第17話 ヴァンパイア貴族
「好きだよ」
若かりしトムクルーズ似のイケメンが青い綺麗な瞳で私を見つめながら囁く。
「これからもずっと僕と一緒にいてほしい」
彼はそう耳元に囁いてから、私に口づけをする。
甘くねっとりした口づけ・・
そして、その後、彼の顔が下に移ってゆっくり愛撫が始まる・・・
あれ??
夢???
「気がつきましたか?」
私の目の前には何故か天使の羽を広げた女がいる。
「えっ!?ここは??」
「自分が死んだことに気づいてないのですか?」
「えっ?? クルーズは!?私はクルーズの屋敷で寝てたはず!」
クルーズではなく、何故か天使の女が目の前にいる。お呼びじゃないのよ。私はクルーズと幸せな生活を送るんだから!!
「寝てる時に血を吸われたのでしょうね。確認したら貴方の体は骨と皮だけのミイラになってましたし」
え〜〜!!
クルーズはやっぱりヴァンパイアだったって事?!
ヴァンパイアのいる世界って言ってたし美形=ヴァンパイアだからそうかもと期待していた部分もある。
でも、気に入った子はちょっと血を吸うだけで殺したりしないはず。(恋ヴァン設定)
「そんな!嘘!!クルーズが私を殺すわけない!!」
「でもここに魂として帰ってきてるでしょう?クルーズってそんな良い男だったのかしら?」
「超イケメンだったんだから。私の事を素敵な女性だって言ってくれたもん!」
「コロッと騙されちゃうのね。チョロ女はこれだから。でも、イケメンに血をチューチュー吸われて良かったですね」
「戻して!!クルーズの所に戻して!!」
「ワガママな子ですねぇ。そんな事したらまた血を吸われて死んで戻ってくるだけですよ。そんな面倒臭い事はしたくないわ」
「クルーズなら血を吸われたっていいの!
そうだ!血を吸われても死なない方法はないの!?」
「血を吸われても死なない方法なんてあるわけ・・・ない事も無いわね」
「あるのね!!その方法を教えて!」
「不死の指輪とかならあるわよ」
「不死の指輪??」
「不死の指輪は死んでもゾンビとして生き残る指輪よ。ゾンビだから肉体は腐っていきますけど意識はあるわ」
「そんなの嫌よ!!ちゃんと人間として生きたいもの」
「面倒臭い女ね。じゃあ聖女のネックレスはどう??貴方の体が聖なる力を持つようになるわよ。
その血は聖なる血になるから、その血を吸ったヴァンパイアはイチコロでしょうね」
「クルーズが死んじゃう!!だめよそれは!!」
「大丈夫よ。大間抜けなヴァンパイアでも無い限りその血を吸う前に気づくから。あたなが血を吸われる事はないわ」
「でも、それじゃあクルーズが私を必要としないんじゃ・・」
「それは貴方の魅力の話でしょ?? でも、いいわ。面倒臭いから魅了の指輪もプレゼントしてあげる」
クルーズを魅了できるって事!!?すごい!!最高じゃない!!
「それよ!!魅了の指輪!!それも頂戴!!」
「2つとも超レアアイテムなのよ?私に感謝しなさい」
「ありがとうね!天使のお姉さん!」
「仕方がないわね。
では早速。行ってらっしゃい〜」
目の前が真っ白になる。
—————
目の前に鬱蒼とした森が現れる。
前に転生した場所と同じに見えるけど、前回より少し森が明るい。
これなら危険なく屋敷に行けるはず。
記憶を辿りつつ私は森を進むが、1時間歩いてもいっこうに屋敷にたどりつかない。
これは迷ったのかも!?どうしよう!
クルーズに逢えるとウキウキ気分だったのに、段々と心が不安で満たされていく。
この森で野垂れ死ぬとか嫌だよ。
そう考えて歩いていると、森の中に一本の道が走っているのを見つけた。
そこには車輪が通った跡のようなものもある。よく見ると蹄の跡も残っているので馬車だろうか?
そうだ!馬車の跡を辿れば屋敷に行けるかもしれない!
でもどちらに行くのが正解なのかがわからないのだ。悩んでも結論が出ないので適当に右に行くことにした。
しばらく進んだところで前方から馬の足音とゴロゴロと車輪が回る音が聞こえてきた。
馬車だ!!馬車の人に聞いてみよう。
「すみません!!」
私は近づいてきた帆掛馬車に駆け寄って、太ったおじさんの御者に声をかける。
「どうしたのですか?こんなところで女性が1人なんて。何があったのです?」
おじさんは馬車を止めて返事をしてくれた。
「あの・・。森で道に迷ってしまって、この辺りでクルーズさんと言う方のお屋敷があるはずなんですけど、どちらに行けば良いかわかりますか?」
「お嬢さん、クルーズ様の屋敷に行くのかい!??」
「知ってるんですね??」
「あの貴族様の所にどんな目的で行くんです?」
「えっと、、。姉が屋敷に行って帰ってこないので、様子を見に」
「えっ?!それはまずい!!あそこはヴァンパイア貴族の屋敷です。何故屋敷にいったのですか!!」
「ヴァンパイア貴族??」
「ヴァンパイア貴族を知らないのですか?
その顔にその格好。この国の人ではないようですね。お嬢さんはどこから来たんです?」
「えーと。遠い東の国から旅をしています」
「旅??女だけで?」
「は、はい」
「お嬢さんは魔女の国から来たのです?」
「えっ?魔女の国??」
「いいえ魔女の国の女は魔法が使えるのでとても強いのです。女性だけの旅だと言うので魔女なのかと・・」
「私は魔女ではありません」
「そうでしたか。この国では王や貴族は皆人の血を吸うヴァンパイアという化け物です。
この国の人間はヴァンパイアに支配されているのです」
「ヴァンパイアが支配する国・・・」
「ヴァンパイアが支配するノスフェラ王国の住民は、2ヶ月に一回税とは別に生娘をその地の領主貴族に差し出すことになっています。
私たち人間には力がありません。生贄に選ばれれば娘を差し出すしかないのです」
「そんな••酷い」
生贄になった娘とその家族の悲しみは計り知れません」
「その生娘はどうなるのですか?」
「恐ろしいことに血を吸われて殺されます」
クルーズはやっぱり血を吸って私を殺したのだろうか?
「貴方のお姉さんは何故、貴族様の屋敷に行ったです?売られたのですか?若い女性はヴァンパイアに高く売れるといいますので」
「道に迷って屋敷に一泊させてもらう事になったんです」
「あの化け物の貴族の所に自分で行ったのですか!?でも貴方はなぜ生きてここにいるのです?」
「あ、・・・・・姉と喧嘩して私だけ屋敷を飛び出したんです」
「悲しいことですがお姉さんの事は諦めた方がいい。私が馬車で近くの村に運んであげますので乗ってください」
「いえ、私はクルーズの所に行きたいんです」
「死にたいのですか?・・・・。ヴァンパイア貴族の屋敷に行って帰ってきた女性はいません」
「それでもいいのです。姉を見捨てる事はできないので」
「・・・。わかりました。馬車で屋敷に送りましょう。私の隣に座りなさい」
私は心優しいおじさんの言う通りに御者台の横に乗ると馬車は道を引き返していった。
しかし、すぐ馬車が停まった。
屋敷に着いたのだろうか?
「お嬢さん。いい匂いがしますねぇ」
突然馬車を止めたかと思うと太ったおじさんが私にそう声をかけた。
どうにも様子がおかしい。私の方を血走る目でじっと見つめてくる。
「どうせヴァンアイアに殺されるんです。その前に私といい事をしましょう」
そう言って男がその太った体で私を押し倒してきた。
「きゃ!やめてーー!!」
私に覆い被さる男が舌舐めずりすると、その口元から涎が垂れて私の顔に落ちてくる。気持ち悪い!!!いやよ!!こんな男!!
「ぐへへ。いい体してるねぇお嬢ちゃん。もう!辛抱できん!!」
そういうと、男が私の服を力一杯捲り上げ、私の肌が顕になる。
何がどうなってるの!!優しそうなおじさんだったのに急変するなんて!!!
私はどうしたらいいの!?
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