第22話 ツァトゥグア
私はとんでもない悪魔を召喚してしまったかもしれない。
私の召喚した黒豚の巨人は座ったまま体は動かさず首だけを回して周囲を見渡すと、また私の方を振り向き『腹が減った』と意思を伝えて来る。
すると動いても居ないのに黒豚の巨人の手の鉤爪の間には、いつの間にか生徒が捕まえられていた。
「ぐああああ〜〜!!なんだこれ••は••ガハッ」
ええ!!!?突然人が悪魔に摘まれている!
腹を鉤爪で挟まれているのは金髪の超イケメンのクラスメイトのオースティンだ。
あまり話した事はないけど、とてもカッコが良かったから気にはなっていた男の子だった。
鉤爪が腹に食い込みオースティンの顔が歪む。
黒豚巨人の悪魔は鉤爪で摘んだオースティンをゆっくりと口に運ぶと、
ムシャムシャと人が砕ける音をたてて食べ始めた。
口からはオースティンのものであろう血が滴ってくる。
「キャ〜〜〜!」「キャ〜〜〜〜!!」
集まった生徒達、特に女子生徒達の悲鳴が木霊した。
え!?え!?え〜〜〜!!!
私は口を開けて呆然とそれを見ている事しかできない。
金髪イケメンを食べ終わった悪魔の手には、何故かもう別の人間が摘まれている。
悪魔は動いていないのに!!?
また口に運ぶとムシャムシャと栗色の髪の美女をむしゃぶる悪魔。
生徒は一斉に逃げ出そうとするが、逃げ出そうとする生徒達はみなその場で腹を抱えて苦しみ出して倒れていく。
どう言う事?!何がどうなっているの!?
「テイム!!!!!」「テイム!!!!!」
ブラピ先生が一際大きな声でテイムを唱えるが、この悪魔には全く効果はなさそうだ。
次の瞬間、ブラピ先生が悪魔の鉤爪でつままれていた。
えっつ!?!?ブラピ先生!!!!!
「やめて〜〜〜〜〜〜〜!!!」
先生が食べられる!!その恐怖に駆られた私は大声で叫んでいた。
すると悪魔はこちらにゆっくりと振り向き、ブラピ先生を掴んでいた爪を緩ませた。
爪から離れたブラピ先生が落下していく!
ドサッ!
ブラピ先生は悪魔の足に一度落ちてから、そこで跳ねて地面に叩きつけられる。
「ブラピ先生〜〜!!」
私は巨大な悪魔のそばで打ち伏せるブラピ先生に無我夢中に駆け寄った。
「グハッ・・」
ブラピ先生は生きていた!
だが、重症を負っているのだろう。とても苦しそうだ。どうしたらいいの!
「先生!先生!!先生!!!!」
私はその場で泣き崩れた。
「テイム出来ない魔物を呼び出すなんて」
校長先生が話す言葉が聞こえる。
「校長先生!!助けてください!!私、ど、どうしたら・・・」
その間にも悪魔はムシャムシャと生徒を貪り食ってその骨を吐き出している。
「フフフッ・・・どうやって助けるの・・?
魔物を元の場所に戻すにはテイムした者が命じるか、もしくは魔物がそう望むしか無いの・・・ハハハッハハハッ」
「助けて!!助けて!!」
私は涙声で叫ぶことしかできない。
「こんなに生徒を食い散らかして。凄い魔物を召喚するのね。ハハハッ!
もうこの学園は終わりですよ。は、ハハッ ハハハッ ハハハハッ キャハハハハ!」
校長先生が狂った。
殺戮が延々と続いている。私はその地獄絵図を呆然と見ているしか出来ない。
私のすぐ側でブラピ先生は青白い顔をしながら呻いている。
空からまた筋肉の筋と血がついた生徒達の骨が降って来る。悪魔の口から食いカスが吐き出されているのだ。
それが辺りに散乱して狂気の空間が生まれていく・・・。
ここに集まった2年生の生徒が半分くらいになったところで、悪魔は生徒を食べるのをやめた。
『
そう頭の中で言われた気がする。実際は言葉ではないのでわからないがそのような意味が私に伝わった。
そして、悪魔は再び黒い球体に包まれる。
球体が消えた時、悪魔は居なくなっていた。
残ったのは食い散らかされた生徒の骨と悪魔の口から滴った血溜まりだけだった。
————
あれから私は悪魔を呼んだ大罪人として捉えられ裁判にかけられた。
そんな私を支えたのはブラピ先生だった。
そう。彼は一命を取り留めたのだ。本当に良かった。
そして、彼は弁護士を雇い長い法廷での審議全てに参加して、本気で私を救おうと尽力してくれている。
「君に罪はない。悪いのはテイムできなかった僕だ。君の事は絶対助けるからね」
彼の言葉が私の唯一の救いだった。
この国の魔術に関する法律では、適切な状況での魔物召喚であれば召喚者にいかなる責任も生じないらしい。だが、あまりにも被害の規模が大きすぎたのだ。
そして、今判決が下ろうとしている。
もし無罪になったとしても私が呼び出した悪魔が多くの命を奪った事には変わりがない。
私はその罪を背負ってブラピ先生と強く生きていくのだ。
ブラピ先生となら乗り越えられる。
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気づくと目の前に黄金の羽のようなものをつけた白衣の外国人女性がいる。
しかも辺りは雲のようなものが漂う変な空間だ。
この状況は?
俺は推理を働かせる••••
俺はとある有名な女性推理小説家の孫の孫だ。
今回、偶然•••いや、いつも通りある連続殺人の現場に居合わせ、その事件の真相を解明した。と思ったらこのザマだ。俺は犯人に捕えられたのだろう。
この天使の格好をした女こそが真の犯人だったのだ•••
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