第24話 ギャンブル会場

突然目の前が真っ白になったかと思うと、その白色の世界から煉瓦造りの街並みが現れた。

やはりあの女はMRか仮想現実かしらないが、俺におかしな世界を見せていたのだろう。


どうやら俺は拘束が解かれたようだ。

スーツの胸ポケットを弄ると、ちゃんと宿の主人と客の1人との不倫現場を押さえた写真が出て来た。


このキスシーンの写真は見るに耐えないが重要な証拠だ。


しかし、ここはいったい何処だろうか?


俺は推理する••••


•••••••全く答えが出てこない。


「すみません!」

まずは通りを歩く赤いシャツを着た大きな男に声を声をかけてみる。


「なんだ?俺にようかブヒ?」


なんなんだ!?こいつ人間か!?豚みたいな顔をして口から牙が生えているんだが!?


「い、いや、ここには初めて来たものでね。ここが何処か教えて欲しいんだが」


「ここはオーディオン市だぶ。人間のくせにそんな事も知らないとか頭大丈夫ブヒ?」


その喋り方の方が頭大丈夫か?と言いたいが、まあいい。

オーディオン市?そんな街が東北にあっただろうか?


「すまない警察署は何処かな?」


殺人事件のことをまずは警察に伝えた方が良いだろう。


「警察署ってなんだぶ?人間はよくわからん事を言うブヒな」


「よう相棒!人間なんかとなんの話をしてるんだい?」


豚のような顔をした男と話していると、そのの後ろから緑色の皮膚をした小男が近寄ってくる。


緑色の皮膚ってどうなってるんだよ!しかも頭からツノが生えてる!?


緑色の皮膚の小男は上半身は裸で小さいカバンをたすき掛けにしている。

短いパンツは履いているが、茶色くてとても汚そうだ。


コスプレが盛んな街なのか?秋葉原でもこんな奴はいないぞ!?


「お前、警察署って知ってるブヒ?この人間がよくわからない事を言ってくるブヒ」


「警察署??なんだそりゃ。変な人間とは関わらない方がいいゼェ」


緑色の皮膚の小男が豚男に忠告する。


「待ってくれ。そのコスプレはなんだ?なんかの祭りか?」


「コスプレ??本当にわけがわからない事を言ってるな。こんなやつほっといて、いつもの所に行こうぜ!実はな!大金が手に入ったんだぜ。それをぶち込んでやる!」


緑色の小男がたすき掛けのカバンを持ち上げて見せる。カバンはずっしりしたものが入ってるのか、かなり縦に歪んでいる。


「本当かぶ!大金が手に入ったブヒ?だったら今日は勝つブヒ」


俺は推理する••••。


どうやら金がある時に行く所があるらしい。そして、金をぶち込む。勝つ。と言う言葉から賭け事だと推測できる!

ちなみに俺はギャンブルは得意だ。

探偵家業を始めてみたものの、客は少ない。だから暇な時はパチンコやスロットに入り浸っているのだ!


「待ってくれ。俺はギャンブルが得意なんだ。俺も連れてってくれ」


「お前金あるのかよ。入場料がなけりゃ入る事すら出来ないぜ」


「おう!今、福沢諭吉が5枚もあるのさ!」


「福沢諭吉ってなんだ?また変な事言ってるな。まあ金があるならついて来なっ!」


ーーーーー


「ウラドの兄ちゃんまたきたのかよ。こないだ随分大負けしたのになあ。まあ良いさ入場料を置いてきな」


ギャンブル会場のカウンターにいるタキシードのような服を着た黒髪の大男が金を請求してきた。


「今日は軍資金はたんまりあるんだぜ!この店を潰すぐらい稼いでやる!」


俺を案内してくれた緑の皮膚の小男は100円玉(のような貨幣)を4枚カウンターに置いた。


「2人分だ」


俺は推理する••••


2人分で400円は安すぎる。100円玉に見えたものはどうやら500円玉だったらしい。



俺は1000円札を財布から出しカウンターに置く。


「兄ちゃん。こりゃなんだ??」


「入場料の1000円だ。もしかして200円でよかったのか?」


「1000エン?エンがなんだかわからねえが、こんな紙切れ置かれても困るぜ。ちゃんと100オデ払いな」


「100オデ??」


俺は推理する••••


会場の中にいる奴らは豚人間や緑の小男がやたら多い。ここは本物のギャンブル場ではなくコスプレイベントの会場だったのかもしれない。

だとすれば、金もそのイベントならではのコインが必要なのかも知れないのだ。


しまった!コスプレしてる連中が行くんだから本物のギャンブル場のはずはなかったのだ。

そもそもそもギャンブルはこの国では禁止されている。

賭け事だとしてもそれは会場内コインを使うのは当然だ!



「すまないな。イベント用のコインは持ってないんだ」


「だったら此処から先に入れるわけには行かないな!!」


受付の大男が凄みを利かせてくる。


「なんだ??人間のくせに100オデも持ってないのかよ!? いいゼェ俺が出してやらあ!俺は今日は景気がいいんだぜ。

俺はとんでもない大金を手に入れたからな!それをここで数倍にしてやる!お前に200オデ出してやるから、ここで400オデにして返してくれたらいい」


俺は推理する••••


コイツらはただのコスプレじゃない。会話も役になりきってるフシがある。ロープレのイベントなのかもしれない。


そしてこの緑のコスプレの小男はなんらかの方法でイベント限定のコインを手に入れた。それもかなり大量に。


イベント関係者から横流しがあったのか?それとも盗んだのか?その方法はもちろんわからないが、100オデで良いところを200オデ貸すという。

という事は残りの100オデを400オデに増やせという事だ。やはりここはギャンブル会場で間違いはないらしい。

コスプレ限定のギャンブル会場などかなり凝ったイベントだな〜。



「ありがとう。すぐに400オデにして返してやるよ」



—————



このイベント会場のギャンブルの多くはトランプもどきのカード賭博だが、トランプではなかった。恐らく何も知らないで参加すればカモられるだろう。

これはパスだな。


俺は単純なサイコロの合計数字を当てるギャンブルを選択した。


基本ルールは単純で3つのサイコロを振りその合計の数字を当てるだけだ。

10名の参加者はそれぞれ一つの合計数字のみ賭ける事が出来きる。


ただ、付随ルールが話をややこしくしている。

サイコロは3回に分けて振られる。

そしてサイコロが振られる前、一回振られた後、2回振られた後と、3回賭けるチャンスがあり、別の人間が先に賭けた数字には賭けられない。


また、一度賭けると数字や賭け金は変更できない。


同じタイミングで賭ける数字が被った場合はより多く掛金を出した者が数字を取る事が出来る。

最高ベット金額は100オデで、最低ベット金額は30オデだ。(ベットは10オデ単位)


そして1回目に振ったサイの目と同じ数字が2回目で出た時(1/6の確率だな)はそこでゲームは終了して、既に賭けた人が賭けてない人から30オデずつ回収出来る。


賭けた奴が複数いる場合、賭け金の割合で分配されることになる。割り切れない端数分は店に行く。


2回目に振ったサイの目と同じ数字が3回目に出た時もゲームは終了し、賭け金は店の勝ちとして全て店に持ってかれる。

その時、何処にも賭けてないものは30オデを店に払わなければならない。


見事数字を当てた場合は賭け金は11倍になって店から払われると言うものだ。


さて大儲けしてやるか!

俺は推理する••••。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る