできなかった。私の血が吸われていく。
「いやー!! や、やめてぇ••」
血を吸われると私の力が抜けていく。
「ウガッ」
しかし次の瞬間、コウモリ人間は私の首筋から牙を抜くと変な声を上げた。
「ウガガガ、ギェ〜!!」
そして苦しみのたうち始める。
コウモリ人間が苦しんでいるのは聖女のネックレスの効果だろうか?
私は血を吸われて頭がぼーとしているが、どうやらもう血を吸われる事はないらしい。
「ガ〜ァ〜〜〜〜!!!」
コウモリ人間が一際大きな声を上げたかと思うとベットからずり落ちて倒れ込んだ。
「坊ちゃん!!」
召使のおじさまが驚愕の表情をして倒れ込んだコウモリ人間に近づく。
そして、次に私に怒りの表情を向けた。
「貴様〜〜!坊ちゃんに何をした!!そうか東の国の魔女だな!!性懲りもなくまた我々ヴァンパイアと戦うと言うのか!!」
「い、いや。違うの、これは••」
おじさまは腰に下げたステッキを抜くとそのカバーを外す。ステッキの下は細い剣になっているようだ。
「おのれぇ!!」
ふらふらと体を持ち上げた私におじさまの持つその剣が突き刺さる。
「待って••••」
剣は私の心臓を貫いていた。
私の胸から血が吹き出す••••
こんなはずじゃ無かったのに。
ベッドに血を撒き散らしながらわたしは意識を失った。
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